去年からずっと調べていた遺伝子解析サービス「23andMe」をとうとう申し込んだ。あと数日でキットが届けられるはずだ。
アメリカには、今「祖先」を教えてくれる遺伝子解析サービスがいくつかある。23andMeはその一つだ。昔は薬との相性やアルツハイマー病やパーキンソン病、ある種のガンなど、遺伝と関わりのある病気のリスクなどをレポートとして出していた。しかし、医療行為だとしてFDAに禁止され、2013年の12月以降は「祖先に関するレポート」と生データだけで、健康に関するレポートは提供されていない。(カナダとイギリスだと、全てのレポートが見られる。いいないいな)(2016年8月追記:その後、一部の健康に関するレポートが見られるようになっています!もっともこちらも健康についてのアドバイスや診断をするものではありません)
提訴された「23andMe」、遺伝子分析による医療情報提供を停止|WIRED.jp
遺伝子情報を提供する「23andMe」、英国でも認可される|WIRED.jp
わたしが遺伝子解析について知ったのは、2014年の初頭、ちょうどFDAによる禁止がニュースになっていた後だった。「ええええー!どうせだったら健康レポート欲しかった!」と悔しくなって、それからしばらく遺伝子解析については考えないようにしていたが、やっぱりやってみたくなった。それに、23andMeでは遺伝子の生データが貰えるのだ。生データがあれば、健康レポートがついてこなくても、気になるSNPについては、頑張れば自分で調べることができる!
自分でテキストファイルを検索して解析するのもいいし、無料や有料でデータを解析し、レポートを出してくれるサービスが沢山ある。これについては、今調べてリストを作っているので、近々紹介したい。
日本でも最近遺伝子解析サービスがどんどん出てきていて、わたしも友達の結果を見せてもらったことがある。しかし、その結果はものすごーく曖昧な健康情報(あなたがxxになる確率は、平均より1.2倍高いですとか)が書いてあるだけだった。遺伝子の生データダウンロードもできないのに、価格も数万円とかなり高い。いろいろ考えたが、話のネタに申し込んでみることにした。
しかし、遺伝子検査には大きな問題がある。「その結果を知ってどうするのか?」ということだ。
例えば何かの病気について重大なリスクがあるという結果が出た場合、その情報を知らずにいた時と比べ、何か違う行動にでるのか?「リスクがある」と知ることで、わたしたちの生活の質はあがるのだろうか?
2013年、アンジェリーナ・ジョリーが遺伝子検査で高リスクだと分かった病気を予防するために、乳房や子宮を摘出したことは大きなニュースになった。しかし、わたしはこの医療費の高い国でそんな外科手術をするつもりはない。それでは、なぜわたしはこの検査を受けたいのだろうか?99ドルという決して安いわけではない金額を払ってわたしが手に入れる物は何なのか?安心?不安?より健康に気を使うための材料?自分の祖先情報?それを知って何になるのか?だいたい「血筋」に価値を感じ、それによって喜んだり悲しんだり、人を判断したりするのは、愚かなことではないのか?
……それによって満たされるものはわたしの「好奇心」だけなのかもしれない。自分がどこから来て、どういう情報を持っているのか?という好奇心。ある情報がそこにあって「わかる」のだから「知りたい」。ただそれだけの、子供っぽい好奇心なのかもしれない。
わからない。遺伝子検査の結果でわたしは打ちのめされるかもしれない。「検査など受けなければよかった」と感じる可能性だってある。死ぬ前の日まで何も知らず、全力で生きる人生の方が、「リスクがある」と怯えながら、びくびく人生生き方よりも価値があるかもしれない。わたしは、パンドラの箱を開け、神がもたらした「無知」という恩恵をなげとうとしている愚か者なのか。
なぁんて、こうして大げさでのんきなことを書いていられるのも、まだ申し込んだばかりで「何も知らない」からだ。
あと数日でキットが届く。そこにわたしは自分の唾液を入れて、送り返す。数週間で結果がわかる。その時わたしは何を思うのか。
23andMeに興味ある方はこちらから。
23andMe AU, DE, FR & EU - Genetic kit for ancestry | DNA Service