『アメリカン・フィクション』観てきた!超絶面白かったです。今のところ2024年の一番。
『アメリカン・フィクション』のあらすじ
黒人作家として型にハメられた描写でお金稼ぎをする潮流にウンザリしている主人公の作家「モンク」はロサンゼルスの大学で強弁を取っていた。もう何年も本を書いていない彼は、授業でNワードを使うことで生徒からクレームが続き、休職を余儀なくされる。
家族のいるボストンで行われるブック・フェスティバルに参加すると、今売れている黒人作家の作品は、白人メインストリームで喜ばれるステロティピカルなストーリーばかりのように思える。
実家の向かいに住む女性と出会い、恋に落ちるなど良いこともあるが、母親のアルツハイマー病を発症し、姉が急死するなど不幸に襲われるモンク。生活に困った彼はジョークのつもりで、自分でも思い切りベタベタな「リアルな黒人ブンガク」を書いてみることに。エージェントはいい顔をしないが、試しに送ってみると出版社からは過去最高の買値がつき、なんと映画化の計画が持ち上がり、自らが審査員を務める文学賞の候補にも上がってくる。
風刺のつもりでやり始めたことが、意図せぬやり方で広まってしまうことに戸惑うモンクは決断を迫られる。
『アメリカン・フィクション』の感想
めためた面白かった!好きです。
初めは『The Photograph 』的なゲトシーじゃない黒人ラブストーリーかなと思ったのだけど、そんな素直じゃなかった。もっと政治的でメタ創作要素もあり、最後に向けて「そうきたか」という方面からの面白みをどんどん追加してくれるサービス精神旺盛な作品。
この作品は「マイノリティ表象」について考えている人には特に興味深い。純文学の作家、医師、弁護士など、インテリ黒人のキャラクターたちの恋愛や、家族関係、カムアウト、など自然に描かれているのだが、そこに新鮮さを覚えてしまうこと自体が、劇中で主人公モンクが感じているフラストレーションを上書きしている。モンクは決して「いいヤツ」ではなくて、下手したらとっつきにくいお高く止まったキャラなのだが、そんな彼の苛立ちはどうしようもなく「リアル」なのだ。ゲイやアジア系もエンタメで取り上げられ方が一面的っていうのあるけど、黒人もずーっとそういうのあったんだろうなと改めて痛感した。こういうのを見せられて初めて「これまでの作品」が以下に型にハマっていたかというのが浮き彫りになるんだよね。
脚本が評価されているのは、この複雑なメタ構造かなと思うけれども、そういうのすべてとっぱらっても、普通にエンタメとしても面白いのがすごいところ。
地元の映画館で観たのだけれど、公開から時間が経っていたためか観客がわたしともう一人しかおらず。お互い大笑いしていたのだけど、証明がついた後ちらっとみたら、その子は「文学賞でF*CKを激推ししてた審査員」みたいな感じの子で、なんならわたしもそっち側な気はしたしやや微妙な気分になったのも事実でした。
この作品は、パーシヴァル・エヴェレットの2001年の小説『Erasure』が原作なのですが、結構自伝的な作品のようです。そちらも読みたくなりました。
黒人ゲイ男性のカムアウト
またこの作品はクィア映画ではないが、現代映画によくあるようにごくごく自然にゲイのキャラクターが出てくる。
主人公モンクの弟はゲイなのだが、なくなった父親に噛む熱男できなかったことを回想し「父親は僕がゲイであるということを知らないでなくなった」という。「いや、薄々わかっていただろう」モンクは答えるが、そこには違いがあるという。
この会話を元に、モンクは周りに隠している「もう一つのアイデンティティ」が周りとの関係性にどう影響しているかを考え始める……というシーンなのですが、クローゼットな期間が長い人には共感できるシーンかと。
『アメリカン・フィクション』の評価
『アメリカン・フィクション』は、アカデミー脚色賞を受賞しています。
ロッテントマトのトマトメータ93%、オーディエンススコアは96%と、批評家からも一般聴衆からも評価されています。
- 風刺度★★★★★
- 「黒人のリアル」度★★★☆☆
- 考えさせられる度 ★★★★★
アメリカン・フィクションを観る方法
『アメリカン・フィクション』は、日本では劇場公開されませんでしたが、Amazon Prime Videoで観ることができます。