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虹の向こう側

映画『君の名は。』感想 ―薄っぺらいお涙頂戴物語が大ヒットした理由とは?

2016年の大ヒット映画『君の名は。』の感想です。

『君の名は。』あらすじ

千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。ある日、自分が男の子になる夢を見る。見覚えのない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。都会での生活を満喫する三葉。一方、東京で暮らす男子高校生・瀧も奇妙な夢を見た。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。繰り返される不思議な夢、明らかに抜け落ちている記憶と時間。二人はお互いが入れ替わっていることに気付く。何度も入れ替わる事に戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止める二人。残されたお互いのメモを通して、状況を乗り切っていく。しかし、気持ちが打ち解けてきた矢先、突然入れ替わりが途切れてしまう。自分たちが特別に繋がっていたことに気付いた瀧は、三葉に会いに行こうと決心。辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた…。(C) 2016「君の名は。」製作委員会

『君の名は。』感想

なかなか面白かったです。前半は「それなりに笑えるけど、なんというか、子供っぽいSFものだな〜なんでこんなに評価が高いんだ……?」と思っていたのですが、途中、「彗星」での惨劇がわかってきてからは、かなり面白かったです。

良かったところ

空とか緑、紅葉や湖など、とにかく自然の描き方が鮮やかで美しかったですね!

あとは、青春恋愛&村祭り&都会の高校生活とか切なさをキュンキュン刺激してくる要素はてんこ盛りだし、「タイムリープ」とか個人的にすごい好きなので楽しめました。主人公二人もドロドロしたところがなくて、爽やかでよかったです。男女入れ替わって「意外な側面」を見せた主人公が二人共人気あがるのは面白かったですね。バスケ万能でガサツな感じになった三葉が女の子から告白されたりw

また、この映画では、二人が「え!」っていうくらい物事を忘れていきます。相手の名前はもちろん、いろんなことを忘れていくし、確かだと思っていた日記とかいろいろ目の前でサラサラ消えていきます。そこがちょっと不可解にも思えましたが、「あ、確かに夢ってこういう感じでどんどん忘れちゃうよね」って考えるととてもその感じがリアルに思えました。起きた直後、どんなに「覚えておきたい!」って強く感じたとしても、あっけなくどんどん忘れていっちゃう感じ。あの感じが映画でよく表されています。

イマイチだったところ

◯◯くさい

映画としてどうこうではなく、自分の趣味ということですが、パンチラとか胸チラとか、そういうサービスショットがキモかったw わたしはアメリカの劇場で、周りにアメリカ人ばっかりの環境で観たのですが、そういうシーンって「ああやっぱり日本ってw」みたいな感じの苦笑が感じられる気がしたし、なんというか、恥ずかしかったです。日本ってオタク!とか日本ってヘンタイ!みたいなステロタイプがあるのですが、そこにかっちりハマりにいってる感じがして……。

あと、最後、瀧と三葉が再会するシーンで、なかなか声かけないじゃないですか?そことかも、「あ〜っ!もううじうじしてないでさっさと声かけなさいっ!」とか思っちゃいました。

ネット検索していたら、この違和感をズバリ「童貞臭い」と表現されている方がいて、「あっ、そういうことかも」と思っちゃいましたw

【感想】映画「君の名は。」に抱いた違和感の正体【ネタバレ 考察】 - つっぱりモルディカイ

いろいろ「浅い」

そういう細かい文化的な違いはさておき、わたしが一番物足りなかったのは、少しストーリーとかキャラとかが「浅かった」点です。

この映画は、演出は非常にうまく、劇的なクライマックスがいくつもあるので、わたしも結構泣いたんですけど、それは、ちょっと「泣けるボタン」押されたから泣いてるだけとうか、深く感動したというのとは違うんです。なんかこの「泣けるボタン」ってわかります?誰かが死ぬ!とか切なさマックス系の描写とかで、特定の方法論がありまして、音楽盛り上げたり、フラッシュバックさせたり、切ないモノローグいれたり、そうすると脊髄反射的に泣いちゃうんですけど、頭のどこかは褪めてて「うーん」って思ってるんですよ。「泣ける映画」=よい映画というわけではないんですよね。

例えば、いつの間に二人は好きになってたのか?結局どうやって村の惨劇は防げたのか?その後皆は三葉たちにどういう対応をしたのか?四葉が高校生になった姿とか、テッシーがさやかとつきあってるらしい?ところとかチラチラっと出てきますけど、そういう結構大事なところが「ミュージックビデオ」みたいにチラ見せだけで処理されてしまうので、ちょっと説明不足というか、もう少し掘り下げることはできたのではないかと思います。

現実には、この「瀧」も「三葉」も、高校出た後5年間、新しい人間関係とかいろいろ築いていると思うんですが、そういう描写が一切なし。この二人はずーっと記憶を失ったまま「誰か」「どこか」のことを思い出しながらぼーっと生きてたんですか?この二人は、再会した後、「思い出」「切なさ」に浸るだけじゃなく、ちゃんと二人の人間として出会いなおして、リアルな関係を深めていくことができるんでしょうか?

そんな不安を抱いてしまいました。

音楽の使い方がウザい

映画で使われていたRADWIMPSの曲はよかったんですが、映画のなかでの使い方が微妙。とにかくBGMっぽく歌が印象的に入ってくるのはいいんですが、ミュージックビデオ風というか、アマチュア映画っぽい感じに思えてしまいました。日本語の歌バックグラウンドで流しながら、ストーリー展開させないでほしいです。

『君の名は。』と震災の関係

わたしが『君の名は。』を観ながら思い出したことが2つあります。

一つは、「東日本大震災」です。

東日本大震災は、ストーリーがどうこうではないのですが、やはり、自然災害で大被害を受け、そのまま瓦礫などが残っている箇所に足を踏み入れ、消滅した村の姿にショックを受ける……という瀧の姿に、自然と思い出されました。自然災害は避けられないとしても、もしも、タイムトリップが可能なら……歴史を変えたいと願った人は沢山いるのではないでしょうか?

実際、新海誠監督も、震災との関連を語られています。

――ちなみにこの企画が始まったのは、東日本大震災の前ですか?後ですか?

後です。東宝に最初の企画書を出したのが2014年の7月です。6月ぐらいに2週間ぐらいで書き上げました。

――震災のことは最初から念頭にありましたか?

この企画書の中で、すでに周期性の災害をもたらすものとして彗星を出しています。そして、地震も周期性の強い現象です。2011年以降、日本人の多くは「僕らは周期的に揺れる地面の上に住んでいる」ということを思い出したはずです。本作は「震災をモチーフにした映画を作ろう」という考えではありませんでしたが、2011年以降に発想した物語として、人が住んでいる場所に周期的に何かをもたらしてしまうものを物語に入れ込もうというのは、自然な成り行きだったのだと思います。

――自然な発想として、災害の後に生を掴む話になっていったということですね。

そうですね。もうそこは本当に感覚的なものでした。なかなかうまく言語化できないんですが、2014年の時点で「これから作る物語はこういうものだ」という強い感覚がありました。内容の迷いはなかったんです。細かなディテールはそこから1年かけて、迷って迷って組み立てていきました。でも根本のプロットは、最初に発想した企画書から変わてないですね。

引用:【3.11】『君の名は。』新海誠監督が語る 「2011年以前とは、みんなが求めるものが変わってきた」

『君の名は。』と『ひぐらし』は似ている?

もう一つ思い出したのは、伝説のゲーム、そしてアニメ、映画と展開された『ひぐらしのなく頃に』です。わたしは、ひぐらしがめちゃくちゃ好きだからそう思ってしまうのかもしれませんが。それをさておいても、いろいろな要素が酷似しています。

『ひぐらし』は『君の名は。』でいう、三葉の世界=糸森町をもっとディープにしたような世界「雛見沢村」が舞台です。『君の名は。』では、糸森町は結構爽やかで美しい田舎の街というだけで、「田舎の人間関係の濃さ」や「狭い集落の薄気味悪さ」が殆ど描かれていない点は、そこは違いますが、飛騨の山奥で、災害によって村が消滅する……という設定などは共通しています(ていうか、ひぐらしの一番の魅力は、この「田舎の怖さ」っていうホラー要素なんですけどね!)。

また、三葉が神社の娘で、舞いを披露するところは、古手梨花ちゃんを想起させられますし、最後、一度は死んだ三葉が町を救うために、何も知らない町民相手に必死で奔走するところは、何度も繰り返すパラレルワールドで雛見沢村を救おうとするひぐらしに通じます。

別に「似てるからダメだ!」とか「パクリだ!」というわけではないですが、興味深かったです。

他にも、この二作品の類似を指摘している人がいました。

映画「君の名は」を楽しめないタイプをまとめてみる - 映画にはポップコーンが欠かせない

『君の名は。』大ヒットの理由とは?

…と結構酷評気味になってしまいましたが、この映画が大ヒットしたのは事実です。日本国内では、邦画としては『千と千尋の神隠し』に続く2位。洋画を含めても、『千と千尋の神隠し』『タイタニック』『アナと雪の女王』に続く堂々の4位。ちなみに5位は『ハリー・ポッターと賢者の石』。いやあ実に錚々たる顔ぶれに並んじゃってますぞ。

いったい、作品としては意外と凡庸な『君の名は。』はなぜこんなに売れたのでしょうか?その理由は、何かの形で2016年の日本が求めるものがこの『君の名は。』にはあったからでしょう。その何かとは何なのでしょう?

  • 希望を持たせるようなハッピーエンド

→未来が見えない社会状態で、希望を求めている?「災害からの復興」を描くというよりも、「災害の被害がなかった」という形でのある意味現実逃避的な解決法がハマった?

  • どこかで聞いたことあるような設定

→複雑でオリジナルな設定は読み解けない?どこかで聞いたことあるので、安心できる?

  • 不自然に奥手な二人の恋愛

→未婚率が上がるなか、恋愛苦手な人たちが共感できた?

以上は単なる仮説ですが……。皆さんはどう思いますか?

『君の名は。』ハリウッド版

さて、この『君の名は。』は、既に『Your Name.』として字幕版でアメリカでも上映されています。さらには、ハリウッドでの実写版制作が決まっています。かなり日本的なストーリーだと思うのですが、ハリウッドでどんな味付けがされるのでしょうか?楽しみです!

ドラゴンボールみたくならなきゃよいけど……(ボソッ)

『君の名は。』 評価

  • グラフィックの美しさ ★★★★☆
  • ストーリー ★★★☆☆
  • 泣ける度 ★★★☆☆

↑こっちも気になる〜!