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アメリカで働くレズの徒然

【英語イディオム】husband stitch(夫縫い目)って?【スラング】

文字通りには「夫縫い目」というこの英語の言い回しを知ったのは最近のことだった。

daddy stitch(パパ縫い目)などの別名もあるこの「縫い目」の意味は「夫やパパが不器用な手付きで子供の雑巾を手縫いする」というようなほっこりしたものではなく、実は身の毛のよだつようなミソジニーかつ違法な慣習だった。

husband stichの意味

女性が経膣分娩するとき、会陰(膣口と肛門の間の部分)が自然に裂けたり、医師によって会陰切開されることがある。これを治癒のために縫い合わせるときに、医師が、「夫のために」「パパのために」と「少し余分に縫い合わせる」ーこれがhusband stitchだ。少し余分に縫い合わせ、性器の入り口を「狭く」することによって、男性側の性的快楽を増大させるという勝手なことが、時には当事者の女性の知らないところで行われるという。

「都市伝説にすぎない」という人もいるが、実際に体験した人の中には、出産後長年性交痛に悩み、その後、子宮頸がん検診で「出産後、あなたの縫合をしたのは誰?」と聞かれ、そこで初めて、それまで感じ続けていた違和感の招待がわかった人などもいる。

https://www.healthline.com/health-news/husband-stitch-is-not-just-myth

会陰切開の歴史

会陰切開はかつて、出産時の傷を、よりクリーンに、治癒しやすくするためにわざとする、という理由付けで行われた。しかし2000年以降の研究で会陰切開を常に行うことは利点がないことが多数示され、会陰切開の割合は大幅に減少した(参考

会陰切開が医学的に必要な場面はもちろんあるが、それが必ずし必要ない場合にもなされ、ましてやその縫合の際に「パパのためにちょっとひと針余分に塗って起きましょうね」というような実践がまかりとおるようなことは許されない。

全米で吹き荒れた「中絶禁止」をめぐる論争と同様、自己の身体に対する決定権が奪われてきたという話なんだと思う。

英語の言い回しを学んでいたつもりが、とても後味の悪い文化を学ぶ羽目になってしまった。