#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

映画『ノマドライフ』にも登場したキャンピングカー生活者のメッカ「クウォーツサイト」に行ってみた

皆さん、アリゾナ州クウォーツサイトを知っていますか?クウォーツサイトは、カリフォルニアとの州境近くにある小さな町です。人口は4000人ほどしかいないと言われますが、RV(キャンピングカー)で暮らす人々たちのメッカのようなところがあり、以前から興味があったので今回立ち寄ってみることにしました。

Mountain Quail Cafe

Mountain Quail Cafe

ロサンゼルスとフェニックスをつなぐフリーウェイ10番から降りてすぐのところには、マクドナルドとかバーガーキングなどのチェーン店もありますが、ローカル経営っぽいカフェMountain Quail Cafeで食べることにしました。

メニューは伝統的なアメリカン・ダイナー。オムレツやバーガーなどが食べられます。わたしは「アリゾナ」オムレツ、彼女は「デンバー」オムレツを食べてみました。コーヒーはおかわり自由!

いかにも「アメリカ」なオムレツ

店内にはローカルアーティストの作品やお土産などを扱ったギフトショップもありました。

ギフトショップ。なにげにMake Quartz Great Againとか書いてある…

RVの模型など、なかなか可愛い。お土産は現金でしか買えません。

Hi Jolly記念碑(ハイ・ジョリーのお墓)

ハイ・ジョリーのお墓

クウォーツサイトの歴史的な場所がここ、ハイ・ジョリーのお墓です。

ハイ・ジョリーって誰よ?

ハイ・ジョリーは、かつてまだ米国西部が「未開の砂漠地帯」だった19世紀に「ラクダなら砂漠を旅できるだろう」と考えた米軍に雇われたシリア生まれのギリシャ人です。本来はḤājj ʿAlī;(ハジ・アリー)という名前だったようですが、米国に来てからは発音がアメリカナイズされてしまい「ハイ・ジョリー」として知られるようになりました。ハジアリー→ハイジョリーってことか……。ラクダは確かに砂漠には強かったのですが、色々不具合があったようで(ざっくり)結局ラクダを雇うという計画は頓挫し、ジョリーは米軍を離れることとなったのですが、アリゾナで1902年に亡くなった後はそこに記念碑が立てられました。

そして、ラクダは現代に至るまでクウォーツサイトのシンボルとなったのです。

また、ハイ・ジョリーのモニュメントの周りは市営の墓地となっており、一角650ドルから買えるようです(参考)。カリフォルニアでは墓地もめちゃくちゃ高いので、こういう歴史的な土地で人々が常に訪れてくれるような場所にお墓買えるなら安いかも?とか考えてしまいました。火葬にも対応可能っぽい。

ジョアンのガム博物館

クウォーツサイトで訪れたかったスポットが「ガムの包み紙を集めた」ジョアンさんの博物館。個人の収集物を集めて公開してるだけっぽいけど、こういうの面白B級スポット大好物です。ただ、こちらは、アポイントメントオンリーなのですが、わたしが訪れた日は残念ながらジョアンさんは忙しかったようで見ることはできませんでした。

Joanne's Gum Gallery (Quartzsite) - All You Need to Know BEFORE You Go

↑トリップアドバイザーで雰囲気見ることができます。また次の機会に訪れてみようと思います。

キャンピングカーの聖地

さて、クウォーツサイトでは、世界一の規模と呼ばれるRVショーなどが行われ、冬には温暖な気候を求めて多くのキャンピングカーや車上生活者がが集まります。1月毎年行われるRubber Tramp Rendezvous (RTR)というイベントは「引退した人々のバーニングマン」とまで呼ばれるようになりました。

2022年のRubber Tramp Rendezvous (RTR)の様子。

無数のRVが広大な砂漠に駐車され、主催者のボブ・ウェルズさんが車上生活や、ノマドの哲学について講演するのを多くの人々が椅子に座って聞いています。「必要なもの」や「提供できるもの」を人々が持ち寄って助け合う様子が見て取れます。入場も参加も無料なこの場所では、「通貨」というわたしたちの生活に深く入り込んだ存在を一瞬忘れることができそうです。

さて、ここに登場するボブ・ウェルズさんとスザンヌさんを「どこかで見たことがある」という人もいるかもしれません。彼らは、RVで生活するノマドたちの生活やをブログやYouTubeで広めた中心的な人物であり、ここらへんは映画『ノマドランド』にも登場しています。

基本的にBLM(土地管理局の土地)を始めとする砂漠の土地に14日間は無料で滞在できるクウォーツサイトですが、ここでのキャンプはオフグリッドで水も電源もトイレもなく、レンジャーや管理人もおらず、基本的に全て自給自足しなければなりません(ゴミ処理や電気つきの「長期滞在」向けキャンプも存在し、お店に行けば一応飲料水や食料を買うことは可能ですが、いかんせんクウォーツサイトは小さな町なので、繁忙期は食料品の数量制限などもなされるらしく、RVキャンパーたちは十分な準備をして訪れるようにというアドバイスがされています)。多くの人々は発電機や大量の水を持参し、大自然の砂漠の中で自由に滞在します。

ただ、映画やYouTubeでRVerたちの暮らしを追っていてもわかるのですが、キャンピングカーで暮らす人々の理由は様々。アメリカ中の国立公園を旅してる!とか自由と自給自足生活を求めて!みたいに自らの意思でバン生活を選んでいる人もいれば、「経済的な理由で住宅に住むことができない」人々もいます。ここらへんは、ここ10年ほど続いている「タイニーハウス」や「ミニマリスト」な生き方とも共通するところ。映画『ノマドライフ』の主人公ファーンも、ノマドライフが始まったきっかけは60代にして失業したことでした。『ノマドライフ』はノンフィクションの書籍が原作ですが、そのタイトルは『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』こちらのタイトルだと、カタカナの「ノマド」という言葉がややもすればまとってしまうゆるふわした響きは薄まり、より社会派な印象が強まります。

ノマドランドに登場するリアルノマドのひとりであるリンダ・メイさんは、アカデミー賞にも出席しましたが、この映画の出演料のおかげで人生が変わったといいます。

「私はこの6月で71歳になり、移動を強制されない、落ち着く場所が欲しかった。そしてそれが手に入った。その安全を手に入れた。家族のための場所。それは本当に大きなこと」

https://www.vulture.com/2021/02/nomadlands-linda-may-on-finally-settling-down.html

このセリフを聞いてつくづく、この映画自体はドキュメンタリーをもとにした「創作映画」という形になったけれど、しっかりリアルなノマドたちを雇い、彼らの出演料という形でリターンがいく形になっていて、よかったなと思えました。その形を作った制作陣に拍手。また、家や仕事に縛られている定住民にとっては、魅力的に聞こえる「ノマドライフ」だけれど、ノマド生活を「選べる」というのもひとつの特権なのであり、無責任にグラマラスなものと捉えてはいけないなとも痛感。

わたしは今でこそ「定住」生活をしていますが、異国で移民として、有色人種として、ゲイとして、女性として、英語もままならないなか、不安定な立場で暮らしています。果たして何歳まで働き続けることができるのか、引退後十分な資金があるか、高騰し続ける家賃や生活費を払い続けることができるのか……そんな危機感と常に隣合わせに生きています。今、わたしがノマド生活や「タイニーハウス」「車で暮らすこと」に強い興味を持っているのは、あくまでロードトリップ先で節約するためのライフハックであり、小さくてかわいいタイニーハウスに魅力を感じるからで、それは確かに「特権」的な楽しみ方ではありますが、同時に、将来大幅にダウンサイズして節制して暮らさなければいけないかもしれないシナリオへ自分自身を備えておくという意味合いも少なからず持っているのです。

以前、タイニーハウス(とても小さな家。多くの場合、車で牽引することが可能)のドキュメンタリーを観ていたときに、日本人女性二人のカップルが登場したのですが、その時も「(女性二人で暮らしている)自分も、将来こんな風な暮らしを選ぶかもしれない」と、半ば自分ごととして彼らの暮らしを見ていた記憶があります。

バン生活についてもっと詳しく知りたい人は

そもそもはプリウスで生活していたスアンヌだが、2020年に「車内で立って料理ができる」バンを購入したとのこと。おめでとう!プリウスじゃ、車内で立てないもんね……!

*ホテルプリウス(英語)

こちらは大学を卒業した後プリウスで旅をしたクリスのブログ。プリウスで旅をするためのコツがいろいろと読める。

ノマドランド (字幕版)

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