レオナルド・ディカプリオ主演、トム・ハーディー、そして、音楽は坂本龍一、監督は『バベル』、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。ゴールデングローブ賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞を受賞し、アカデミー賞でも12部門ノミネート中!大作との呼び声高いこの作品をIMAXで観たのでレビューします!
あらすじ(ネタバレあり)
舞台は1823年。フランス領だったルイジアナ(現在のダコタ)をアメリカが買い取ったあとの出来事。極寒の荒野の中、キャプテンアンドリュー・ヘンリーのもと、仲間たちと息子と狩りをしていたヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は狩猟中にネイティブアメリカンのアリカラ族に襲われて、多くの仲間を殺されてしまう。生き残った仲間たちは、もっとも地域に詳しいグラスの助言に従い、ボートは捨てて、陸路でフォートキオワ居留地に戻ることにした。
しかし、ジョン・フィツジェラルド(トム・ハーディー)はグラスを信じておらず、またグラスとネイティブアメリカン女性との間に生まれた混血の息子、ホークに対しても敵対的に接する。フィツジェラルドは、かつてネイティブアメリカンに半分頭皮をはがされた経験があり、それ以来ネイティブアメリカンによい印象を持っていないのだ。
居留地に戻る途中、グラスは、子熊を連れた母熊に襲われ、熊の爪によって瀕死の重傷を負ってしまう。ホークは親身にグラスに付き添い、仲間たちも手作りの担架で彼を運ぼうとするが、雪に覆われた過酷な地形のなか、フィッツジェラルドは「彼がいるから皆が遅くなる。彼を連れていけば皆死んでしまう」と、グラスを殺すことをキャプテンに提案する。キャプテンは、一度は銃口をグラスに向けるが、殺すことができず、グラスが死ぬまで付き添い、きちんと埋葬をしてくれるボランティアに対して金銭の支払いを約束する。フィツジェラルドと息子のホーク、さらにジム・ブリッジャーという若者がボランティアとして名乗りでる。しかし、フィツジェラルドは、グラスを殺そうとし、さらに、それを見つけたホークを殺してしまう。
目の前で息子が殺されるのを見ながらも、自らが死の床にあるため、身動きがとれないグラス。フィツジェラルドは、ブリッジャーに「ホークが行方不明だ。アリカラ族が近くにいる。早く逃げないと自分たちの命が危ない」と嘘をつき、グラスのことを埋葬用に堀った穴に埋めて逃げようとする。ブリッジャーは、まだ生きているグラスを見捨てることに良心の呵責を覚えるが、持っていた水筒を穴において、一緒に逃げてしまう。
その後、奇跡的に一命をとりとめたグラスは、裏切り、息子を殺したフィッツジェラルドに復讐を果たすべく、猛威をふるう大自然に耐えながら長距離に渡る旅を始める。
感想
ぶっちゃけ、トム・ハーディーの英語が聞き取りづらく、何を言っているのか、一割くらいしかわかりませんでした。アメリカ人のFionaもわかんなかったそうですw これだから英語の時代劇は難しすぎる!でも割と単純なストーリーで迫力のある映像なので、ぼーっと観ていてもそれなりには楽しめます。
よいところ
雄大な景色がすごい。アメリカってこんなんだったの!?とびっくりしました。西部開拓時代の雰囲気が味わえます。撮影は、カナダやアルゼンチンでも行われたそうですが、とにかく、すごい。大自然の雄大さと寒さがリアルに迫ってくる映画です。
「雪山でのサバイバル物」ということで、『グレイ』を思い出したかなー。
あと、この映画もすごいんだけど、さらにすごいのはこれ、実話を元にしているということ。グラスは実在して、本当に熊に襲われ、仲間に見捨てられてたらしい。すごー!
実際のヒューゴ・グラスが熊に襲われたのは、サウス・ダコタ州らしいです。ほうほう。行ってみたい。わたしはアメリカの歴史にあまり詳しくないのだけど、そこらへんについて調べたり知るきっかけとなれたので、そこはよかったです。
嫌だったところ
まずね『 蘇えりし者』っていうタイトルにケチつけていいですか?主人公のグラスが蘇るところがリアルじゃない。熊に襲われ、既に死にかけで、冷たく凍った土の中に埋められ、食べ物もろくにないような状態から、あそこまでがバリバリ活動して蘇るっていうのは、ありえなくないですか。まあ「実際にあった話なんだよ」と言われればそれまでなんですが、なんとなくねー。
ネイティブアメリカンの歴史と白人男の都合のよい願望
あと、ネイティブアメリカンを騙したり、虐殺していった歴史に触れてあり、ちょっと観ていて辛くなるシーンはあってそこも辛かったです。でも本当にずるいなーと思って嫌だったのは、映画のなかでは悪い白人=フランス人ってことになってるんですよね!
フランス人は、パウニー族をだまして不利な取引をしたり、娘をさらっていったりする。しかし、レオ演じるグラスは白人ではあるけど、そもそもネイティブ・アメリカンの妻がいて(フランス人に殺されたっぽい)、部族の言葉も話せるし、旅の途中で、パウニー族の男と交流して命を助けてもらったり(この男もフランス人に殺される)、フランス人に捉えられレイプされているネイティブアメリカンの女性を救い出したりとか、なんというかいい感じで「僕は例外的によい白人」って感じで、見てるアメリカ人が罪悪感を覚えることなく、都合よく主人公に感情移入できるようになっている。
白人男が少数派の女と恋愛して救ってヒーローになるとか、もうやめません?
映画のラストシーンで、ネイティブアメリカンの女性が、自分の部族の人と一緒にグラスの側を通りぬけるわけです。
グラスが、馬の上に乗っている女性を見つめ、女性も見つめ返すんだけど、何も言わず通り過ぎていくのね。そこでグラスは、まあいろんなことが終わったーというのもあるんだけど、魂が抜けたようになってしまい、雪のなかに、亡くなった妻の幻影をみて、呆然として終わるのね。
この感じ、先住民フェチっぽくて非常に気持ち悪い。
よく、「少数派の女性と恋愛関係になることで、その人たちの気持ちがわかったり、自分の加害者性が薄くなるとでも思っているのかな?」と邪推したくなるような態度の白人男性とか見かけてうんざりするんだけど、それに近いものを感じた。
ちょっと古くなるけど、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』とか『アバター』それ系。白人の男が、ネイティブアメリカンの女と恋仲になり、最後はネイティブアメリカンのために戦うみたいな。なんだろう。そのヒロイズム、一見かっこいいし、そこにある個別の恋愛感情自体が誠実でロマンティックなのは事実なんだろうけど、よくよく考えていくと、どこまでも白人中心目線で、気持ち悪い。
なくなった妻や家族を一途に思い続けるレオ様的なのは、『グレートギャツビー』、『インセプション』、『シャッターアイランド』とかでおなじみだし、そこにきゅん♪ときちゃう女子も多いのかもだけど、これに関しては、いろいろグロテスクすぎて無理でした。
評価
- 総合評価 ★★
- 歴史に思いを馳せる度 ★★★★
- 寒そう度 ★★★★★
- 痛そう度 ★★★★
- 景色が雄大度 ★★★★★
- いろいろと都合がよい度 ★★★★★
日本公開情報
日本では2016年4月22日(金)公開予定です。