c71さんが文学フリマで出された小説『紺』をずっと読みたいと思っていました。
こちらのウェブストアで販売をされているのですが、海外配送だし……などとうじうじ悩んでいたら、電子書籍化されたので早速購入しました。
DV施設にいる女性たちのことをまとめた小説です。女性の生きにくさや、傷つけられても、殺されかかっても、そこから立ち直っていく過程を書いたものです。(Amazon書籍紹介より)
静かだけれど、力強い
この本には、三編の短編小説が収められていています。通底して流れるテーマとなっているのは、紹介文にもあるようなDV(ドメスティック・バイオレンス)被害にあった女性たち。しかし、暴力そのものが描かれているわけではなく、嵐が過ぎ去った後の、女性たちの日常が描かれています。暴力の残滓が、確かにそこにまだ感じられるなか、ゆっくりと、しかし着実に歩みを進めていく登場人物たちの姿。読みすすめるうちに、力を与えられるような感覚がありました。その感覚はほとんど「癒やし」といってもよいほどでした。いわゆる「癒やし系」のお話では決してないんですけどね……。
『紺』に収められている小説を「あらすじ」という形で書くとするならば、決して大河ドラマのように主人公の運命が翻弄され、ドラマティックな展開があるわけではありません。ポジティブな希望が語られるわけでもありません。しかし登場人物が目にする一つ一つのもの。子供の目の色、周りの女性たちの会話、建物の床の素材……そういったひとつひとつのディテールから、確かな「希望」が感じられたのです。
なぜ文章を書くのか?
この本には三編の小説の他に、一本のエッセイが収められています。ブログもそうなのですが、c71さんの文章は、平易なのに読み進むうちに奥深くへ引きずりこまれるような不思議さがある。そして気づくと、彼女の文章を読んでいたはずなのに、自分の内面の中で対話がはじまっているのに気づくのです。
「なぜ書くのか?」
ブロガーに限らず、「書く人」であれば、皆考えたことがあるのではないでしょうか?
依頼されて書く文章であれば、目的がはっきりしているので作りやすいですが、ブログについては、特にこういう「存在意義」について考えこんでしまうことが多かったのです。
人によって、書く理由はそれぞれでしょう。しかし、このエッセイを読んで、こんなに美しく暖かな「書く理由」があるのだ!と思いました。
あえてここに、引用はしません。
一人ひとり、読んで、発見してほしいと思います。
- 作者: c71
- 発売日: 2016/03/16
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