#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

毒舌になりきれず、愛もないので読後感が微妙な『東京タラレバ娘』

マンガ大賞2016にノミネートされるなど、ノリにノッている『東京タラレバ娘』を3巻まで読んでみた!

しかし、正直皆が騒ぐほど面白くなかった。わたしが、読者対象とされているような「結婚を焦って婚活を頑張り女子会に逃げるアラサー」タイプとかではないからかもだけど。いや、そもそも結婚したいと思ってもいなければ、男が好きでもないのでつまんないのかな?と思ったけど。それにしても、そもそもは安野モヨコハッピーマニア』とか、SATCとか、デス妻とか、高校生ドラマ(『ゴシップ・ガール』とか、『プリティー・リトル・ライアーズ』)とか、「自分とは全然違う世界」の話の作品でも楽しめるタイプなのですけどね。

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↑タラレバ娘も観ていた『ゴシップ・ガール』w んー?なんで、これはこんなにつまんないんだろ?と思ってその理由を考えてみました。

イマイチポイント(1)毒舌が芸の域に達していない

まずは、これ。毒舌があんまり笑えないんですね。いや、自分に当てはまるからとかじゃないですよ。作者がタラレバ娘当事者じゃなくて、タラレバ娘に対して、上から目線で説教してる的なところがあるからなのかな?自虐に見せかけて、これ、作者の立場はそこじゃない。だから、結構容赦ないし、なんというか愛がないから、単にキツい口調で、痛い女たちをクサしてるだけで……。毒蝮にしろ、綾小路にしろ、毒舌を芸にするためには、ある程度高度なテクニックが必要だと思うのだけど、それがないのよね。単に毒づいているだけという印象。

イマイチポイント(2)毒舌になり切れてない

さらに、この作品は本当に毒舌か?というと違う気がする。確かに、一見過酷な現実をつきつける的なポーズは見せてい るのだけれど、究極的には、毒舌になりきれていないんですよね。

主人公たちがしっかり、美少年モデルKeyと仲良くなってみたり、箱根に行って…とか少女漫画、まんまじゃん。元カレと再会しても、元カレがしっか り、人気バンドで成功していたり、程よく都合よくて、「いやいやいや、そもそも、そこ、そうなんないのが現実だから」「つっこみキャラ」っぽいノリでありながら、お前自身に、つっこみどころがありすぎるんじゃー!って感じで、どういうモードで読めばいいのか迷いました。少女漫画なら少女漫画でそれは好きなんですが、混ぜられるとつらい。

このマンガを「毒舌説教マンガ」として捉えている人は、ここらへんの都合よい少女漫画展開についてはどうとらえてるんですかね?

全体的な設定も、微妙に少女漫画なのよね。脚本家とか、モデルとか。一応働く女ではあるんだけど、微妙におしゃれで、リアルっぽさがなくて、やっぱり少女漫画的というか……。共感を拒むなーと思ったわ。←小市民なもので……。

ドラマティックなハイテンションで笑いを取りにいく感じは安野モヨコと一見似てるんだけど、何か決定的なものが欠けている気がした。安野モヨコも、少女漫画出身でありながら、自らを客観視してそういう都合のよい乙女な勘違いを笑いにしたり、安易なロマンティックラブを相対化したような視点が感じられるんだけど、そのバランス感覚がすごいんだよね。漫画家なのに、というのも変な話だが、そこらへんの勤め人の気持ちがよくわかっていらっしゃる。やっぱり、安野モヨコはすごい。あ、結論そこかい!

イマイチポイント(3) 多分根本的に、作者と考えが合わないw

おいおいそこかよwって感じだけど、こういうジェンダー系のネタって作者との相性がめちゃくちゃあるわけです。「結婚したい」という思いをどう描くかとか、社会からのプレッシャーを何の逡巡もなく、自らの願いとすることができるタイプなのか、それとも、「自分の幸せって何だろう」って考えこむタイプなのか。タラレバ的都合のよさを、女だけの罪と描くのか、男も同じくらい勘違いしてるよねwという部分も含めて描くのか。『ヒモザイル』休載事件とかでも思ったけど、東村アキコは絵も好きだしギャグも面白いけど、根本的なところで、考え方が合わないのかも?と思ってしまいました。すみません。

ちなみに東村アキコの他の作品『かくかくしかじか』とか『海月姫』は大好きです。『かくかくしかじか』は「先生怖いぉ……」とかちょっとありましたけど。それについては、また書きまーす!