#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

フラッシュバック

wedding dresses

その漫画が何だったのかは忘れた。

その時、わたしは当時つきあっていた彼女と2人で宇田川町のカフェに座って、買ったばかりの百合漫画を袋から出して読んでいた。そこには、つきあっていた元カノが、男と結婚する……というストーリーが描かれていた。

結婚式の日、ウェディングドレスに身を包んだ花嫁を見て、感極まる主人公。

「あなたが男だったらいいのに」

「男だったら、結婚したかったのに」

それが口癖だった彼女。

別れ際に「もう誰にも二度とこんな思いはさせてほしくないから、二度と女の子とつきあわないでね」と言って別れた彼女。

彼女は、わたしがネットで、レズビアン系のオフ会を見つけて行ったり、友達を増やすのが嫌だと言っていた。ヤキモチとかじゃなくて、わたしが「そっちの世界」に行ってしまう気がして嫌だったそうだ。

「そっちの世界」って何なんだろう?

わたしは、「自分の世界」を見つけようと必死だった。

それは、彼女からしたら「そっちの世界」だったのかもしれない。

でもわたしからしたら、「こっちの世界」こそが、わたしの世界。わたしが、自分らしくいられる世界だったんだ。

結婚したければ、子どもを持ちたければ、回りから祝福されたければ、いつか同性の恋人とは、別れるしかない……。そんなの、嘘だよね。

女同士だって、結婚したければできるし、子どもを産みたければ産める。やりたいことは全部できる。「女同士だから」とかいう理由で、何も我慢する必要なんて、ないんだ。

でも、一つだけ自分が変えられないとしたら、それはその時「男と結婚したい」って思った彼女の考え方だけだと思う

気がついたら、わたしは漫画を読みながら泣いていた。そして、そんな私の涙を見て、彼女も泣いていた。

「どうして、元カノのことを思い出して泣くの?」って。

ごめんね。

別に、彼女への未練が残っていたわけじゃない。ただ、涙脆いから泣いたんだと思う。

それでも、いつでも、好きな子が「あっちの世界」に行ってしまったと感じるときは悲しいよね。

本当は、皆、結婚したって、子どもを産んだって、同じ「一つの世界」に住んでいる。

北海道に行っても、中国に行っても、東京に帰っても、タイに引っ越しても、ベトナムで働いても、仕事を辞めたって、遠く離れたって、心は近くにいる。結婚して子どもを産んだ後「戻ってくる」子だっている。わたしの回りにもいる。小さい子どもを連れて、離婚して、「やっぱり女が好き」みたいなの。

でも、それが事実だとしても、悲しい寂しい気持ちは消えないよね。いくつになっても。もうその子と時間を気にせずじゃれ合って、夜中飲み明かすことはないんだって。もうそういうチャンスは一生失われてしまったんだって。そういうことをできた時も、確かにあったのに、でもそんな時間は通り過ぎてしまった。そして一生もう戻ってこない。

別れる時よりも、もっと確実な「別れ」。二度と元に戻ることのない、不可逆な変化。

だから、わたしは泣いたんだと思う。あの日。

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