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アメリカで働くレズの徒然

男同士の絆がたまらない!映画『フォードvsフェラーリ』はカーレース好きじゃなくても楽しめる人間ドラマ

フォードvsフェラーリ (オリジナル・サウンドトラック)

『フォードvsフェラーリ』観てきました!

映画『フォードvsフェラーリ』あらすじ(ネタバレなし)

1959年、フェラーリの買収に失敗し、国内でのシェア低迷に苦しむフォードは、スポーティーなイメージで若者を引きつけるため、レースへの参戦を決定する。フォードのマーケティング担当者(ジョン・バーンサル)は、かつて、ル・マン耐久レースでドライバーとして活躍しながら、心臓病のため引退し、現在はカーデザイナーとして成功しているキャロル・シェルビー(マット・デイモン)に依頼。残り90日という限られた準備期間で、フェラーリに勝てる車を作るというミッションを課せられたシェルビーは、地元の敏腕メカニックでありドライバーとしてレースに参戦していたイギリス出身のケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)を誘うが、癖の強い性格のマイルズは、フォードの経営陣に嫌われ、「あいつをドライバーにするな」という圧力をかけられてしまう。しかし、シェルビーにとっては、ともに開発を進め車を知り尽くしているマイルズはレースを勝つために必要な存在だった。

果たして、シェルビーたちは、フォードの経営陣からの圧力に負けず、マイルズと一緒にレースに参戦できるのか?そしてフォードは、フェラーリに勝つことができるのか?

映画『フォードvsフェラーリ』感想

予想より面白かった!

はじめに予告編を観た時に「はぁ?フォード対フェラーリって何が?フェラーリに決まってるでしょw いくらアメリカの製造業推しとはいえ、vsといって対等に並べてよい存在ではないのではw」とか思っていました。

どうせフォードから巨額のお金を貰って、フォード目線のプロジェクトXみたいなの作るのでしょ、と。

しかし、意外にもそうではありませんでした。あくまで主役はカーデザイナーのシェルビーとドライバーのマイルズであり、依頼主のフォードの経営陣は割りかし悪役として描かれています。フェラーリもです。フォード社はこの映画の制作には特に参加しておらず、映画との関わりは、参考写真などの提供などにとどまっていたとのことです。

performance.ford.com

というわけで、割と面白かったのですが、フェミニズムやクィア的な視点はなく(シェルビーとマイルズが取っ組み合ったりする「男の友情」に萌 えを感じる向きはあるかもしれませんが)そういう点ではオスカー候補になってなければ個人的には観てなかったと思います。

なぜ、ケン・マイルズはスピードを落としたのか?

この映画で特に印象に残ったシーンが二つあります。

一つは、マイルズをドライバーとして起用し続けるため、フォード2世を説得しようとするシェルビーがフォード2世をレースカーに乗せてビビらせるところ。

そして、もう一つのシーンが、1966年のル・マン24時間耐久レースの後半で、「フォード車がゴールラインで同時にフィニッシュする絵を撮りたい」という経営陣の無茶振りをうけ、はじめは反発し、独走を続けていたマイルズが、最後にギアを落とすシーンです。ひたすらに走り続け、路上に疾走する自分のマシンしかいなくなった瞬間、冒頭のモノローグにもあるような感覚がマイルズに訪れます。

「7000RPMでは全てが薄れ、マシンの重力はなくなる。残されるのは空間と時間を超えて動き続ける身体だけ…」カーレースをしたことがない観客にも、大画面でこの不思議な感覚を追体験させてくれてます。

There's a point at 7,000 RPMs where everything fades. The machine becomes weightless. It disappears. All that's left, a body moving through space, and time.

この瞬間は地味にクライマックスだと思うのですが、ここでの「速度を落とす」っていうマイルズの選択って評価が分かれるところだと思うんですよね。マイルズの息子のように「だめだよパパ!」って思う人もいれば、妻のように「これでよいのだ」って思う人もいる。

わたしは、このシーンは「自己中心的で難しい」と思われていたマイルズの別の側面を表す重要なシーンだと思うので好きですが、結果的にマイルズが優勝できなかったことを思うと残念な気持ちもありますね。このシーンはちょっと混乱したのですが、フォードからは3つのチームが出場しており、もう一つのチーム(フォード2号車)は、そもそも同時にゴールしたとしても、スタートラインが行動だったこともあり、どちらにしてもそっちが勝っていたという話もあるようです。

映画のなかでぇあ一貫して悪役として描かれているフォードVPのレオ・ビーブですが(個人的にはVPを副社長と訳すのに違和感ありw)、実際には人間的にも優れた人物であったとの証言もあり、映画『フォードvsフェラーリ』はどこまで実話なのかについては、いろいろと論議がありそうです。ここらへんはモータースポーツ関係メディアなどが検証記事を出しているので読んでみてください。ただ映画としてはうまくドラマ作りが出来てたと思います。


まあ「男」の映画だよね

というわけで、まあ面白いっちゃ面白いのですが、個人的な好みから言うと、全体的に画面が「男っぽすぎ」てお腹いっぱいになりました。

一応女性キャラとしては、ケン・マイルズの妻が登場しますが、別に独立したキャラがあるわけではなく、家計の心配をしながらも、破天荒な夫を愛し支える…という非常に古風な役ですし、シェルビーとマイルズが取っ組み合いの喧嘩をしている時は、「何もかもわかっている」というように、椅子を引っ張りだしてきて二人の様子を眺め、最後には冷蔵庫から冷えたコカ・コーラ瓶を持ってきて、二人に与える……。という、なんだろう、全身が痒くなるような「やんちゃな男達を支える母性願望」みたいのが透けて見えてうんざりしました。

男たちがやんちゃなのはいいんですけど、ずーっとこういうノリばっかりだと疲れますね。作中では、マイルズの家族が登場するのに対し、シェルビーの私生活が描かれていないので、「レースをやろう!」と何度もマイルズを誘うシェルビーを、男同士の絆を超えたエロティックな文脈で解釈することも可能かなと思いましたが、いかんせん、このお話は実在のモデルがいるので、無理やりクィアな解釈をするのにも限界があります。現実にはシェルビーは7回結婚しています。

「持病」の描写はよかった

ちょっと本題は外れますが、個人的によいなと思ったのが、シェルビーがレースから引退したきっかけの「心臓病」という設定。彼はおりにつけ、薬を飲み込むのですが、こういうシーンって映画でなかなか見かけないシーンだったりすると思うので、よかったです。結構持病を持ちながら活動してる人って多いと思うのに、そのシーンがエンターテイメントでは省かれていることがほとんどだと思うので。こういうのも「レプリゼンテーション」の一つだと思いました。

映画『フォードvsフェラーリ』評価

映画『フォードvsフェラリー』はロッテン・トマトで批評家スコア92%、オーディエンススコア98%と高評価です。まあアメリカ人はこういうお話、好きなんでしょうね〜!

アカデミー賞でも、作品賞、編集賞、録音賞、音響編集賞の4部門にノミネートされています。

  • 男同士の絆度 ★★★★★
  • カーレース度 ★★★★★
  • 人間ドラマ度 ★★★★☆

映画『フォードvsフェラーリ』概要

  • 監督:ジェームズ・マンゴールド
  • 脚本:ジェズ・バターワース、ジョン-ヘンリ・バターワース、ジェイソン・ケラー
  • 制作:20世紀フォックス
  • 上映時間:108分
  • 出演:マット・デイモン(『グッド・ウィル・ハンティング』)、クリスチャン・ベイル(『バイス』、『アメリカン・ハッスル』)、ジョーン・バーンサル(『ウォーキング・デッド』シリーズ)

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