#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

北朝鮮を扱ったドキュメンタリーを見て感じたこと

金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて (文春e-book)

北朝鮮をテーマにした英語のドキュメンタリーをいくつか観たので感想を。

North Korea on the National Geographic

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金正恩とその家族に焦点をあてたドキュメンタリー。金正恩がどのように幼少時を過ごしたのか、トランプ前大統領との会談時の様子、更には、妹の台頭まで。脱北した元ボディーガードのインタビューや、金正恩のおじとおばが実はひっそり現在はアメリカでドライクリーニング店を経営している話なども興味深かった。スウェーデンの公立学校に留学し、西洋の自由を味わった金正恩が近代的な国家として国際的な存在感を誇示したいという野心と、現実の北朝鮮が抱える足元の問題などが描かれている。

Life in North Korea | DW Documentary

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北朝鮮の一般の人々の暮らしに焦点をあてたドキュメンタリー。農村部の様子だけでなく、平壌の高層マンションやレストランの様子、デパート公園でくつろいだり、海水浴で楽しむ人々、ボーリング場で楽しむ人々などを通じて、「北朝鮮に住んでる人ってどんな感じなんだろう?」というのが少しわかるかもしれない。……と同時に、これらの撮影は、全て当局から許可が降りるまで長い時間待たされ、許された範囲でのみ行われたものであることも端々から伺え、興味深い。

What North Koreans Think Of South Korea by Asian Boss

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北朝鮮から脱出した二人の脱北者のインタビュー。二人とも農村部出身なこともあると思うが、凄まじい食糧不足と貧困、しかしそれにも関わらず暖かく笑顔が絶えず幸せだった、という回想や、実際に脱出をする時の様子、ささいな罪で公開処刑をされる村人の様子、隠れて韓国ドラマを観ていた様子などは、興味深い。また韓国に亡命し、韓国政府の職員に「大韓民国へようこそ。心から歓迎します」と言われて涙が流れた時の話などは特に印象的だった。

北朝鮮に生まれ、常に国家に忠誠を尽くしていたのに、常に疑われ犯罪者のように扱われ、中国でも自国民ではないということで、よい扱いを受けてこなかったが、「敵だ」と教えられてきた大韓民国で「ようこそ」と言われたことに衝撃を受けたそうだ。また、北朝鮮のスパイではないか?北朝鮮人のふりをした朝鮮族の中国人なのではないか?などの取り調べを受け、韓国社会に溶け込むための訓練をし、社会に出ていく時のエピソード、更に北朝鮮人に対し韓国人が持っているステロタイプや差別の話も語られている。

「北朝鮮の人」に対してステロタイプを持っているのは韓国人だけではない。私も、無意識のうちに、北朝鮮の人というと、自国の世界を知らず、皆が洗脳されているような印象を持ってしまっていた。確かに、情報統制が敷かれているのは事実だが、実際には「北朝鮮人だって、自分の頭で考える力を持っている。特に若い人は」という声にハッとさせられた。確かに、情報がないなかで色々考えることは難しいが、それでも、彼らも私達と同じ、喜怒哀楽もあれば、疑問を持つこともある人間なのである。「自由」とは?「権利」とは?私達がこれらの概念について自由に考え、こうしてブログを書いて発表したり、政権を批判することができる、好きな場所に好きなときに移動できる、というのは、決して当たり前のことではない。もしも、それによって逮捕されたり、家族に危害が加えられるとしたら、身を守るために、沈黙せざるを得ない人はいるだろう。わたしだって沈黙するかもしれない。

しかし、そんな風に「黙らされた」人々も、確かに「声」を持っているのである。当たり前なのに、忘れていた。そのことを思い出した。

INTERVIEW

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