#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

トゥレット症候群の彼女と暮らす

photo by TheLadyKris

荻上チキのラジオSession22で、5/15~6/15が「トゥレット症候群」の啓発月間であると知った。

非常に面白くためになった。

トゥレット症候群は、無意識に体を動かしたり、声を出してしまうチックと呼ばれる症状が見られるものである。本人に悪意があったり、育て方に問題がある訳ではないのだが、悪い言葉や汚い言葉が出たり、場をわきまえないで声が出てしまうので問題となる。

周囲の理解が非常に重要なので、このような啓発活動は応援したい。ウェブでも聞けるので、興味がある方は是非聞いてほしい。

Fionaはおそらくトゥレット症候群だと思う。でも、診断も受けていなければ治療もしていない。

彼女の症状は非常に軽いもので片頬がピクピクしたり、瞬きしながら遠くを見たり、肘を持ち上げるなどの行為を常に繰り返している。出会った時から気づいていたが、「まあ、こういう人いるよね」くらいな感じだった。

石原慎太郎北野武も、しきりと瞬きをしているが、普通にテレビに出ているし、誰も気にしない。わたしも、そんな感じでFionaと接していた。

一緒に住みはじめてから彼女の他の癖に気付いた。寝る前にスマホを見ている時や、テレビを見ている時、「ピュッ……ピュッ……」と言う非常に可愛らしい音が、彼女の口から出ているのだ。はじめは何をしてるのかよく分からず、それで、彼女のことをじっと見ると、何か声を出していたことはわかっているらしく「放っておいて!」と言われる。

一年前くらいからは、ピュピュ音に加えて、独自の単語(←英語かと思っていたら、検索しても一件も引っかからない、Fiona独自の言葉)をしきりと発するようにもなった。本人曰く当時預かっていた友達のペットが可愛いかったのがきっかけで「超可愛い〜」的な気持ちのほとばしりをあらわしたものとして生まれた言葉らしい。スマホやテレビで、可愛い動物などが出てくると、その言葉を連発している。この言葉は一応意味が通っているのでチックよりも、独り言に近いのかもしれないが……とにかく回数が多く、ピュッ……ピッ……の合間に挟まるので、ちょっとうるさい。職場ではどうか知らないが、このピュッピュッ音は、外にいる時は全然出ない。家のソファかベッドでくつろぎながら面白い動画を見て興奮している時によく出る。←朝支度をしてる時とか、皿洗いなどしてる時は出ない。

そんなある時、ひょんなことから、トゥレット症候群の話になった。それまでもチックについては話したりしてたし、「チックがあるので、元カノに言われた」とかも言ってた。そこで何の気なしに、「あなたもトゥレット症候群だよね?」と言ったら、彼女の顔色がサッと変わった。「はあ?何?症候群?」と。「自分にはチックはあるけど、別になんとか症候群とかじゃないし!」とプリプリ怒っている。えっと思ってウィキペディアのページを見ると、トゥレット症候群の定義は、運動チックと音声チックが一年以上続いて慢性化したもの……とある。本人も読んで当てはまると思ったらしく、無言になった。

その後、アメリカの患者団体が作ったトゥレット症候群の若者が出てくる動画を見つけて再生してたら、彼女はますます不機嫌になって「トゥレットとか観たくない!観るならわたしのいないところで一人で観て!」と毛布をかぶってしまった……。

動画には、結構見た目のよい若者たちが出てて、ポジティブな感じだったので、「トゥレット症候群だって平気だよ!」的な感じで観ようとたのだが、本人は拒否反応。チックはよくても、症候群という言葉は、非常に「病気」っぽくて傷ついたようだ。無神経なことをしてしまったかと、申し訳なく感じた。

チックを指摘すると、そのことを気にして、ますます悪化してしまうため、チックを指摘しない方がいいらしい。

それから、Fionaとは一度もトゥレットの話をしてない。相変わらず、ピュッピュッ言ってるが、わたしにとっては可愛いものである。

チックとトゥレット症候群がよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

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チックをする子にはわけがある―トゥレット症候群の正しい理解と対応のために (子育てと健康シリーズ)

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