#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

ブロードウェイ・ミュージカル『The Prom』がめっちゃよかった!!

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The Promは2018年10月にブロードウェイでオープンした新作ミュージカルです。リメイクではなく、オリジナルの作品です。今年は、ストーンウォールの反乱50周年なのと、及びワールドプライドに合わせてニューヨークを訪れたのですが、どうせブロードウェイ観るなら、レズビアンをテーマにしたこの作品を観たい!と思って軽い気持ちでチケットを撮りました。

あらすじ(ネタバレあり)

ブロードウェイでエレノア・ルーズベルトの人生を描いた新作ミュージカルに出演したものの、自己中過ぎてキャラクターを理解していないとコテンパンな批評を受けたミュージカル俳優のディー・ディー・アレンとバリー。かつて人気を誇ったが現在では旬を過ぎている2人は、自分たちのイメージアップのため、2人の友人(ジュリアード音楽院を卒業したことが誇りのトレントと、長年シカゴにコーラスとして出演しながらも決して主役にはなれないと言われたアンジー)とともに、何か人助けができないか、社会運動のネタを探し、ツイッターで、インディアナ州に住むレズビアンの女子高生エマのことを知る。

インディアナ州の高校に通うエマは、卒業パーティ(プロム)に同性の恋人の同伴を求めたために、プロムが中止になってしまい、そのことを恨むクラスメイトからのイジメにあっていた。校長のホーキンス先生はエマの味方だったが、PTAとの話し合いをしている最中に、ニューヨークからやってきたディー・ディーたちが登場し、話し合いはめちゃくちゃになってしまう。

エマの彼女は、実は、PTA会長の娘アリッサだった。クローゼットな彼女は、プロム事件が話題になりすぎていることでエマを責めるが、エマ自身は有名になりたいわけでもなく、ただアリッサと二人で静かに踊りたいだけだった。

インディアナ州の司法長官は、プロムは人権問題であり、高校はプロムを開催しなければいけないと決定する。エマは、ミュージカル俳優たちの助けを得てドレスアップし、バリーと共に体育館に行くがそこは空っぽだった。

実はPTAは学校でのプロムとは別に、ストレート向けのプロムをエマには秘密で独自に計画しており、皆はそちらに行ってしまったのだった。

失意のエマに、ミュージカル俳優たちは「顔を出してメディアに訴えよう」と呼びかけ、テレビ出演をセッティンうするが、エマはその気になれない。しかし、アンジーの説得により、エマは元気を出し、動画投稿という自分のやり方でメッセージを発信する。

多くの似たような思いをしたLGBTQの学生からメッセージが寄せられ、エマはもう一度彼らのためにプロムを開催しようとするが、学校にはもうお金がなかった。ミュージカル俳優たちがお金を出しあうことに。

PTAは反対するが、生徒たちの気持ちは「聖書の教えをいいとこ取りして信じてはいけない」とするトレントの説得によっても変わっていた。トレントは高校での演技の教師のポジションをオファーされ、またアリッサは母親にカムアウトする。母親は受け入れることに難色を示すが、ゲイであるバリーに「もしも娘のありのままを受け入れなければ、娘を一生失うことになる」と言われ、渋々娘の声に耳を傾けることにする。

新しい、インクルーシブなプロムの日、多くの生徒があつまり、同性同士のカップルも含めて幸せに踊るなか、エマとアリッサはようやく一緒に踊りキスをする。 

感想

泣けた!笑った!面白かった!予想を遥かに上回るよい作品でした!特に期待せず、軽〜い気持ちで観たのですが、ほんと観てよかった!

ま、ミュージカルにもいろいろありますが、『RENT』『ヘアスプレー』あたりが好きな人はたまらないと思います!

よかった点

以下は、 ツイッターに書いたのをもとに書きます。

中年のバリーが「プロムに行ける!」とはしゃぐ『Barry is going to prom』や、アリッサが母親にカムアウトした際、拒絶しようとする母親に対して「受け入れなければ娘を失うことになる」言うシーンなどは、今ほどLGBTに対してオープンでない時代に青春時代を過ごした大人たちにとってもこみ上げるものがあるシーンだと思います。

ここは、実は制作側の意図がよかったと思うと同時に、聴衆の受け取り方がズレているのかな?と感じたシーンでもあります。

『ザ・プロム』の作者は、自己中心的な理由で「社会活動をしよう」とするミュージカル俳優たちを戯画的に描き、その肥大したエゴや「自分たちが進歩的」と信じ込んでいる態度を馬鹿にしています。逆に、聖書の教えに基づいて「ゲイは罪」と信じている人々に寄り添うようなアプローチをとっています。

もちろん「インディアナでゲイになっちゃダメ」とか「インディアナの人たちって最悪」とかエマが冗談っぽく歌うシーンはあるのですが、それはインディアナの住民であるエマ自身が歌うからこそ笑えるものなのであり、ニューヨークのブロードウェイで劇場に座っているわたしたちが笑っていいものなのだろうか?とちょっと疑問でした。

また、ミュージカル俳優たちが「僕らはニューヨーク・ブロードウェイから来たリベラルさ!」みたいな正義の味方気取りで登場するところは、彼らの独善的な態度を笑いものにしていると思うのですが、劇場では「イェーイ!」みたいな感じで、まるでそれを本当に誇りに思っているかのような歓声が湧いたり。ということで、少し違和感を覚えました。

ま、ワーワー盛り上がりながら観るのは楽しいんですけどねー。

わたしが好きな曲

一番気に入ったのは、エマが彼女に向けて歌う「Dance with you」です。これは、ベストレズビアンミュージカルソングではないでしょうか?

キリスト教の子供たちを、説得しようとする「The Acceptance Song」や「Love Thy Neighbor」などはChristopher Sieberの力強い歌声とキャッチーな曲が好きです!

あとは、ストレートなハイスクールのミュージカルっぽい「You Happend」もノリノリですし、アンジーがエマを元気付ける「Zazz」なんかは、シカゴ好きにはたまらない一曲です。

ブロードウェイ公演の終わり

さて、このように素晴らしかった『ザ・プロム』ですが、ブロードウェイでは2019年8月11日で一旦打ち切りとなりました。残念!もっとロングランしてほしかった。

ザ・プロム全米ツアー(2021 年2月〜)

『ザ・プロム』がブロードウェイで観られなくなってしまうのは残念ですが、2021年2月からは、全国ツアーが予定されています。また世界的な上映権のディールも結ばれたようなので、アメリカ国外で観られる機会もあるかもしれません!日本に行く可能性もあるかも?

http://www.playbill.com/article/broadways-the-prom-will-embark-on-a-national-tour

『ザ・プロムノベライズ

『ザ・プロム』はノベライズでの出版が決まっています。2019年9月10日に出版予定です。

http://www.playbill.com/article/broadways-the-prom-to-be-adapted-into-a-young-adult-novel

『ザ・プロム』ネトフリ映画化

『ザ・プロム』は、ネトフリ制作で映画化の計画が進んでいます。制作はネットフリックス、監督は、GLEE、アメリカン・ホラー・ストーリーのライアン・マーフィー、主演は、メリル・ストリープにニコール・キッドマン、さらにアリアナ・グランデの出演が伝えられています。超豪華ラインアップです!考えるだけでワクワクがとまりません。楽しみ〜!オリジナル・ブロードウェイ・キャストが素晴らしかったので、映画版でキャスト一新となるのが少し残念です。エマ役はオーディションで新人発掘するようです。誰になるんでしょう! 『ヘアスプレー』の映画化のときのように、ピッタリのキャストが見つかることを祈っています。

2019年12月追記:当初伝えられたアリアナ・グランデですが、残念ながらキャストは実現しなかったようです。その代わり、オクアフィーナ、ケリー・ワシントンなどのビッグネームのキャストが伝えられており、非常に楽しみです!※メリル・ストリープとニコール・キッドマンは予定通り出演しています!

評価

  • 音楽 ★★★★☆
  • 演技&歌唱力 ★★★★☆
  • ストーリー ★★★★★

The Prom: A New Musical (Original Broadway Cast Recording)

The Prom: A New Musical (Original Broadway Cast Recording)

  • 発売日: 2018/12/14
  • メディア: MP3 ダウンロード