プエルトリコの連邦裁判官が「同性婚を認めたアメリカ最高裁の判決は、プエルトリコには当てはまらない」という判決をくだしました(参考記事)。
プエルトリコの位置づけ
このニュースを理解するためには、「プエルトリコ」について知らなければなりません。実は、プエルトリコってものすごく微妙な地位にあるんです。「国」じゃないんですよ、カリブ海にうかぶこの島は!アメリカ合衆国の領土でありながら、自治が認められている「コモンウェルス(自治連邦区)」という政治的地位にあるのです。わたしも、アメリカに引っ越し来て、プエルトリコ出身のカワイコちゃんに教えてもらうまで知りませんでした。
プエルトリコ住民はアメリカ国籍を保有しますが、合衆国連邦(所得)税の納税義務を持たない代わり、大統領選挙の投票権はなく、 合衆国下院に本会議での採決権を持たない代表者(Resident Commissioner)を1人送り出すことが認められている。ってものすごく中途半端な位置ですね。プエルトリコの他には、北マリアナ諸島がこれにあたり、日本人に馴染みの深いサイパンも同じ立場にあります。
プエルトリコの財政危機
プエルトリコは、財政危機に苦しんでおり、去年8月にはデフォルト(債務不履行)に陥っています。ここらへんについては、いかの記事もご覧ください!
アメリカ合衆国の「州」の管轄下の地方自治体であれば、チャプター9に基づく破産をすることができます。デトロイト市とか、オレンジ・カウンティー郡とかありましたよね!?しかし、プエルトリコの地方自治体は「州」に属しているわけではないため、法律上破産することができません。今これを認めるようにする法律がアメリカ議会に提案されていますが、もしこれが通ったとしても、問題をすべて解決してくれるものではありません。なぜなら、プエルトルコの債務のほとんどは、地方自治体ではなくプエルトリコ政府本体が発行しているものだからです。
個別の自治体ではなくプエルトリコ自体を破産させることはできるのでしょうか?今は、アメリカは「州」自体は破産が認められていません。プエルトリコ自体は、現在「州」ではなく、「領土」です。そこで法律によって、領土に チャプター9破産を認めることは一応可能です。そういう提案もあります。でもそれって、アメリカ市民にとっては「損」な話ですし、「借りパクかよ?」って モラルハザード的な問題も出てきます。←ギリシャ危機の時も問題になりましたね。
また、プエルトリコ内の親米派のなかでも、「州」とは異 なる特別扱いをしすぎると、将来の「州」への昇格活動に悪影響があるのでは?ということで、プエルトリコ本体の破産という解決法には賛否両論なのです。これについては、現在行われている大統領選挙の争点のひとつにもなっています。
微妙な立場
このように、「州ではなく「領土」なために複雑な立場に置かれているプエルトリコですが、今回の判決も、この微妙な立場を利用したものとなっています。
まさしく「州ではなく、領土なために、判決はプエルトリコには当てはまらない」というのです。
プエルトリコでは、住民の56%がカソリック、33%がプロテスタントであり実に89%がキリスト教信者!ということもあり、同性愛に対する風当たりはそもそも強いようです。
しかし、プエルトリコのアレハンドロ・ガルシア知事は、「判決に関わらず、プエルトリコでの同性婚は合法なままだ」とする方針を発表しており、状況はまさにカオス。そもそも、去年の6月の判決の後、プエルトリコで同性婚が可能となったのも、このガルシア知事が知事命令によって同性婚を認めるようにしていたからであって、同性婚を禁じていたプエルトリコの法律自体は改正されたわけではなかったんですねー。
今も続く「同性婚戦争」
アメリカでの「同性婚」は「認められてよかったね、めでたしめでたし」的に終わった問題ではありません。共和党の大統領候補であるトランプ、クルーズ、ルビオらが揃って「当選したら同性婚を認めた判決は覆す」旨の発言をするなど、今この瞬間も戦いが繰り広げられています。
一度勝ち取った平等な権利が奪われかねないことは、プロップ8を見ても明らか。しばらくはプエルトリコがその最前線の「戦場」となりそうで、目が離せません。
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