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アメリカで働くレズの徒然

「私が間違ってた」同性婚をめぐるリズ・チェイニーの変節と、トランプ人気にすがる共和党のヤバさ

Liz Cheney 2024年大統領選挙 Tシャツ

リズ・チェイニー(共和党・ウィスコンシン)が同性婚について態度を変えたことが話題になっている。

ディック・チェイニー元副大統領の長女であるリズは、妹メアリーがレズビアンであるにも関わらず2013年の選挙期間中に同性婚に反対だと発言した。メアリーはフェイスブックで「姉は間違っている」と反論し、チェイニー家は同性婚をめぐり分断された。

しかし、それから8年。リズ・チェイニーは過去の同性婚についての自らの立場が「間違っていた」と認めた。

私がツイッターで字幕をつけた動画は9月29日現在420回リツイートされており、多くは「自らの過ちを認められる政治家」リズ・チェイニーに対して好意的な評価をしている。

リズの発言について妹のメアリーはフェイスブックで以下のように反応している。

ユーモアを忘れないアメリカ人らしいやりとりだ。

ほっこりするやり取りだが、若干補足しておきたい。

まず、リズ・チェイニーは、このやり取りから「のみ」で想像させられるようなリベラルな政治家では決してないということだ。リズ・チェイニーはトランプ前大統領を批判し、他の9人の共和党議員とともに、トランプの弾劾に賛成した。チェイニーはこのことが原因で共和党内での重役の座を追われたが、トランプ前大統領が掲げた政策自体については賛成しており、現在もバイデン大統領の政策を批判している。グアンタナモ収容所で行われ、拷問であると批判されたウォーターボーディングという手法を今も支持し、米国市民に広く健康保険を提供したオバマケアに反対し、銃規制や中絶規制に反対している。

彼女のトランプ批判のポイントは、2020年の大統領選挙に不正があったとする根拠のない主張であり、それをもって議事堂襲撃まで煽ったトランプの民主主義手続きへの攻撃であった。しかし、それが反発を呼び、リズ・チェイニーは共和党内の政争に負け、 共和党下院会議議長という下院ナンバー3の重役を解任された(参考)。

リズ・チェイニーは、ワイオミング州から再選をかけて2022年に出馬する。トランプ前大統領は、対抗馬のハリエット・ヘイグマンを推薦している(参考)。

ヘイグマンは常にトランプ支持していたわけではなく2016年にはテッド・クルーズとともにトランプを「レイシストでゼノフォビック」と批判していた。ヘイグマンはそもそもチェイニー家とつながりが強く、2013年には、リズ・チェイニーのアドバイザーも務めていた。しかし、その後ヘイグマンはトランプを「最高の大統領」と称えるまでに態度を変えている。

このようにトランプに対する態度を変えた共和党議員は、ヘイグマンだけではない。テッド・クルーズ、リンジー・グラハムなど他にもいる。トランプのやり方に違和感を覚えながらも、自らの選挙区である地元でトランプが人気であることを理解した彼らは、再選を勝ち取るためにトランプ人気を利用しようとしている。

60minのテレビ番組に出演したチェイニーは共和党議員がこっそりと彼女の元を訪れ「あなたは正しい」と伝えながらも、公にはトランプ批判をしていない現状について語っている(参考)。

このような動きは、米国の共和党が劣化し、安易に支持率を稼げるトランプ主義に頼っている反映と捉えられている。

リズ・チェイニー個人が、同性婚というひとつの論点について考えを改めたからといって、それはチェイニーの政策が「リベラル」なことにはならないし、ましてや共和党が「まとも」なこととは程遠いのだ。