かつて一世を風靡したが、差別的な経営方針が明らかになり全米一嫌われるブランドにまで堕ちたアバクロの栄枯盛衰を追ったネトフリのドキュメンタリー『ホワイト・ホット』を観た。
個人的にはアバクロに限らずロゴがどーん!って感じのブランドは嫌いなのと、アメリカに来た時既にアバクロの差別的な側面がコールアウトされた後だったので、日本とかアジア系に大人気!という認識はありつつも着る気になれなかったブランド。でも、香水臭い店内やクラブ並みに大音量で音楽がかかる薄暗い店内などは記憶にある。
このドキュメンタリーでは、かつてのアバクロの従業員や、アバクロ裁判の原告となった人々が改めて当時を振り返り、何が起こっていたのかを語る。
内容は既に裁判やさまざまな記事で告発されている通りで、
- アジア系やラテン系をコケにする、差別的なTシャツデザイン
- 従業員は外見だけで選ばれる
- 人種的マイノリティはシフトを入れてもらえなかった
- CEOが「我々は排他的なブランドであり、イケてる子しか相手にしない」という発言
などなど。
興味深いのは、アバクロのCEOであったマイク・ジェフリーズとそのビジュアルに多大な貢献をした有名写真家フォトグラファーのブルース・ウェーバーがゲイだということ。
ウェーバーはアバクロ以外にもカルバン・クラインやラルフ・ローレンなどの広告写真で知られ、白黒の写真で男性をセクシーに撮る。
アバクロの広告や店内の写真、袋もほぼ半裸の男性モデルばかりだった。一応男女の絡みもあるのだが、フォーカスは男性のセクシーなディテールにあたっている。見る人が見ればめちゃくちゃゲイ!とピンとくるだろう。
実際にはアバクロが象徴する文化はゲイフレンドリーなものではなかった。ゲイに限らず、少しでもメインストリームの「イケてる像」からズレる子たちをいじめ、排除し笑いものにするようなマッチョでジョックな文化だったのに、それを促進するために使われたのはゲイエロティックさの漂うビジュアルだったというのは皮肉だ。ウェーバーは2017年に男性モデルから撮影時のセクシュアルハラスメントの裁判を起こされている。
このようにいろんな方向からヤバかったアバクロのイメージだが、既に変わりつつある。CEOが変わり、最近のアバクロは多様性と包摂のメッセージを打ち出すことでZ世代に人気となっているようだ。アバクロと聞いて、眉を顰めるのも、今後はある世代以上に限られてくるのかもしれない。
個人的にはヴィクトリアズ・シークレットやルルレモン、アメリカンアパレルなどのドキュメンタリーも観てみたい。