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モルヒネの1万倍なのに合法!?北米に上陸した超強力な危険ドラッグ「W-18」ってどんな薬物?

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恐るべき新種の合成オピオイドモルヒネ状物質)が北米に上陸した。「W−18」として知られるようになったこの物質は、マウスに対しての実験によればモルヒネの100倍強力なフェンタニルのさらに100倍強力であり、人体への正確な影響はまだ未知数だ。

この物質は1984年に初めて合成されたが、『ブルーライト*1』のようなフォーラムに登場しはじめたのは2012年のことだ。しかし投稿される内容は「使用レポート」のようなものではなく、物質の内容だとか効能についての質問がほとんどだった。

ストリートにおけるW-18のリクリエーショナル使用が話題になったのは、去年、カナダでのことだ。2015年8月、カルガリー警察は110錠の「偽オキシコンチン」こと「シェーディー80s」を押収した。

photo by dmixo6

オキシコンチン(成分名:オキシコドン)は、トヨタの女性役員が、日本に密輸したとして逮捕された時に問題となった薬物である。モルヒネと同様に作用する強力な鎮痛剤として、がんなどの強烈な痛みを収めるために、医療の現場でも使われているが、同時に、リクリエーショナル目的としても人気がある。パフォーマンスアップとか、サイケデリックな効果があるというものではなく、痛みがなくなり、頭がぼーっとして深くリラックスできるのだ。

「薬物中毒」というと、違法な麻薬とかそういうのをすぐ想像するかもしれないけど、製薬会社が作って、医者が処方するこういう薬にも立派に依存性があり、中毒患者を産みまくっているんだよね。だからわたしは薬物問題を考えるとき、すぐに「合法」とか「違法」という話をするのは嫌いなんだけど、まあそれはさておき。

真正なオキシコンチンは、片方に「80」、裏面に「OP」または「OC」という刻印があるため、シェーディー(信用出来ない)=つまり偽物っぽいオキシコンチンは「シェーディー80s」とか「ビーンズ(豆)」と呼ばれる。押収した「シェーディー80s」にフェンタニルが含まれるとふんだカルガリー警察が解析へ回した結果、12月になって、一部には「W-18」が含まれていることがわかった。

近年、アルバータ州におけるフェンタニル関連の死亡例は急増している。2011年にはたったの6件だったが、2014年には120件、そして2015年には213件が報告された。この背後には「シェイディー80s」の増加が関係しているが、はっきり「W-18」による死亡例がどれくらいあるかは不明である。

去年に解析に回されたのは、このエリアで流通しているより大量の「シェーディー80s」のうちの一部にすぎない。警察はこのエリアで去年で2万1千錠の青緑色のピルをこのエリアで押収している。W-18は、犯罪組織によって、大規模に、外国から(おそらく中国から)輸入されているはずだと警察は考えている。

このような薬物の一番の危険性は、薬物自体の毒性や中毒性以上に「クオリティーコントロールの不存在」である。それぞれの施設で独自に製造される薬物は、内容物も濃度も一貫していない。手作りチョコレートチップクッキーを作るようなものだ。クッキーのなかにどの程度「チョコレート」が含まれているかはまちまちで、実際食べてみるまでわからない。刻印やデザイン、色、入手先、値段などを元に、インターネットの口コミサイトなどで情報交換するしかない。

研究用なら入手できるW-18

北米でもW-18を作っている施設がある。ミシガン州アナーバーを拠点とする「ケイマン・ケミカル」は研究目的のために、様々な試薬や化学薬品のオンライン通販を提供している(日本では岩井化学薬品やフナコシと提携している)。

「W-18」はあまりに謎が多く、規制対象となる「フェンタニル」の類似物質でもない。アメリカやカナダの法律ではまだ規制されておらず、DEAの「問題となるドラッグ」リストにも登場していない。指定薬物ではないために、オンラインで買おうとしても「制限されている製品:この製品は指定薬物を含み、購入には、特別な手続きが必要です」といった注意書きは出てこない。しかし、誰でもオンラインでW-18を購入できるわけではない。1mg分のW-18(49ドル)を購入したいという申し込みには、ケイマン・ケミカルからは以下の様な返信が送られてきたという。

「ケイマン・ケミカルは研究目的のため、製薬、学術、医学などの施設に足しいて、高いグレードの原料を提供する生化学企業です。我々の製品はケイマンケミカルにおいて、研究目的のためのみに製造されており、FDAによって、人体や動物に対しての治療目的のためには承認されていません。あなたの所属する研究施設をお教えください」

出処が中国の犯罪組織であれ、北米の研究施設であれ、W-18は既にマーケットに出回りはじめている。この超強力な錠剤は、モルヒネの1万倍強い!マジでヤバいってことだけはわかるけど、その正確な人体への影響と危険性は、まだ誰もきちんと把握していない。ディーラーはただお金のために、このドラッグを扱っている。

あなたは、死ぬには若すぎる。充分に気をつけてほしい。

<参考記事>

yuichikawa.hatenablog.com

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*1:情報提供を通じて、薬物使用に関するハームリダクションをミッションとするウェブサイトhttp://www.bluelight.org/