#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

ビジュアルは超リアルだけどあくまでお伽話!ディズニー映画『ジャングルブック』感想

Ost: the Jungle Book

あらすじ(以下ネタバレを含みますので注意)

インドの山奥

モーグリ(ニール・セティ)は、インドの山奥で黒豹のバギーラ(イドリス・エルバ)に発見された人間の子ども。狼のラクシャ(ルピタ・ニョンゴ)に子どもとして、他の狼とともに育てられる。群れのリーダーのアキラはモーグリに人間ならではの道具の使用などを禁じ、バギーラはモーグリに狼流の生き延び方を教えようとするが、モーグリはどうしても、グレイを始めとする他の狼の兄弟たちよりも見劣ってしまうのだった。「そんなことではいつか誰かに食べられてしまうぞ」モーグリのことを心配するバギーラ。

ジャングルに干ばつが続いたある年のこと。唯一残された水飲み場で、草食獣も肉食獣もが、お互いに食べられる危険なく水を飲むために休戦状態をしいていたところに虎のシア・カーンが現れる。かつて人によって襲われ、人間を憎んでいるシア・カーン(クリストファー・ウォーケン)は、人間の子どもの匂いを嗅ぎつけ、干ばつが終わった時にはモーグリを殺すと狼たちに警告を発する。

狼たちは、モーグリを群れから追放するべきかどうか話し合うが、モーグリは自主的に群れを離れることを提案する。バギーラは人間の住む人里までモーグリを送り届けることを申し出る。

なぜシア・カーンに憎まれるのか?なぜ人里に戻らなければいけないのか?人里に戻る納得がいかないモーグリに対し、ジャングル内を移動しながら「象にあったら頭を下げなさい」と、ジャングルの掟を教えるバギーラ。

人里に向かう途中で、シア・カーンが現れてモーグリを襲う。バギーラがシア・カーンを食い止めようとし、バッファローの大群の助けもあり、モーグリはかろうじて逃げ出すことができた。一人になったモーグリは、ジャングルのなかでバギーラを探そうとするが、そこで巨大な蛇のカーと出会う。カー(スカーレット・ヨハンソン)は、モーグリに催眠術をかけ、かつて、モーグリの父親がジャングルを旅していた時にシア・カーンと出会い、モーグリを守るために松明でシア・カーンを傷つけたことを伝える。父親はシア・カーンに殺され、そのため、モーグリは一人ジャングルに取り残されたのだった。またカーは「赤い花」(火)の破壊的な力についても述べる。大蛇に絡め取られ、今にも食べられそうになったモーグリだったが、間一髪のところで、熊のバルー(ビル・マーレイ)に助けられる。のんきで口のうまいバルーは、見返りに冬眠するために必要なはちみつ集めを手伝ってくれるようにモーグルに依頼。モーグルはかつて禁じられていた「人間の道具」を使ってはちみつを集めることに成功。バルーは、「急いで人里に帰らず、ここで『人』として生きればいい。冬が来るまでここにいてはちみつ集めを手伝って。人里に帰りたくなったら送る」とモーグルに依頼。モーグルも了承して、力をあわせてはちみつを採る。

一方、モーグルが後にした狼の群れにはシア・カーンが訪れていた。「もう、モーグルはいないよ。これで平和だろう」と答える狼のボス、アキラをシア・カーンはいきなり殺害して威嚇する。シア・カーンは、モーグルがいなくなっただけでは気がすまず、どうしても殺したいのだ。

アキラが殺されたことを知り、バギーラは、ようやくモーグルとバルーを見つける。モーグルが人間の道具を使ってはちみつを集めていることを知ったバギーラは怒るが、バルーは「まず一晩眠ってから話そう」と提案する。その夜、ジャングル内で尊敬されている象たちの嘆きの声が聞こえてくる。仔象が穴に落ちてしまったのだ。象たちは穴の周りで鳴くがどうすることもできない。モーグルは「人間の道具」を使って、仔象を助けることに成功する。バルーとバギーラはこれをみて、大したものだと感じ入るが、それでもシア・カーンがアキラを殺し、モーグルを探している現状ではジャングルはモーグルにとって危険であり、人里に帰るのが一番だと判断する。シア・カーンがモーグルを狙っていることを知った、バルーは心を鬼にして「もう一緒にいたくない」とモーグルを突き放し、人里へ帰るようにしむける。

バルーに突き放され、悲しさと孤独にうちのめされるモーグル。そこで突然猿にさらわれ、古い寺院に連れて行かれる。ここにはキング・ルイと呼ばれる巨猿がいた。キング・ルイは、モーグルをシア・カーンから守る引き換えに、人間の持つ「赤い花」=火を提供するようにと持ちかける。

バルーとバギーラは猿の寺院に忍び込み、モーグルを助けようとするが、逃亡の途中でキング・ルイに気づかれる。キング・ルイはモーグルを追いかけながら、狼の群れのボスであったアキラがシア・カーンに殺されたことを告げる。バルーとバギーラがアキラの死を知りながら、教えてくれなかったことに激怒したモーグルは、一人でシア・カーンに立ち向かう決意を固める。

人里から松明という「火」を盗み、シア・カーンと戦おうとするモーグル。しかしその過程で山火事を起こしてしまう。多くの動物が避難した水辺で、シア・カーンは、モーグルが多くの動物が恐れる火事を起こしたことを指摘する。モーグルは松明を水の中に投げ込む。「武器がなくなったな」というシア・カーン。

シア・カーンを止めようと、飛びかかっていく狼の家族。共に飛びかかろうとするモーグルをバギーラは止める。「人間のように戦え」と。果たして素手のモーグルはシア・カーンに勝てるのか?

感想

「深く考えなければ」楽しめます!

わたしは、『ジャングルブック』についての予備知識ほぼゼロで観始めました。初めは脳内つっこみがうるさくて集中できなかったのですが、「つっこみスイッチ」を切った後は存分に楽しめました。むしろストーリーがちゃんと寝られているので、一度「こういう世界観なのね」と納得してしまえば、ストーリーに気持ちを乗せていくのは簡単。涙しました。

でもなんというか、作品として「大好き!」とか「何度も観返したくなる」系ではないかもです。

ビジュアルがリアル過ぎる

これは、動物の描写がリアルすぎて、一見、よくディズニーがやっている動物ドキュメンタリーものかな?と思ってしまうほどなんですね。そのすごさゆえに、内容はファンタジーというのがちょっと違和感でした。

「くそリアルな野生動物が皆英語で話している」世界ですからね……。

この予告編で違和感伝わるかな?もう少し動物たちの造形がデフォルメされてれば、すんなり入ってくるんですが……。

あと映画のなかでは「人間の産物」となっている「赤い花」こと「火」なのですが、いやいや、自然界でも山火事とかあるよね?と思ってしまいました。まあそれを好きなように支配できるというところが「人間」の特性なのかな?と思いましたが……。別に人間の力を借りなくても「火」自体はジャングルにあるよね?と……。

あと深く考えだすと「動物の世界って弱肉強食だよね?」とか、「虎以外にも脅威はあるでしょー」とか、「そもそも狼の子どもたちの成長するスピードと、人間の成長するスピードはもっと違いすぎるのでは?(モーグリは、7〜8歳くらいだけど狼の子どもは1年で体の大きさが成体と同じになるまでに成長する)」とか、「モーグルが成長していったらどうするねん*1」とか「ジャングルは裸で生き延びられるほど甘くないよね」とか「髪の毛はどうやって切ってるんだ」とか。「虎はシア・カーン一匹しかいないのか?」とかいろいろ疑問が噴出します。

あ、念のために言っておくと、これらは別に映画自体の欠点ではありません。これはわたしが勝手に「気にしてしまった点」です。こんなことを気にすること自体が野暮というもの。この映画は「お伽話」であり「ファンタジー」なのだから、そう割りきって楽しむべきなのです!

原作の『ジャングルブック』は、ノーベル文学賞を受賞したイギリスの作家ラドヤード・キプリングが書いたさまざまなお伽話をまとめたもので、それはどちらかというと、子どもに教訓を教えるためのものだったというのです。いわばイソップ童話みたいなイメージだと考えるとよいです。

「あーこれは『実写版イソップものがたり』なのか」と捉えるとめちゃくちゃすっきりします。それなら狼とか虎とかが普通にしゃべっててもおかしくないもんね。←まだひっかかってる。

もっとファンタジーらしくてもよかったかも

まああえていうなら、これがアニメーション映画だったら、もっとしっくりきてたと思うんですよね。途中で、憎めないキャラのクマ、「バルー」が歌い出したり、異様な大きさのオランウータン、キング・ルイとかが登場し、またこの人も歌い出すんですが、そういうところも、ものすごく微妙。

えっとさ……いや、これミュージカル……っていうほどではないけど、そういう映画なのね?(わたしはミュージカル映画は好きだし、このジャングル・ブックで使われているが曲もかなり好きですw)そうならそうで、冒頭から「この映画は動物が英語で話しますし、歌い出したりするよ〜」っていうモードで始めてくれれば、戸惑わずにすんだのに。

そういう意味ではティム・バートンが今実写でやってる『アリス』シリーズとかは、明らかにファンタジー。

よかった点

とはいえ、頭のなかのつっこみスイッチをオフにすれば、ジャングルの描写と迫力ありまくる動物たちのCGがたっぷり楽しめる名作です。

この特殊効果はすごい!2013年に、アカデミー賞のスペシャルエフェクト賞を受賞した『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』を手がけた著名なVFXスタジオが破産に追い込まれ、業界全体におけるVFXアーティストたちの待遇の悪さが問題となりましたが、このような素晴らしい仮想現実を見せてくれる彼らがきちんとした報酬を得ていることを望みます。

また、とてもよかったのは、主役を務めるニール・セティ(Neel Sethi)くん。映画のなかでも「この子ジャングル育ちにしては、アメリカ人っぽすぎるだろ……」というくらい饒舌なんですが、いや、そんなつっこみは無視してください。リアルでもまさにこんな感じで天真爛漫な感じで可愛いです。アメリカ生まれのインド系アメリカ人の彼は、彼は両親ともに歯医者という家庭で育ち、これまで演技については考えたことがなかったそうですが、ダンス教室で「あなたにぴったりの役があるよ」ということで、すすめられてオーディションを受けたところ、2000人もの候補者のなかから見出されたそうです。4歳の時からテコンドーを習っており、映画のなかでも多くのアクションを自らこなしたんだって。可愛いなー。「大きくなったら俳優になりたい!」という彼。実際にどういうキャリアを歩んでいくのかはわかりませんが、白人だらけのハリウッドに風穴を開けて欲しいものです。子役で順調に成長していくって大変だなーと思うので。頑張れ!

評価

  • 実写くそリアルすぎ度 ★★★★★ 
  • ファンタジー度 ★★★★★
  • 泣ける度 ★★★
  • 単純度 ★★★★★

日本公開予定

ジャングル・ブックは8月11日(木・祝)日本公開予定です。

レビューリンク

他の『ジャングルブック』レビューを紹介しておきます。

*1:これ、ポニョとかでも思ったんだよね〜!