#あたシモ

虹の向こう側

米乱射事件後、イスラム系団体と「容疑者の家族」が急いでお悔やみを発表した理由

photo by Jim Boud

12月3日におこった、ロサンゼルス郊外サンベルナンディノ郡での乱射事件。警察に射殺された、容疑者二人のバックグラウンドが徐々に明らかになってきています。パキスタン移民だった妻と、アメリカ生まれの夫は、結婚後に徐々に過激化。FacebookではISISに対して忠誠を誓っていたという報道も見られ、「テロリズム」の一環であったと言われています。

カリフォルニア州に本部をおくアメリカ=イスラム関係評議会(CAIR)は乱射事件の当日に、いち早く容疑者の義理の弟を含めた記者会見を開き、被害者への追悼の念を表明しました。なぜこんなに素早く行動をおこしたのかにつき、ディレクターのハッサム・アイローシュ(Hussam Ayloush)は以下のように答えています(参考記事:CNN)。

「わたしたちは、今とても困難な時代を生きています。多くのイスラムフォビアが存在します。数人の行動を、コミュニティー全体の責任にしようとする評論家などの意見に影響された多くのアンチ・イスラム教な雰囲気があふれています。

コロラド・スプリングスでの乱射事件の後は、彼の行動は彼個人の責任とされ、わたしたちは、キリスト教系コミュニティーを責めるでもなく、アメリカのコミュニティーを責めるでもなく、ただ国として悲しみにくれるだけでした。

今回も同じことです。わたしは隣人であるアメリカの皆さんにただ、アメリカにいるイスラム教徒たちも、その他の国民と同じように悲し、驚き、そして怒りを感じていることを知っていただく必要があると思います。これは家族にとって重要なことなのです。彼らは自分たちがどう考えているか、どんなに悲しんでいるか、人々に知ってほしいと願い、どうしてもここに来たいと主張しました。こうして今わたしたちが話している間にも、彼ら自身が悲しみを感じているにも関わらず、彼らはこうして遠い道のりを運転して、アメリカの皆様に話をするべく、このオフィスまでやってきました。本日、わたしたちは皆被害者なのです。わたしたちはこの悲しみの元に団結します。これを乗り越えるためには、団結するしかないのです」

"Our shock and our agony for what happened. It was important for the family. They wanted to make sure that people know how they felt, how devastated they are and they insisted to being here, although they are going through their sorrow as we speak, now, but they drove all the way to be at the office and speak to fellow Americans and say, we are — today we are all victims, today. We stand united in our sorrow and the only way we can come through this is through our solidarity."

わたしね、この「家族が駆けつけた」ってすごいと思ったんですよ。家族が殺されるなどして、自らが大きな悲しみと混乱のなかにいるだけでなく、「コミュニティー」全体への攻撃の危険にも晒されている彼らの訴えは、胸に迫るものがありました。

これって、「移民」として暮らしているわたしからしたら他人事でもないんですよね。多くの移民が暮らすアメリカですが、同じように見える人でも、微妙に国や地域によってバックグラウンドは異なります。わたしも移民ですが、人から見たら「アルゼンチン生まれの韓国人」なんだか「カナダ育ちの香港人」なんだか「中国大陸から引っ越してきたばっかりのウイグル人」なんだかぜんぜんわからないと思います。

また、仮に同様のバックグラウンドを持っているように見えても、当然ながら考え方は人によって異なります。「XX人はOO」なんて言えないんですよね。

アメリカでは数年前アジア人学生による乱射事件が大学でありましたが、もしも、これによって「アジア系」全体が危険視されたり、どこかで日系アメリカ人がおこした事件によって「日系」全体が判断されてしまったりししたら、たまったもんじゃありません。たまったもんじゃないですが、今、現実にそのような偏見に苦しんでいる人々がいるわけです。

これから「テロ対策」の大義のもとに、不寛容な空気が広まっていく気がしますが、人を肌の色や宗教で安易にグルーピングしたりしないように心がけたいです。

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