『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観たよ!
【あらすじ】
コンプトン出身、ギャングスタ・ラップの伝説的ヒップホップグループN.W.A.の伝記映画。コンプトン出身の音楽好きの若者たちは、麻薬売買でお金を稼いだエリックの設立した「ルースレスレコード」からラップのレコードを発売。地元でヒットになる。やがてこれに目をつけた敏腕のマネージャーが彼らをよりビッグになれるようにと手助けするが……。
【感想】
面白かったー!でも「ドキュメンタリー」的な感じを想像してはだめ。めちゃくちゃハリウッドのエンタメ仕立てです。
N.W.A.を美化しまくってるなぁーという気もした。Eazy-E以外は皆真面目系のキャラとして描かれている。まあ当事者であるDr.Dre、Ice Cube、そして、亡くなったEazy-Eの奥さんなどが制作に関わっているのだから、美化するのは当然といえば当然なんだけどね。
俳優のセレクションも、とりあえず皆似てるんだが、微妙に美化されて似ている。実の息子が演じたアイスキューブにはカリスマ性があってよかった。
あと、改めて考えさせられたのは、警察の黒人に対する暴力。これって昔からあった問題だったんだなーって学んだ。今も、全米で警察による黒人への暴力が大問題になり「BLM(ブラック・ライブス・マター:黒人の命は大事だ)」運動が盛り上がっているけれども、これって一朝一夕で始まったわけじゃないんだよね。そういう警察の横暴、それをも取り込んで巨大になっていくN.W.A.。でも、ちょっと美化されているというか「勝者が書いた歴史」っていう感じはした。
外見の美化だけでなく、ドクタードレや、アイスキューブは徹底して「いい奴」になってるし。彼らの作品には、女性蔑視やホモフォビア、トランスへの暴力を煽るような歌詞が結構あるんだけれど、そういうのへの問題意識はなし。時代背景や、彼らの置かれていたリアリティを思えば、「全方向に対して政治的に正しくないからダメ!」と言いたいわけではないけど。それにしても、フェミスイッチを切らないと楽しめない映画ではある。
例えば、実際の歌詞はこんな感じ↓
彼女が下着を取ると、このアバズレ、ちXこ持ちだ! こんちくしょー!手からチャカ落ちた。 アマだと思ってたんだ、まさか野郎だとは! チャカをヤツの足に押し付けてやろ。 スカートの方までずっとな。 なぜってこいつはオカマ野郎 ぶちのめさないとな。
She took her panties down and the bitch had a dick! I said: "Damn", dropped the gat from my hand (What I thought was a bitch, was nothing but a man) Put the gat to his legs, all the way up his skirt because this is one faggot that I had to hurt, so
「彼氏がいるの」だ?嘘つけアバズレ うすのろのアバズレ、てめぇはレズだろ
"I got a boyfriend" Bitch stop lyin Dumb-ass hooker ain't nuttin but a dyke
ヒップホップはもともとお行儀よい音楽ではありませんが、それにしても、そこにある女性蔑視やホモフォビア、トランスフォビアについては、きちんと批判していかないとダメだよね。
現在のコンプトン
ちなみに、コンプトンは、徐々に治安がよくなってきていて、そこまで「ゲトー」な感じではない。黒人も減ってきていて、今コンプトンではラテン系の住民が多数を占めている。まだメディアでは「コンプトンやばい!黒人の街!」って感じだけど、エリアによってはフィリピン人やベトナム人などの移住もすすみ、街の性格も変わってきているようだ。
ちなみに、ロサンゼルスの地区別世帯収入を見ると、コンプトンは$43,157で、エコーパーク($37,708)とか、ノースハリウッド($42,791)とか、コリアタウン($30,558)より高い。一番低いのは、ダウンタウンの$15,003 だ*1。