#あたシモ

虹の向こう側

かれの声

数年ぶりのかれの声は 相も変わらずなめらかで 気品と味わいに満ちてた。

かれにとって それは手によく馴染んだ 道具のようなもの。

黒く磨かれて 落ち着いている

どんな残酷さも甘さも 自在に生み出せる

どんな複雑なことも できる という 自信と余裕が 滲んでいた。 もしくは傲慢。

声で触れさすり 言葉で撫でまわし 吐息でこじ開けて 唇で押し広げて ささやき疲れて 噛みついて愛し合い 舐めて傷つけあい そして終える

なんてことは朝飯前

謝りながら唾を吐く
笑いながら軽蔑する 理解しながら無視をする

ずっと変わらず上手 うまいこと言って意見通す 関わりたくない ただそこで歌っていて わたしたちが無言で合いの手を入れるときに

会えば多分いい感じで 弱虫で仲良し

曖昧な笑顔で 今日も負けた 明日も負ける 負け続ける だからせめて

かれの歌のズルさだけを許す器用さは、生き残るために身につけた術だった。