映画『ラ・ラ・ランド(原題:LA LA LAND)』の感想です!
あらすじ
舞台は"夢を追い求める人"が集まる現代のロサンゼルス。
いつか自分のジャズの店を開くことを夢見るジャズ・ピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴスリング)と、女優を志しハリウッドでオーディションを受け続けるミア(エマ・ストーン)。初対面の印象は最悪だった二人だが、偶然の出会いが重なるうち、恋に落ちる。夢の実現のためにもがく二人だが、現実はなかなか厳しくて……?
感想(以下ネタバレあるので注意!)
面白かった!泣いた!笑った!楽しめた!
でも、この映画って、主食じゃないですね。ものすごく上質な「嗜好品」なんですよ。生きていくために必要な何か実質的な栄養を与えてくれるご飯というよりは、ものすごく美味しいお酒とかチョコレート……そういうもの。
でも、映画ってそもそも娯楽ですからね。
深く考えず観て、楽しい!って思えれば、それはそれでいいんだと思います。
そういう意味でわたしのなかでは『グレート・ギャツビー』とか『ムーラン・ルージュ』とかと同じ枠に入る感じですね。←決して悪口ではなくて、これらの映画は好きです!
ゴールデングローブ賞でめちゃくちゃ受賞してましたし、アカデミー賞でも、『タイタニック』以来最多の14部門でノミネートされています。それくらい、まあ今旬の映画人気ということですね。
LA愛がつまった映画
さて、ロサンゼルス在住でロサンゼルスが好きなわたしは、ロサンゼルスが舞台で、LA愛を感じる映画というのは特別に愛着を感じてしまいます!
『HAPPY』のミュージックビデオもそうでしたし、『マルホランド・ドライブ』、『(500)日のサマー』……そしてこの映画『ラ・ラ・ランド』もまた、ロサンゼルの魅力がつまった映画です。
冒頭の高速道路の渋滞シーンは実際に105と110が交差するところ(LAXからダウンタウンまで行く時に通るところですよ!)で撮影されたものだそうですし、ダウンタウンのミニミニ登山電車、グランドセントラルマーケット、ワッツタワー、グリフィス天文台、ハモサビーチのライトハウスカフェ、映画関係者が集まるパーティ、食べていくためにウェイトレスやクラブで望まないギグを行う俳優やミュージシャンの卵たち……。そしてプリウスw
撮影スポットが「あそこだ!」ってわかるだけではなく、各所に散りばめられた「ロスあるある」がたまらなくリアルで笑ってしまいますね。そのうち、ロサンゼルスで『ラ・ラ・ランド』ツアーってすぐ組まれるんではないでしょうか?
もちろん映画ですから、よい感じで脚色はされていますけど、ロサンゼルスが好きな人だったらこの映画を楽しめると思います(いくつかロングビーチでの撮影もあったみたいですね)。
ジャズ・ミュージシャンの生きる道
『ラ・ラ・ランド』はジャズを中心にしたミュージカルで音楽はよいです。ジョン・レジェンドとかがゲスト出演していることもあり、アメリカで人気のないジャンルとなりつつあるジャズは今後どうやったら生き残っていけるのか?みたいなことを考えさせられもする映画です。
脚本・監督を務めたデミアン・チャゼルは、もともと結構真剣にジャズ・ドラマーだそうで、そこらへん、彼の個人的な思いも込められてるのかもしれませんね。前作の『セッション(Whiplash)』もジャズがテーマになっていて、アカデミー賞3分門で受賞するなど評価が高い作品です。
わたしはセバスチャンが劇中でこだわっているようなフリー・ジャズも含めて、ジャズが好きなんですけど、映画のなかでキース(ジョン・レジェンド)がやろうとしているような、R&Bとかエレクトロとフュージョンして、サンプラーとかも多用した「商業的ジャズ」として描かれている、新しいジャズもかなり好きなので、劇中でその2つが対立的に描かれていたのは複雑な気持ちになりましたね。
でも、まあ音楽性がどうであれ、「ガンガン仕事してお金は稼げるけど、家族との時間とかは全然なし」というのと、「やりたいことをやるけど貧乏」というので、どっちの生き方をしたいのか?というのは永遠のテーマだと思います。
途中、ミアとセバスチャンがこれで喧嘩するんですが、わたしは業界こそ違いますが、ものすごく「わかる……っ!」と感じてしまいました。
ミュージカル映画的にどうよ?
あ、話ズレました。そうそう。そんな感じで『ラ・ラ・ランド』はミュージカル映画であり、ライアン・ゴスリングとエマ・ストーンが歌って踊っているのです!しかし……。ブロードウェイみたいな感じを期待してはいけません。エマ・ストーンも、ライアン・ゴスリングも、頑張ってはいますが、まあまあです(汗)
エマ・ストーンとか喉弱そうで、よい曲をスローに歌わなきゃいけないシーンとか、ちょっと聴いててドキドキハラハラします。でも、その完璧じゃない感じもまた素敵。エマ・ストーンは、顔からして完璧じゃないけど、ものすごくチャーミングなんですよね。これ、初めはエマはエマでもエマ・ワトソンを主演にして考えられていたみたいですが(そしてわたしはエマ・ワトソンが大好きですが!)、結論からいうと、これはエマ・ストーンで正解だったと思います。
曲的に気に入ったのは、冒頭の『Another Day of Sun』と、ミアがルームメイトとパーティに行くシーンの『Someone in the Crowd』ですね。
ちなみに、ミアのルームメイトの一人を演じている日系英国人のソノヤ・ミズノさんが、めちゃくちゃお美しいです♥上でいうと黄色いドレスの方です。
すごいクールな感じで好みっ。日本のELLEとかにも出てるみたいで、今後彼女には大注目ですねっ!
「夢を追うこと」の大切さ
さて、この映画が教えてくれるのは、「夢を追うこと」の大切さ。女優を夢見て、田舎からハリウッドに上京してきたけれど、エキストラばかりで鳴かず飛ばずの彼女。映画の最後では、二人とも夢を叶えています。
特に、エマの成功ストーリーはかなり鮮やかで、数年前までは、自分がバリスタの立場から「憧れ」ていた女優に、今度は自分がなっている……というところは、ものすごくほっこりする印象的なシーンです。
「好きな人といるために」という理由で、自分の夢を諦めて、生活の安定を優先させるというようなことは、決して幸せにはつながらないのです。誰かと幸せになるためには、結局自分自身が満ち足りていないといけないわけですからね。でも、そうやって、夢を追い、自らの幸せを追い求めていくことによって、大切な人との別れとも必然になるんですよね。
じゃあ、どっちにしろ、好きな人とは別れなきゃいけないんじゃん!
どうすりゃいんだよ……となりますが、そんななかで、どこにハッピーエンドを求めるのか……という問題になります。
夢のような回想と、一見現実的な結末。でも、やっぱり、「夢みたい」な映画
この映画のクライマックスは、なんといっても最後の回想シーンでしょう。もうね。ここは、涙腺壊れたのかな?っていうくらい、涙が流れっぱなしでした。「あの時、こうできたらよかったのに」っていう、都合のよい想像だけで出来た「夢のような完璧なストーリー」。←ここが『マルホランド・ドライブ』って言われてるところですね。でももっとわかりやすく、単純に泣かせにきてます。
ああ、この二人には何があったんだろう?そして、この二人はなぜ、一緒にいることができなかったんだろう?
でも大人になってしまうと、「現実はこういうもの」ってわかってしまっていて、だからこそ、余計にリアルに感じられて。刺さるんですよ。はあ。この映画について「ミアとセバスチャンがくっついてほしかった」と言ってる人が結構いて、その気持ちはすごくわかります。もしそうだったら本当に夢のようにパーフェクト。でも、わたしは、この映画はこの終わり方をすることで、恋愛的には胸がチクッと痛むけれどもリアルな展開を取ったんだと思います。
自分の夢や幸福を投げ打って、後先考えずに「一緒にいる」ことだけを優先するカップルが真の意味で幸せになれるとは思いませんからね。
恋愛的には少しシニカルで現実的なようでいて、実はもっと大きな「夢を叶える」という点では、そこまで現実的でもない。ミアとセバスチャンはなんだかんだいって自分の夢を叶えている。そういう意味ではやっぱり「夢みたい」だし、ものすごくハリウッド映画的だし、夢のようなハッピーエンドなんです。
わたし的には、この結末はとても現代的で、納得いくものでした。
評価
- ラブストーリー度 ★★★★☆
- I ♥ LA度 ★★★★★
- 思わず歌って踊っちゃう度 ★★★★☆