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フロリダ州、授業でディズニー映画を観せた教師を「Don't Say Gay」違反で調査

ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界 (吹替版)

フロリダ州ヘルナンド群で5年生を受け持つ教師が、ディズニー映画『ストレンジ ワールド/もうひとつの世界 』を観せたら、映画内にゲイのキャラクターが登場するため、いわゆる「Don’t Say Gay」法に反するとして州の教育省から捜査の対象になっています。教師がTikTokI am the teacher. Here is the truth. #indoctrination #disneymovie #di... | TikTokで告発しました。

授業でディズニー映画 -- 何が問題?

ジェナ・バービーさんは、標準化テストの後、教室に半数程度しか生徒がいなかったため、保護者全員から、PG指定の映画を見ることを許可するサインを得たうえでディズニー映画『ストレンジ ワールド/もうひとつの世界 』を上映したそうです。この映画は家族向けのアニメ映画ですが、主人公の息子が他の男性キャラクターに対して恋愛感情を持つことが表現されており、主人公の家族もそれを受け入れて応援する、というシーンが含まれています。このシーンが問題だったのです。

フロリダ州は12年生までの性自認と性的指向の教育を禁止する。いわゆる「Don't Say Gay」法を可決しています。フロリダ州知事デサンティスたちはこの法律を「親の権利を守るため」だとし、性的指向や性自認に関する指導を幼稚園から3年生まで、あるいはそれ以外の学年では年齢にそぐわないと判断される方法で禁止していましたが、その後、12年生=高校まで制限を拡大しました。この方針に違反した教師は、停職や教員免許の剥奪を受ける可能性があります。ヘルナンド郡学校区の理事でもあった保護者の一人が、バービーさんの上映した映画にゲイの登場人物がいることを問題視し、校長に訴えを出し、今回の調査につながったとのこと。

先日、友人の6歳の子どもとクラスメイトの会話を紹介しました「うちには二人のママがいる」6歳のクラスメイトの反応は? - #あたシモが、ゲイフレンドリーな地域でも、まだまだ家庭内で同性カップルの存在やSOGIについての教育を受けていることはまれです。学校を含めた「家庭外」、主に学校で「世の中には同性同士でカップルになる人もいる」「生まれたときに割当られたジェンダーとは別のアイデンティティを持つ場合がある」などフラットな事実を教えてもらったり、幸せに暮している当事者の表象が含まれた作品にふれることは、子どもにとっても必要不可欠なことだと思います。そして、まったくそれらの教育を受けずに育った子どもたちが、セクシュアリティやジェンダーについてどのような考えを持って育つのでしょうか?考えるだけで恐ろしいです。

ディズニー対フロリダ

ディズニーは昨年、このフロリダの「Don't Say Gay」法律に反対を表明したことで、デサンティスとの対立が激化。デサンティスとフロリダ州共和党は、ディズニーテーマパークとその周辺の土地の支配を標的に、ディズニーへの報復を行い、現在はディズニーがそれに対抗して訴訟中です。今回の教師の処分にもまたディズニー映画が絡んでいたということで、ディズニーとフロリダの対立構造が改めて印象に残ったニュースでした。

ゲイだけじゃない、フロリダ州が教育で禁止したもの

フロリダのヤバい法律はこれだけではありません。2022年には、通称「Stop WOKE Act」という法律(The Individual Freedom Act)があり、これは、クリティカル・レース・セオリー(CRT)に対抗するようなもので、学校や職場のトレーニングで、「人種的に差別的、性差別的、抑圧的である(意識的または無意識的であっても)」と教えることを禁止しています。例えば構造的差別の話をするときに、「白人特権」とか「男性特権」という話が出てきますが、そういう話はNGになります。また、同じ人種、性別、または国籍のメンバーが過去に行った行動について「個人的な責任を負い、罪悪感、苦悩、または他の形の心理的苦痛」を感じなければならないと教えることを禁止しています。これは、例えば過去の奴隷制や植民地支配に基づいて現在の自分たちに罪悪感をもたせるようなことがNGというものです。さらに、フロリダ州の公立高校の生徒は、アフリカン・アメリカン・スタディーズのAPコース(※高校在学中に受講できる大学レベルの上級クラスのことで、取得すると単位がトランスファーできる)に参加することが禁止されました。

このようにフロリダ州は教育に大きな介入をすることで、セクシュアリティの多様性について教えることを禁止するだけでなく、人種差別の歴史や構造的差別について考えるときに不可欠な概念をも取り扱うことを規制してます。このような政策は差別的のみならず、表現の自由に反すると批判されています。

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