最近、Facecbookで、「社交不安障害を克服しよう!」的な広告ばかり出てくるんですよ。Facebookめ……わたしが人間関係苦手なことをなぜ知っている……。しかも、それがなんというかものすごく今風というかおしゃれな感じで出てくるんですね。というわけで、今アメリカでアツいっぽいメンタルヘルス系サービス(今風)についてちょっと調べてみました。
Joyable
初めに見かけるようになったのがこちらです。Joyableは、認知療法に基づいて社会的不安を緩和するという12週間のオンラインコーチングプログラムを提供する会社です。2012年に設立されました。
初めの7日は無料で、その後1週間25ドル(月額99ドル、3ヶ月239ドル)。93%のクライアントが「社交不安を減らすために効果があった」と証言しているそうで、2015年末には8ミリオンの資金調達をしています(参考記事)。
TalkSpace
次によく見るようになったのがこちらのオンラインカウンセリングサービスTalkSpaceです。
アプリを通じて、クライアントにマッチしたセラピストを選び、マッチされたセラピストと、音声、ビデオ、チャットなどで会話し放題というサービス。週に25ドルという値段はJoyableと同レベルです。Joyableのコーチが認知療法のトレーニングを受けた人なのに対し、TalkSpaceでは資格を持ったカウンセラーがつきます。また法人向けにもサービスを提供しています。
Joyableと同じ2012年に創立されたNYの会社で、こちらはなんと今年新たに15ミリオンの資金調達を果たし、トータルでは28ミリオンの資金を集めています(参考記事)。
カウンセリングのニーズ
アメリカでは、カウンセリングのニーズが高く、比較的気軽にカウンセリングに行く傾向があります。映画とか海外ドラマを観ていると、学校にカウンセラーがいますよね!あと、配偶者やパートナーとうまくいかなくなった時に行うカップルカウンセリングも盛んです。
カウンセリングやセラピーを受ける時、どこに行くのかは迷いますが、「精神科医(psychiatrist)」が医者の資格を持ち、時に薬を処方するのにに対し、カウンセラー(psychologist)はカウンセリングや行動療法的を通じて問題を解決しようとします。
カウンセラーを、受ける中でカウンセラーが必要だと感じるなら精神科医の紹介を受けることもあります。
TalkSpace内容には「退役軍人向け」「LGBT向け」などのセクションが用意されています。この2つのグループはメンタルヘルスのハイリスクグループとして捉えられているんですね……。
(ちなみに、移民もメンタルヘルスの面ではハイリスクグループだと思います。会社や配偶者の都合などで移住してきて環境の変化に適応できずに苦しむ人は少なくありません。また、英語が不自由な場合は、このような英語で提供されているセラピーサービスにアクセスできなかったりもするので、結構深刻。在外邦人にとっては、日本語で思いのたけをぶちまけられるSNSというのは意外と貴重な場所になっているのかもしれないな〜と思ったりします。あ、話がずれました)
「ベンチャー系」のカウンセリングサービスの特色と懸念点
個別に「オンラインセッション」を提供しているカウンセリングサービスは割とありますが、ここで紹介したような「今っぽい」メンタルヘルスサービスの特徴は、複数のカウンセラーやコーチを集め、企業はプラットフォームだけを提供するという形を取っていることです。
メリットはその利便性とコストです。わざわざクリニックに足を運ばなくても、スマホやPCがあればカウンセラーと24時間話ができるのは、便利ですよね。また通常のルートでカウンセリングを受けると、医療保険のカバレージにもよるが、大体一回数十ドル〜数百ドル課金されることもあります。「いくらかかるか分からない」という不安を抱えた状態では、カウンセリングにアクセスがしづらいので、料金の面で明瞭で、予測可能性があるこのようなサービスには魅力を感じます。
逆に、デメリットというか懸念点もあります。まず、サービスを提供するカウンセラーやコーチたちもまたコントラクター(いわゆる外注)なので、何かトラブルがあった時企業が迅速に対応できるのか?責任の在り処が曖昧にならないか?という点があります。これは、AirBnbやUberと同様です。さらに、登録されているカウンセラーやコーチと登録が少ない場合、クライアントに対して適切なマッチングがなされないのでは?定額制で相談し放題なので、オーバーワークになり、クオリティが落ちないか?という点も気になります。またメンタルヘルスも「健康」についての話なので、それを純粋な営利企業が手掛けていくことに対しては一抹の疑問があります(今のところ、これらのサービスは医療保険ネットワークやメディケア・メディケイドに参加していません)。
しかし、医療費の不透明さや、外出できないなどの理由で既存のセラピーにアクセスできない人というのは確実に存在するわけです。そういう層に対して、セラピーを提供できるようになり、楽になる人が増えるのなら、そのこと自体はよいことですよね。うーむ。
どっちにしろ、このようなメンタルヘルス系のサービス市場にマネーが集まり、クールで洗練された今時の手法でマーケティングがなされているのはアメリカっぽく、興味深いと思いました。