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アメリカで働くレズの徒然

全米最大のLGBT団体が共和党の議員を支持する理由

photo by tedeytan

大統領選挙の予備選の話題でもちきりのアメリカ。実は、大統領選挙と同時に、国会議員選挙も行われます。そこで、各州では、大統領選挙と同時に、地元の議員の選出で誰を支持するか?という問題が生まれます。

全米最大のLGBT団体ヒューマンライツキャンペーン(Human Rights Campaign:通称HRC)がイリノイ州の上院議員選挙において、マーク・カーク上院議員(共和党)の支持を表明したことで、論議が巻き起こっています。

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マーク・カーク議員は確かに、共和党のなかではゲイフレンドリーな投票履歴であり、共和党議員として初めて「平等法」の起草者に名を連ね、また「聞くな、言うな政策(Don't Ask, Don't Tell Policy:通称DADT)」を終わらせるためにも投票をしています。さらに、共和党の在職議員として同性婚を支持したのは、カーク議員が二人目です。このように共和党議員としてはゲイフレンドリーなカーク議員ですが、しかし、HRCが定めているゲイフレンドリーさを図るスコアでは78%しか取っていません。

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それに対して、対抗馬のタミー・ダックワース下院議員(民主党)はアジア系の女性でイラク戦争で両足を失った退役軍人であり、政策はもっとリベラルで進歩派。HRCのスコアは100%です。

HRCは、なぜ一見してよりLGBTの権利を擁護してくれそうなダックワース議員を支持せずに、共和党のカーク議員を支持しているのでしょうか?

HRCって結局エスタブリッシュメントなの?

一つ考えられるのは、HRCの体質です。多様性を推進するための団体のはずのHRCですが、実は内部は「女性差別的で、同質的で、排他的な『白人男のクラブ』」だとするスタッフから告発されています(参考記事)。

これまでにも今回同様「えっ?」というような議員を支持表明したり、反差別法を早く通そうと焦るばかりに、トランスジェンダーが入っていないバージョンの法案を支持した過去があるなど、いろいろ批判も多い団体です。

HRCがいち早くヒラリー・クリントンへの支持表明をした時に、バーニー・サンダースは「エスタブリッシュメントな団体が、エスタブリッシュメントな候補者を支持するのは当然」と発言しました。

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プランド・ペアレントフッドと並び、マイノリティー団体であるHRCがエスタブリッシュメントの一部であるかのような言い方に反発が高まり、バーニー自身は「団体の指導者がエスタブリッシュメントという意味で、団体そのものの話ではない」とトーンを抑えましたが、一連の流れを見ると「やっぱりHRCってエスタブリッシュメントなのかも?」とも思えてきます。

HRCの言い分

今回のカーク議員の支持に伴う批判について、HRCのプレジデント、チャド・グリフィンは「HRCのスコアの違いについては、上院と下院で審議する法案が違うため、同じレベルでは比較できないこと、LGBTについての問題は、党派を超えて協力するべきであること、またカーク議員はこれまで、反差別法や平等法の制定のために共和党内部で尽力してきたこと」などを述べて、反論しています(参考記事)。

HRCは、今後連邦レベルでの平等法(Equality Act)を成立させるために、必要なのは、「現状、上院で多数を占めている共和党内部に味方を増やすこと」だと考えており、そのために、共和党のカーク議員の支持をしたわけです。

しかし、同じ目的を達成するために「上院で民主党の議員を増やす」という戦略もあるはずです。実際多くのLGBT活動家はこちらの選択肢を支持していています。なぜなら、LGBTの権利擁護についての過去の実績からして、共和党よりも民主党の方が信頼できると判断されているからです。共和党の内部でLGBTの権利を擁護する議員を増やしていくことはもちろん大事ですが、そもそも共和党が議会の多数を占めている状態自体が、LGBTの権利擁護の観点からは望ましくないのです。

HRCを動かす「ヘッジファンド」からの資金

The Global Financial Context: Paul Singer

HRCの行動は、共和党の支持者から巨額の寄付金を受け取っていることとも関係がありそうです。HRCに巨額の寄付をしているポール・シンガーという人物がいます。

ポール・シンガーは、ヘッジファンド「エリオット・マネジメント」の創業者であり、アルゼンチンのデフォルトの際、背後にいた投資家です。債務の減額に応じず、実質的にアルゼンチンのデフォルトを招いたため「ハゲタカ投資家」と言われた人物です。

「ハゲタカ」と言われる理由は、彼がアルゼンチンに対してだけではなく、ペルーやコンゴなど、貧困に苦しむ国に対する債権を格安で取得し、裁判による取り立てをすることで収益を上げてきたからです。

ポール・シンガーは、このように(合法的ではあっても)ある意味非人道的に得た収益を政治活動に寄付しまくっており、共和党に対してもっとも多くの寄付をしている貢献者の一人です。今回の大統領選で、ポール・シンガーは共和党主流候補と言われたマルコ・ルビオを支持していました(参考記事)。

このポール・シンガーの息子のアンドリューはゲイであり、ポール・シンガーはHRCをはじめとするLGBT系の団体に多くの寄付をしています。HRCはこのように共和党側の支持者との関係も深いため、共和党の政治家を支持したりもするわけです。

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