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アメリカで働くレズの徒然

内部告発者が語ったフェイスブックの”裏の顔”

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フェイスブックが盛大に炎上している。フェイスブックの内部文書について、ウォール・ストリート・ジャーナルが大々的に報道し、他の報道機関も追随した。内容は、フェイスブックがヘイトスピーチや誤情報に対して対策を怠り、利益を優先していたこと、インスタグラムが10代の少女たちに対して希死念慮や摂食障害を引き起こす危険性があると知りながら何もしなかった点などだ。

フェイスブックが誤情報や有害な情報の流布について批判されるのはこれが初めてのことではない。ケンブリッジ・アナリティカにユーザー情報がながれ、それが2016年の米国大統領選挙や英国EU離脱(Brixit)選挙のための選挙活動に利用されたこと判明した後、マーク・ザッカーバーグは謝罪に加えて、米国議会、EU議会にも証言し、誤情報の取締やアルゴリズムの改善に取り組むことを発表していた。

名乗り出た内部告発者

10月3日、これまで身元が明かされていなかった内部告発者である、フェイスブック元従業員のフランセス・ホーガンがテレビ番組60ミニッツに出演した(60ミニッツは 日曜夜に放映されている人気インタビュー番組で前回取り上げたリズ・チェイニーが同性婚への姿勢が間違っていたことを認めた番組でもある)。

ホーガンは、アイオワ州出身の37歳のデータサイエンティストだ。コンピューターエンジニアリングの学位を取り、ハーバード大学院でビジネスの修士を収めた。過去15年間グーグルやピンタレストなどのテック企業で勤務し、2019年から今年の五月までフェイスブックでプロダクトマネジャーとして勤務していた。彼女はフェイスブックにスカウトされた時「誤情報と戦うのなら」という条件のもとでオファーを受けた。彼女はオンラインの陰謀論で友達をなくしており、似たような悲しい思いをする人がもう出てほしくなかった。ホーガンは選挙に対するリスクに対処する Civic Integrityというチームに配属された。しかし、2020年の大統領選挙の後、チームは解散され、仕事は複数のチームに引き継がれた。

彼女はフェイスブック内部でこの問題に取り組もうとする人々が次々挫折するのを目にし、誰もが確実に「これは本当だ」とわかる形で外部に情報を出さなければいけない、と計画を立て、フェイスブックの内部調査資料をこっそりコピーし始めた。

フェイスブックは公には誤情報と戦う姿勢を打ち出していたが、内部調査ではヘイト投稿について3-5%、また暴力や煽動については0.6%の対応しかしていなかった。

フェイスブックはアルゴリズムをつかって様々な情報のなかから何をユーザーのニュースフィードに乗せるか決定している。過去にユーザーがどのような投稿に対して反応したかの情報に基づき、もっともエンゲージメントが高くなるような情報を選んで流している。そしてフェイスブックは、このような「エンゲージメントの高い情報」がもっとも憎悪にみち、社会的分断を煽り、人々を怒りへと駆り立てるものだったと知っていた。2018年にミャンマーで起こった大量虐殺で、軍隊はフェイスブックを使ったし、今年一月六日の議事堂襲撃のオーガナイズにも使われた。

ぶっちゃけ、内容は以前から言われていた内容の域を大きく外れるものでもないが、今回の告発はフェイスブックがしっかり内部で調査をしたうえで、それらについて気がついていたというのがポイントだ。ホーガンはフェイスブックの自浄作用には期待せず、情報を外に出すことで、強力な規制が行われることを期待している。

フェイスブックの行いは違法なのか?

私企業であるフェイスブックが利益を優先することは、倫理に反することがあっても、必ずしも違法とは限らない。しかし、ホーガンは、フェイスブックの行動が法に抵触していると考えている。上場企業であるにも関わらず投資家に提供するべき情報を隠蔽していた可能性があるからだ。ホーガンはEUの政治家にも連絡しており、今月後半には英国議会で証言する予定。またアジア諸国の政治家とも共同で働きかけたいと考えている。

社内の機密情報を盗み公開したホーガンの法的責任は?

証券取引等監視委員会に、8回通報をしたホーガンは内部告白者としての保護を求めており、NPO団体ウィッスルブロワーエイドがホーガンの弁護を担当しており、ホーガンの弁護費用をクラウドファンディングで集めている

フェイスブックの言い分は?

フェイスブックは60ミニッツの取材に対して文書で回答し「誤情報や有害なコンテンツが広がるのを防ぐため、大きな進歩をしている。我々が悪いコンテンツを奨励しながら何もしていないというのは端的に事実ではない」としている。

60ミニッツが放映された翌日の月曜日フェイスブックの株価は急落した。また同日フェイスブックや傘下の関連アプリに大規模な障害が起きているが関連性は不明。

ブリトニー・スピアーズと「自分のことは自分で決める」を奪われた女たち

グレイテスト・ヒッツ: マイ・プリロガティヴ

親友から「ブリトニー解放デモに行く!」という電話がかかってきたのはコロナが始まってしばらくした頃だった。一応ロサンゼルスの片隅で暮らしているから、元夫ケビン・フェダーラインとの離婚のゴタゴタや、ブリトニー奇行みたいな報道は大抵知っていたし、メンタルがヤバいとされた彼女がなんだか不思議な法律の仕組みの中に絡み取られて「どうやら自分ではなんにも決められない」というヘンテコな状態になっているらしいことは知っていた。あ、ブリトニーが赤信号を無視してつっきってるの、ビバリーヒルズのあの道だ!とかブリトニーがガソリン入れてるのサンセット通りのあそこだよね?程度には身近な話だからね。一時期は本当にブリトニーの精神状態が心配で、彼女がオーバードーズだとか、交通事故で病院に運び込まれるんじゃないかって心配してた。

でも、ブリトニーが「ヤバい」のって、もうすっかり昔の話だと思ってた。ブリトニーはすっかり復活した。新曲もアルバムも何枚も出したし、ラスベガスでのレジデンスショーもやったし(当然観に行った!)わたしは根拠もなく、ブリトニーはもうすっかり「大丈夫」なんだと思っていた。あの頃見るからに不安定で不幸せそうだったブリトニーはすっかり回復して、自分のために生きているに違いないと。

でも、間違いだった。ブリトニーはコンサバーターシップ(後見人制度)によって13年間も自由を奪われた状態で生きていた。

本来、後見人制度は、認知症やその他の理由で法律上の意思決定ができなくなった人を守るために作られた制度だ。多くの場合、後見人がつく人は、一人で行動できず仕事をしていないことがほとんどだ。ブリトニーはショーを作り上げ、バックアップダンサーを指導し、何億円も稼ぎ、彼女自身はもちろんのこと、周りの人も養い続けていたのだ。それなのに「意思決定能力がない」と裁判所によって決められ、後見人である父親が代わりに彼女の生活の全てにわたる意思決定をしていた。このことが改めて話題にのぼったのは2019年、ブリトニーが2度目のラスベガスショーをキャンセルし、自分の意思に反してリハブ施設に入れられたというニュースが流れたのだ。理由はブリトニーが薬を飲まないから。ブリトニーのファンたちは、ブリトニーが投稿するインスタの投稿から、彼女が助けを求めていると主張した。謎めいた詩や、ドレスの色合いから、隠された意図を読み取ろうとした。「ブリトニーを解放しないと!」その話はちょっと面白くはあったけど、少し陰謀論っぽくも思えた。

今年の六月に、ブリトニーは裁判所で証言した。オンラインで配信されたブリトニーの「はーい」いう挨拶は相変わらずアイドルみたいにスウィートだったけど、その後の証言の内容は、予想を遥かに超える暗いものだった。

「私は不幸せ。夜眠れない。私はめちゃくちゃ怒ってる。絶対おかしい。私は落ち込んでて、毎晩泣いてる」

それは、一年以上前からブリトニー解放闘士たちが唱えてきた説を裏付けるものだった。ブリトニーは父親が後見人から外れることを望み、父親を恐れていると言った。

「これは虐待!」

この証言は大きな衝撃で多くのセレブがブリトニーを支持する発言をした。議会でも論議されることになったくらいだ!もはやブリトニーの後見人問題は、ゴシップの話じゃなくて、人権の問題として語られるようになった。

ブリトニーの「後見人制度」の内容の驚くべき

実態がどんどん暴かれるようになった。ブリトニーは、セキュリティなしでは何もできなかった。彼氏や友達と一緒に運転することも、コーヒーを飲んだり、ハンバーガーとポテトを食べる、みたいなことすら!ビジネス契約にOKといったりNGといったりすることもできないし、結婚して子どもを生むかどうか?みたいなことも一人では決められない状態になった。ブリトニーの寝室には盗聴器が仕掛けられ録音が保存された。ブリトニーの通信はすべてモニターされ、ブリトニーがiPhoneを欲しがった時には、彼女が端末で何をしているのか全てがミラーリングされているiPadが用意された。「彼女を守る」という大義名分のために。 自分で自分の弁護士を選ぶことすらできなかった。何度もトライしたのに、そのたびに「ブリトニーは自分の弁護士を選ぶ能力がない」と裁判所によって決めつけられ、彼女が選んだ弁護士が代理人になることはなかった。

だた、今年の七月、ブリトニーはようやく自分の弁護士を選べるようになり、とてもアグレッシブなこの弁護士のおかげで、ようやく父親が後見人から外れることになった!

やった! 「フリーブリトニー」の闘士たちは喜びの叫びをあげた!まだ後見人制度は残っているからブリトニーの戦いは続くけれど、ラスボスの一人が倒れたのは間違いない!ブリトニーのストリーミングは増え、ブリトニーに後見人がつく前に作ったアルバムのランキングがストリーミングサービスでランキングが大幅にあがった。……っていうかわたしも今あらためてブリちゃんの過去作品を聴きながら今買いてるんだけど、改めて神曲が多すぎる!楽曲としてどうこうじゃなくて、本当に時代を代表するような……というか時代を作ってきた存在だもんね。わたし正直言うと、2008年以降の後見人がついてからも好きな曲いっぱいあるんだけど、今はあえて「昔のブリちゃん」を応援したいから初期の曲聴いてる……。

さてさて、このニュースを聴いてどう感じただろうか?

ブリトニーという稀有なディーバと家族の揉め事? 下世話なゴシップネタ?

ブリトニーは世界で一人しかいない。でも、実は<自分のことを自分で決める>そんな基本的な権利が奪われている女性はたくさんいる。「後見人」という形じゃなくても。

好きな人と結婚したいだけなのにできない人たち。 妊娠を継続するかを自分で決められない人たち。 好きな格好で自分を表現することができない人たち。

ひとつひとつは「小さなこと」だと思えるかもしれない。

でも、そんなひとつひとつの「小さな自由」と、それを他者がきちんと尊重する、ということが、めちゃくちゃ大切なんだ!!

ブリトニーはいつだってうちらに大切なことを教えてくれる。