#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

エブエブがアカデミー賞総なめにして嬉しかった

Onlyzoo Everything Everywhere All At Once [4K UHD]

※このブログ、アカデミー賞の翌日に書いてたのにアップできてなかったので今更ながら上げる。

昨日はアカデミー賞だった。

結果わかった段階でいろいろ言うのは簡単だが、発表前はいろいろな思いに襲われていた。Twitterでは何度か書いてたけど、わたしにとって去年観た映画のなかで圧倒的ベスト1がエブエブこと、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』だった。去年の3月かな?この映画が公開された時「なんかおばちゃん主演の面白そうなカンフー映画?」みたいな軽いノリでろくな予備知識もなく観に行ったのだが、映画館の座席から立てなくなるくらいぶっ飛ばされた。皆が分析してるマルチバースだとか、絵的な奇妙奇天烈さだけではなく、自分というより自分の属するコミュニティ(わたしがメインでソーシャライズしているのは、アジア系アメリカ人のクィアコミュニティ)の中でのこの映画に対する期待度やワクワク度を肌で感じたし、他の映画よりも圧倒的に生でリアルな手触りを覚えたからだ。

何より、これが明確に(単に同性同士のロマンスを描いているというのを超えた)クィアな映画であること、母と娘の関係性や家族間愛情表現の難しさ、カミングアウトと家族の受容について、希死念慮も含む抑うつの乗り越えについて、またまた多くの「アジア系アメリカ人」系エンタメの中では、英語が堪能な語り手による「アメリカ生まれ世代」が主役であることが多いが、この作品が「移民第一世代」である親たちをメインの主人公としていることも、すべてすべて、わたしにとっては「自分ごと」として刺さりまくった。

結局、この作品はわたしにとってパーソナルな思い入れが強すぎて、客観的に語ったり、「評価」なんてすることは不可能。だけど、この作品が圧倒的な面白さを持ち、「アート系映画」「カルト系映画」の枠にとどまらず、まだコロナから回復期にあった米国の映画興行収入でしっかりと成績を残し、様々な賞を獲得していくのは、不思議な感じだった。

去年の映画の枠でいうと、『RRR』や『イニシェリン島の精霊』もよかったし、『ELVIS』がとっても『トップガン』がとってもまあ納得だし、アカデミーの政治的なことを思えば『Fablemans』になっちゃうのかなぁーのかなあなんて思ってもいたが、ひとつだけTARにだけはとってほしくなかった。

明確にクィア女性の登場するストーリーなのになぜこんなに受ける印象が違うのか?と思ってもみたが、やはり監督や製作者と、彼らが題材としたマイノリティたちへの距離というか、「自分たちの物語」を描いているか「芸術的な表現のために利用しているだけ」かどうかってので相当違うんだろうなと思う。

とにかく、本当にエブエブがオスカーの主要カテゴリで受賞しまくったことが嬉しかったし、キャストや製作者たちのスピーチも心にささった。

www.atashimo.com

フロリダ州、授業でディズニー映画を観せた教師を「Don't Say Gay」違反で調査

ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界 (吹替版)

フロリダ州ヘルナンド群で5年生を受け持つ教師が、ディズニー映画『ストレンジ ワールド/もうひとつの世界 』を観せたら、映画内にゲイのキャラクターが登場するため、いわゆる「Don’t Say Gay」法に反するとして州の教育省から捜査の対象になっています。教師がTikTokI am the teacher. Here is the truth. #indoctrination #disneymovie #di... | TikTokで告発しました。

授業でディズニー映画 -- 何が問題?

ジェナ・バービーさんは、標準化テストの後、教室に半数程度しか生徒がいなかったため、保護者全員から、PG指定の映画を見ることを許可するサインを得たうえでディズニー映画『ストレンジ ワールド/もうひとつの世界 』を上映したそうです。この映画は家族向けのアニメ映画ですが、主人公の息子が他の男性キャラクターに対して恋愛感情を持つことが表現されており、主人公の家族もそれを受け入れて応援する、というシーンが含まれています。このシーンが問題だったのです。

フロリダ州は12年生までの性自認と性的指向の教育を禁止する。いわゆる「Don't Say Gay」法を可決しています。フロリダ州知事デサンティスたちはこの法律を「親の権利を守るため」だとし、性的指向や性自認に関する指導を幼稚園から3年生まで、あるいはそれ以外の学年では年齢にそぐわないと判断される方法で禁止していましたが、その後、12年生=高校まで制限を拡大しました。この方針に違反した教師は、停職や教員免許の剥奪を受ける可能性があります。ヘルナンド郡学校区の理事でもあった保護者の一人が、バービーさんの上映した映画にゲイの登場人物がいることを問題視し、校長に訴えを出し、今回の調査につながったとのこと。

先日、友人の6歳の子どもとクラスメイトの会話を紹介しました「うちには二人のママがいる」6歳のクラスメイトの反応は? - #あたシモが、ゲイフレンドリーな地域でも、まだまだ家庭内で同性カップルの存在やSOGIについての教育を受けていることはまれです。学校を含めた「家庭外」、主に学校で「世の中には同性同士でカップルになる人もいる」「生まれたときに割当られたジェンダーとは別のアイデンティティを持つ場合がある」などフラットな事実を教えてもらったり、幸せに暮している当事者の表象が含まれた作品にふれることは、子どもにとっても必要不可欠なことだと思います。そして、まったくそれらの教育を受けずに育った子どもたちが、セクシュアリティやジェンダーについてどのような考えを持って育つのでしょうか?考えるだけで恐ろしいです。

ディズニー対フロリダ

ディズニーは昨年、このフロリダの「Don't Say Gay」法律に反対を表明したことで、デサンティスとの対立が激化。デサンティスとフロリダ州共和党は、ディズニーテーマパークとその周辺の土地の支配を標的に、ディズニーへの報復を行い、現在はディズニーがそれに対抗して訴訟中です。今回の教師の処分にもまたディズニー映画が絡んでいたということで、ディズニーとフロリダの対立構造が改めて印象に残ったニュースでした。

ゲイだけじゃない、フロリダ州が教育で禁止したもの

フロリダのヤバい法律はこれだけではありません。2022年には、通称「Stop WOKE Act」という法律(The Individual Freedom Act)があり、これは、クリティカル・レース・セオリー(CRT)に対抗するようなもので、学校や職場のトレーニングで、「人種的に差別的、性差別的、抑圧的である(意識的または無意識的であっても)」と教えることを禁止しています。例えば構造的差別の話をするときに、「白人特権」とか「男性特権」という話が出てきますが、そういう話はNGになります。また、同じ人種、性別、または国籍のメンバーが過去に行った行動について「個人的な責任を負い、罪悪感、苦悩、または他の形の心理的苦痛」を感じなければならないと教えることを禁止しています。これは、例えば過去の奴隷制や植民地支配に基づいて現在の自分たちに罪悪感をもたせるようなことがNGというものです。さらに、フロリダ州の公立高校の生徒は、アフリカン・アメリカン・スタディーズのAPコース(※高校在学中に受講できる大学レベルの上級クラスのことで、取得すると単位がトランスファーできる)に参加することが禁止されました。

このようにフロリダ州は教育に大きな介入をすることで、セクシュアリティの多様性について教えることを禁止するだけでなく、人種差別の歴史や構造的差別について考えるときに不可欠な概念をも取り扱うことを規制してます。このような政策は差別的のみならず、表現の自由に反すると批判されています。

www.atashimo.com

www.atashimo.com

アメリカの薬ってカラフルすぎない?って話

Costcoで思ったこと。

アメリカの薬、派手じゃね?

どピンクの抗ヒスタミン剤。

赤と青の痛み止め。

色が単についてるだけじゃなくて、濃い!

胃薬として有名なピンク色のドロっとした薬とか。まぁ日本だとなかなかなかなか見ない色。

わたしが最近処方されたカプセルもオレンジ色と白の組み合わせ。まぁ、この程度のものは日本でも見かける気がしますが……

薬と色の関係

薬と色の関係については色々あるようです。鎮静剤的な薬剤は青色で、興奮を呼び起こすものは赤く、また単純な鎮痛剤は白が多い、など。また飲み慣れた薬剤の色が変わると服用を止める患者がいるなど、薬の色は割と無意識のうちに影響を与えている模様。

ファイザー社のバイアグラは、その色と形状(青色ひし形)で有名ですが、後発のED薬であるシアリスは「オレンジ」色です。イーライ・リリー社は明言していませんが、この色の選択については色彩心理学やマーケティングの観点からバイアグラの落ち着いた青色に対するアンチテーゼとして選択されたという考察がなされています。(既に発売停止になったが、バイエルのED薬レビトラもオレンジ色でした)

冒頭に紹介したようなショッキングピンクのアレルギー薬や、毒々しい色の痛み止めは、どのような意図で選択され、またその色の効果は実際に出ているのでしょうか?理由がないとあんな色わざわざ選ばないと思うし、どのような過程を経て決まったものなのかが気になります。

「うちには二人のママがいる」6歳のクラスメイトの反応は?

_「うちには二人のママがいるんだ!どこに所有格のアポストロフィをつけるかはわかってるよ!」

※画像は一コマ漫画。母の日の絵を描いている子供の一人が「Happy Mothers’ Day」と書き、教師にスペルミスなのでは?と指をさされている_

母の日ですね!今日はL友達のから来たメールを紹介します。彼女は結婚していて、同じ精子ドナーを使って、自分と妻のお互いが出産した、という四人(プラス猫一匹)家族で暮らしています。

友達が、娘のPちゃん(今年6歳)を迎えに行ったらクラスメイトの女の子がPちゃんに話しかけてきたそうです。(友達は髪の毛は肩くらいまであるのですが、背が高くて痩せていて猫背気味、かつ、服装もメンズをよく着ているため、よく男性に間違えられています)

友「あの人誰?」

娘「私のママ」

友「あなたのパパって髪が長いの?」(←ママって言ってるやんかw)

娘「ううん、パパはいない」

友「Pちゃん、パパいないの?」

娘「うん、ママが二人いるの!つーまーりー、母の日は、わたしにとってはダブルで母の日ってことなんだよ!」

友「え、二人のママ、結婚してるの?」

娘「うん、うちのママ結婚してるよ」

友「女同士で結婚できるんだぁ?知らなかった!」

そしてその後話題は全然関係ない話に移ったそうです。子どもってそゆとこあるよね……。

わたしたちが住んでいる街は、かなりレズビアンフレンドリーで、大抵クラスに一人や二人は同性カップルの子供がいるそうです。それでも、まだまだ「結婚は異性間のもの」って思ってる子もいるのかもです。けどこうやって5〜6歳とかの時から自然と「クラスメイトのPちゃんちはママが二人なんだって」みたいな環境で育った子どもたちが大人になっていく時、社会はまた変わってるんだろうなって思いました。その未来が楽しみです

わたしはPちゃんが産まれる前、いや、友達がまだシングルの時から一緒にパーティしていて、二人がWeHoのクラブのトイレ待ちの列で出会った時その場にはいなかったけど翌日「可愛い子と出会った!」って報告受けてからずっとずっと応援してるから、なんかしみじみです。母として生きてる友人を見ると感無量。

お互い年齢を重ねて、人生のフェーズも変わっていくけど、これからも友達でいようね!

そして、全ての母親に愛と祝福を贈ります。

Happy Mother's Day! or Happy Mothers' Day❤︎

POKHARA 母の日 カーネーション 5号鉢 赤 鉢カバーつき 底面給水だから管理も簡単 丈夫で長く咲いてくれます (レッド)

世界が夢の国ならいいのにね。映画『フロリダ・プロジェクト』がよすぎて3回観た

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 デラックス版 [Blu-ray]

最近観た映画のベスト。ちょい古いのはわかってるんだけど紹介させて。そしてまだ観てない人は今すぐ観てほしい。

フロリダ・プロジェクト(原題:The Florida Project)もうこのタイトル自体がダブルミーティングで、色々考えさせられる。フロリダのなかでもこれはディズニーワールドのすぐ側にあるモーテルを舞台にした話。で、フロリダ・プロジェクトというのは、1965年に、ディズニーがフロリダにこんなテーマパーク作りますよ!った発表した時の仮プロジェクト名だったのね。

https://thefloridachannel.org/videos/reflections-walt-disney-announces-the-florida-project/

映画フロリダ・プロジェクトの中では、ディズニーという言葉は一回も出てこない。けど、画面の至る所からこの舞台はディズニーワールドのすぐ側にあることが伝わってくるし、それは豊かさそして格差の象徴としても機能している。何より、あの「マジカル」なラストシーンはディズニーという存在をわたしたちが知っているからこそ効果的に心を揺さぶる。あ、まだあらすじすら説明してないのにラストシーンの話をしてしまった。

もうひとつ、英語で「プロジェクト」という単語に、低所得者向けの公団住宅、の意味があるということ。これも別に明示されてるわけじゃないし、知らなくてもいいんだけど、projectって言葉の意味から想起されるものとしてわかっとくと色々つながる。

そう、この映画で舞台となる紫色のモーテルに住むキャラクターたちは、皆お腹に困っている。シングルマザーだったり、娘が産んだ子供を引き取って一人で育てていたり。主人公ムーニーの母親は定職もなく、路上で香水を売ったりしながら、モーテルに住み着いたご近所さんがウェイトレスとして働くカフェで無料の食べ物をもらったり、フードバンクの配給に頼ったりしながら生活をしている。

ムーニーや友達たちは超悪ガキだが天真爛漫。演技してるように見えないほど自然で上手い。

ぶっきらぼうだがいい奴の管理人のビリー(ウィレム・デフォー)に見守られながら、日常を淡々と流れるが、確実に生活は限界に近づき、シングルマザーであるムーニーの母親ヘイリーは危険なビジネスに手を出していき、とうとうDCF(Department of Children & Families=日本の児相的な存在?)が訪れる。ヘイリーは査察に備えて部屋を片付け、ムーニーと思いっきり遊び、食べ放題のバイキングに連れて行くが、モーテルではDCFが待ってきた

何の気なしに見出したのに本当よくて驚いた。

ボビーがいい。

雇われマネジャーボビー本部からの査察もあるし、自分でハンディマンみたいなこともしなきゃだし。時には怪しい奴をどやしつけて追い払ったり。けどそんなタフだけど優しい役をウィレム・デフォーがすごくよく演じてた。カッコよかった。

あと、母親の存在感も独特でいい。最悪の母親のはずなのに、憎めない。なんというか、ダメダメな決断ばかりしてしまっているのだけど、ダメなりに頑張って働いてたり子供を守ろうとしてるのはわかるし……でも、その努力の方向が間違ってるというか、どんどん破滅に向かってしまってるのが切ないんだけど、でも人間ってそゆとこあるよねって。ジャッジせずに、ただただキャラクターによりそうあたたかさな視線が好き。

何よりムーニーはそんなママでも大好きなんだよね。それがいいか悪いかは別としてね。価値判断は置いておいて。子供は小さい時は母親がホント大好き。母親の愛は無償だとかいうけど、本当は子供が母親に向ける愛こそ無償で無条件だと思う。少し大きくなれば、色々な事情も見えてきて、親を恨んだり反面教師にしたり、そんなこともあるかもしれないけど、ムーニーにとってはヘイリーはひたすら大好きなママで、世界はキラキラと美しい。あまりに過酷な現実の中で、悪ガキなのに、そんな無垢さを持ち続けてるムーニーを見てたら切なかった。

ムーニーも成長するにつれ色々なことを理解して、それと引き換えに世界にかかっていた「魔法」は溶けてしまうんだろう。6歳の見る世界だからこそ社会の歪みも大人の欲望も愚かさも絶望も全てキラキラと美しい。この子供の時にしかない感受性へのノスタルジアもあって泣けて仕方なかった。

そしてラストシーン。

映画ならではの表現だなと思った。音楽もそうだし。そうだよ。こういう表現ができるから映画ってやっぱり素晴らしいんだ。ディズニーランドってわたしは小学校の時から何度か行ってだけど、中学校の時かな?ディズニー行くたびに、まるで夢の中みたいにずっとキラキラして見えてた魔法が少し色褪せるのを感じたんだよね。もちろん大学になっても大人になっても、デートで行ったりいろんなシチュエーションで行って、やっぱりディズニーは大人にも夢を見させてくれる場所だなと思ってはいるけど、子供の頃本当に夢みたいにキラキラしてた、あの頃、何の心配もなく、ただただ毎日を全力で楽しみながら生きてた、あの世界の見え方はもう戻ってこない。ムーニーが見てる世界がわたしにはもう見えない。それが切なくてでも、想像はできるからわたしは泣いた。ムーニーも、ヘイリーも、スクーティーも、アシュリーも、ジャンシーも、皆、皆幸せになってほしい。

Fちゃんはこの映画が気に食わなかったみたいで、フロリダのモーテルに住む人たちのドキュメンタリーを観たらってリンクを送ってきた。仕事と家を失い、家族でモーテルに住みながらディズニーワールドで働く男のドキュメンタリー。んー。いや、そーゆーのじゃないって一瞬思った。わたしは映画を社会問題や政治と結びつけて観ることが多い人間だけど、この映画はちょっと違うアングルで刺さったんだよな。でも、結局はアメリカのセーフティネットのない社会で誰でも貧困に陥ることの危うさは、エモさで包まずに考えた方がいいのかもしれない。

https://youtu.be/65N5ouukO6w