バレンタインデーに発表されたジャスティン・ビーバーのドキュメンタリーシリーズ「シーズンズ」。初回エピソードが3,250万回も再生され、YouTubeのオリジナルコンテンツのなかで最も観られたエピソードとなった。
- アーティスト:Justin Bieber
- 出版社/メーカー: Def Jam
- 発売日: 2020/02/14
- メディア: CD
内容は、新アルバム『ザ・チャンジズ』の制作風景や、本人、妻のヘイリー・ビーバー、マネージャーのスクーター・ブラウンなどのインタビューで構成されており、結婚や薬物使用などについてもカバーされている。特に「構成」という構成はなく、散漫な印象だ。ジャスティン・ビーバーが休養していた間、公式からのコンテンツ供給がなく、飢えていたファンにとっては嬉しいだろうが、ファン以外が観て、楽しんだりインスピレーションを受けとれるか?というと、謎である。
また、ジャスティン・ビーバーの焦燥した姿と、既に25歳だが、時折見せる子供のような表情は「正直まだまだ回復途中」のように感られ「人生切り売りするビジネスモデルはまた辛くなるのでは」と心配になってしまう。正直、あんなにキラキラした瞳を持っていた少年をこんなに荒ませてしまったエンターテイメント業界が恐ろしいと感じる。しかし、ドキュメンタリーといっても内輪受けのリアリティ番組のようなものなので、ここらへんについてはさっぱり語られないのが物足りないところ。
ジャスティン結婚したり音楽活動を再開するなど、一時よりは回復しているのだろうが、まだまだ安定しているように思えず、「とにかく無理せず生き延びてほしい」と祈るような思いを持った。
やっぱりジャスティンは「金の卵を産むガチョウ」
『ジャスティン・ビーバー:シーズンズ』はビジネス的には大きなインパクトを持っている。本作品を配信するために、YouTubeは20億円以上払ったと言われており、これはYouTubeオリジナルコンテンツ獲得としては過去最高額の契約だった。
ま、クオリティが低くても、ジャスティン・ビーバーのドキュメンタリーというだけで観る人、観たい人がいて、それでメディアとしての価値もあがるのであれば問題ないのだろう。
現在、各配信プラットフォームがオリジナルコンテンツに力を入れているが、GoogleとFacebookの戦略は今後も広告モデルであり、オリジナルコンテンツをサブスクリプションで販売するNetflix、Hulu、Amazonのモデルとは異なる。
Google傘下のYouTubeは、脚本つきオリジナル映画やドラマはほぼすべて打ち切りし、過去に有料で配信していた(そしてかつてはYou Tubeプレミアムの目玉であった)コンテンツを広告をつけて無料配信にしている。今後は(脚本のある)オリジナルドラマジャンルではなく、音楽、教育、そして有名人のジャンルに力を入れていく方針だ。
ジャスティン・ビーバー:シーズンズに代表されるような、一つの作品としてビシッと完成された佳作ではなく、ダラダラと観続けてしまうようなコンテンツが今後も出てくると思われる。