#あたシモ

虹の向こう側

あなたのことばかり考える

何年も前に会ったあなたのことを、長いこと忘れていた。でもやっと思い出すことができた、今。空白を埋めるように、あなたのことばかり考えている。あなたの言葉ばかり。昼も夜も。

あなたは特別な存在になってしまった。負けたよ。ずっとあなたは特別なままだろう。たとえあなたがわたしのことを忘れてしまっても。たとえ、川の水が全て太平洋へと流れ出し、わたしたちの生まれた国が海に飲まれて消えてしまっても。

土気色のこの街の、熱く乾いた、それでいてどこか甘さを含んだ空気の味をあなたは好きだ、と、軽やかな声で笑った。 皆があなたの唇から溢れる言葉を渇望した。

あなたがその日わたしをまっすぐに見たとき、それが現実なのかわからなかった。あなたは歩いてきてわたしの手を取り、「行こう」と言った。そのときようやく、わたしは空の飛び方を思い出した。

あなたがずっとつないでいる左手がおかしいくらい敏感になっていて、軽く親指が動いただけなのに叫びそうになるのをこらえる。

やめて、落ちてしまう。

そううったえるけれど、あなたが知らない顔で動き続けるので、わたしは急上昇と急下降を繰り返し、気づいた時には耳元でSiriが囁いていた。

「起きて」と。

よかった、君は、本当にいてくれた。もう絶対一人にはならないよ。