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アメリカで働くレズの徒然

アダム・サンドラー新境地!まさに原石のような荒削りな魅力の『アンカット・ダイヤモンド』

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映画『アンカット・ダイヤモンド(原題:Uncut Gems)』ようやく観てきました。

本作品は前から観たくて何度も映画館に行っていたのですが

  • 映画の時間の午前と午後を間違える
  • 映画の上映館を間違え、別の映画が始まった

などの困難が降りかかり、なかなか観ることができず。ようやく三度目の正直で観ることができました。ふぅ。

映画『アンカット・ダイヤモンド』あらすじ(ネタバレあり)

2010年、エチオピアの鉱山での事故のゴタゴタの際に鉱山からブラックオパールの原石を掘り出したエチオピア系ユダヤ人がいた。

2012年、ユダヤ系宝石商のハワードはニューヨークのダイヤモンド地区で店を構えている。ギャンブルで作った借金に追われ、冷めきった妻との間には子供がいるが、離婚話が出ており、店の従業員のジュリアを愛人にしている。ボストン・セルティックスの選手ケヴィン・ガーネットがやってきて、エチオピアから取り寄せたブラックオパールの原石を欲しがるが、ハワードは「オークションで高値で売る」といって断る。宝石の魅力に魅せられたケヴィンは勝利のために、自らのリングと引き換えにブラックオパールの原石を持ち去る。

ハワードはすぐにそのリングを質に入れ、ギャンブルする。家庭は崩壊し、親戚からは借金をし、オパールを取り戻そうとするが、自分のスタッフにもコケにされる。愛人のジュリアはウィークエンドと二人きりでトイレにこもってしまい、怒ったハワードは別れを告げる。

ようやくオパールを取り戻し、オークションに臨むハワードだが、彼の望むほどの価値は得られなかった。オパールを欲しがっているケヴィンがオークションに参加しているので、ハワードは、自分の義父に「桜で入札してほしい」と依頼。しかし、ケヴィンが途中で入札をやめたため、養父が落札してしまう。借金取りにボコボコにされ、何もかもうまくいかない、と泣くハワードだが、ジュリアに慰められ、ヨリを戻す。

ケヴィンから「まだオパールを買いたい」と連絡が来たためようやくハワードは元気を取り戻す。そして売上のお金を、ケヴィンの夜のバスケ試合の勝利にかけることにする。

借金取りが店に押しかけて取り立ててくるなか、ハワードは愛人のジュリアに現金を渡し、カジノに行ってバスケの試合に掛けるようにと指示する。ジュリアを止めて、現金を取り戻そうとする借金取りたちを店の中の二重扉のなかに閉じ込めるハワード。

借金取りの目を逃れたジュリアは無事にカジノに到着し、全額をセルティックスの勝利に賭ける。セルティックスは勝利を収め、ハワードは1ミリオン以上のお金を儲けることができた。大喜びのハワードは、店に閉じ込めていた借金取りたちを解放するが、その瞬間、怒り心頭になっていた借金取りに銃殺される。ハワードが死んだことを知らないジュリアが店へと戻るなか、借金取り達はハワードの店の宝石を強奪するのだった。

映画『アンカット・ダイヤモンド』感想(ネタバレあり)

冒頭のオパールのなかに広がる複雑で色とりどりの輝きが、まるで、宇宙のような広がりを持ち、それが最後には人体?のクロースアップ?なのかな?というところまでシームレスにつながっていく。トリッピーな音楽に合わせてドリーミーな映像が広がるオープニングは、この映画が単なる「面白い」作品ではなく、ちょっと変な作品なんだという自己主張のようにも思えました。

まずそもそも、米国エンタメファンにとっては「アダム・サンドラーってこんな演技もできるんだ?」と言うのが一番の驚きでした。ジョーダン・ピールがホラー映画を撮り始めた時の衝撃といえばよいのか。アダム・サンドラーはこれまでもシリアスな役柄をやったことがあるようですが、きちんと観たことなかったので。本作の、シリアスなだけではなくかつ哀愁漂う演技が絶賛され、アカデミー賞も行けるかも?と囁かれましたが、ノミネートは逃しました。

制作は、『ムーンライト』や『The Farewell』で知られる気鋭の新進スタジオ「A24」。同社の映画のなかでもっとも興行成績の高い作品となっています。注目点としては、NBAのセルティックスのケヴィン・ガーネットが本人役で出演しているのと、また、わたしが最近気になっている俳優ラキース・スタンフィールドも、ケヴィン担当の営業マンとして出演して、「らしい」存在感を発揮していました。

スコセッシがエグゼクティブ・プロデューサーとして関わってるのが関係あるのかないのか「マフィア」映画っぽさもある作品です。しかし、面白いのですが、全体的にアート色…というかインディっぽさが色濃く残っており、メインストリームの聴衆にとっては好き嫌いが分かれる作品だと思います。ゴツゴツした感触の、まさに「ダイヤモンドの原石」のような作品です。

全てはダメ男の見た夢だった?

アダム・サンドラー演じるハワードは、宝石商としてニューヨークで自分の店を構え、美しい妻(イディナ・メンゼル)と子供たちもいて、一応それなりに成功しているように見えますが、実はものすごいダメ男です。その感じがこれでもか!と描かれているのですが、何故か愛人のジュリアはハワードに忠実で彼を慰めてくれるんですよね。別にかっこよくもないハワードに惚れていますし、セクシーですし、別れを告げられれば、すっとアパートから退去してくれますし、そのくせ、ボコボコにされたハワードを優しく慰めてくれますし、大金を持ち逃げすることもなく、ギャンブルの手助けをしてくれる。これ、さすがに、都合よすぎなのでは?とか思いました。もしかして、途中から全部彼が借金取りに殺されてからの、一瞬の「走馬灯」的な妄想だとしても驚かないですね。←『マルホランド・ドライブ』とか『バードマン』的なアレですね。実際には本作はそうではないと思いますが。

音楽が超独特

アンカット・ダイヤモンドの雰囲気を作り上げるのに大きな役割を果たしているのが音楽です。シンセサイザーを中心にした、なんとも言えないトリッピーな音楽は、浮遊感と不安感に満ちており、デイビッド・リンチ監督の『ツイン・ピークス』を思い出しました。

本作は2時間ずっとまるで熱病にうなされている時の悪夢のような落ち着かなさを持っているのですが、その雰囲気をサウンドの側面からよく表していました。オリジナルスコアはアルバムも出ており、これだけでも素晴らしいですが、他の音楽も皆印象的な使われ方をしています。

映画『アンカット・ダイヤモンド』評価

映画『アンカット・ダイヤモンド』はロッテン・トマトで批評家スコア92%と高い評価を受けていますが、オーディエンススコアは52%と微妙な点数です。

ミニシアター系が好きな人はよいと思いますが、ブロックバスター系のアクションや、わかりやすいマフィア映画を期待している人はがっかりするものかもしれません。

  • インディ度 ★★★★★
  • エンタメ度 ★★★☆☆
  • アダム・サンドラーの演技力 ★★★★★

映画『アンカット・ダイヤモンド』概要

  • 監督:ジョシュ・サフディ、ベニー・サフディ
  • 脚本:ジョシュ・サフディ、ベニー・サフディ、ロナルド・ブロンステイン
  • 制作:A24
  • 上映時間:135分
  • 出演:アダム・サンドラー、イディナ・メンゼル(『アナと雪の女王』)、ラキース・スタンフィールド、ケヴィン・ガーネット、ザ・ウィークエンド

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