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アメリカで働くレズの徒然

歴史に残るゲイのラブコメ映画『BROS』感想!笑って泣いた可愛すぎる作品

映画BROSのポスター

「ゲイのラブコメ映画」『BROS』を公開初日に観てきました。LGBTQ映画祭とかじゃなくてメインストリームの映画館でこうやってゲイのラブコメが堂々と広告されて出てくるのめちゃ意味あると思うし応援したかったんです。

あらすじ

ボビーはNYに暮らす40歳のゲイ。

ゲイの歴史やゲイ・アイコンについて本を書いたり、ポッドキャストを作り、LGBTQコミュニティで賞をとったり、世界初の国立LGBTQ+歴史博物館のキュレーターに就任するなど絶好調。※本棚には村上春樹の本並べられてるの確認しましたw

しかし、恋人はおらず、「これまで一度も誰かと真剣につきあったことはないけど満足してる」と言い張り、Grindrで夜な夜な男たちとワンナイト・スタンドを繰り返している。

そんなある日、ボビーは友人のヘンリーと一緒に、ゲイクラブに行き、ヘンリーが「イケメンだけど退屈」と言うアーロン・シェパードと出会う。ボビーのポッドキャストを聴いていたアーロンはボビーに話しかけてくるが、イケメンのアーロンは、「野球選手のカップルとの3Pに誘われてるんだ」などと奔放。ボビーはキスしようとするが、アーロンにかわされてしまう。アーロンはボビーに興味がない様子。数日後、行き違いの末、二人はようやくデートに出かける。

ムキムキマッチョのイケメンで、好きな音楽はカントリー音楽とノンケっぽいアーロンと、マラリヤ・キャリーが好きで、立ち居振る舞いもゲイっぽく、気難しくてひねくれて疑いぶかく、クィアの可視化について語りだすと止まらないゲイゲイしいボビー。正反対なのに、なぜか惹かれ合い、セックスもし、徐々に距離を縮めるが、なかなか「つきあう」にはいたらない。

弁護士でありながら、自分の仕事が嫌いなアーロンは、子供の頃チョコレート職人になりたかったことをボビーに打ち明ける。ボビーは自分の夢を追うことをすすめるが、アーロンはその気になれない。

LGBTQ+歴史博物館への寄付を募るために有名人や大富豪と会いに行くボビー。はじめはうまくいかないが、「自分の話ばかりしないで、相手の話を聞くんだ」というアーロンのアドバイスに従うと大富豪は話にのってくる、アーロンが代わりに寄付を依頼すると、500万ドルの寄付の約束を取り付けることができた。

二人の距離はより縮まり、ホリデーシーズンにNYを訪ねてきたアーロンの家族とボビーは会うことに。アーロンは、小さな町出身の家族を気遣い、「少しゲイゲイしさを抑えて」とボビーに依頼するが、ボビーはLGBTQの歴史や子どもたちにLGBTQについて教えることの重要性について主張を抑えることができない。家族に対しても自分についても失礼な発言をされたアーロンは怒り、ゲイクラブへ向かい、昔のゲイ友達といちゃいちゃを始めたところを探しにきたボビーに見られてしまう。

二人の間に亀裂が入ったまま、LGBTQ+歴史博物館オープンの日が近づいてくる。果たしてLGBTQ+歴史博物館は無事にオープンできるのか?そして、二人の恋愛の行方は?

感想

面白かったです!ちょっと予想と違う展開もあったのだけど、観れてよかったし、多くの人に見てほしい作品です。

はぁ、白人シスゲイの話ですかぁって思うかもだけど、BROSはかなり自らの置かれた立ち位置を意識している。「白人シスゲイでーす」みたいなネタを自虐で入れたり、これまでゲイの物語が、いかに「悲劇」にかたよっていたか、かつそれらの多くがストレートの役者によって語られてきたことに繰り返し言及したり。人種の点でもSOGIの点でも様々な表象入れようという努力はすごく感じられた。映画祭系のインディー作品だと、ホント当然のようにシスゲイの世界のみしか興味なさそうな作品も多いから。そういうのと比べると、BROSは、メインストリームで上映される初のゲイのラブコメものとして、割とLGBTの歴史を自ら背負ってるというか、そこらへんの自意識が、最近出てきてるゲイとかエースとかが当たり前のように存在する軽やかなクィアな10代を描くような最近のTV番組とかとはちょい違うのを感じました。

自らも40代のゲイである主演のビリー・アイクナーの意識がかなりはいっているんだろうなと思うけど、LGBTQ+歴史博物館っていう設定もあれだし、ストーンウォールの話とか、プライドシーンとかも、しっかり含まれてて、プライドイベントとかゲイバーとかのコミュニティに励まされ、救われてきた世代をターゲットにしてるのかなと思います。世代だけじゃなくて地域的な要因もあるだろうけど。わたしは、レインボーにガチガチ励まされてきたタイプなので、最後LGBTQ+歴史博物館のオープンニングセレモニーでのボビーの演説で予想外に号泣してしまいました。その後更にラブコメ的なクライマックスも来てまじで息ができないくらい泣いちゃった。。。わたしはまだまだ、こういうテーマに夢中になってしまって、作品のよしあしを冷静に判断することがとても難しい。あ、もちろん、クィアがノーマライズされてきた以降の社会で育ってきた人も楽しめると思うので観てみてね!

いやーでもホント、この映画予告編観た時もびっくりしたし、ポスター観た時もびっくりしたし、やっぱり嬉しいよね。クィアな物語が脇役じゃなくてばーん!ってメインに置かれてる作品があると本当に嬉しい。(似た感情は、『クレイジー・リッチ!(Crazy Rich Asian)』の時も思った。わお!アジア人ばっかりのハリウッド映画が出てきた!ってね)

『BROS』でちょっと物足りないなーと思った点はね……まず、はじめ、ボビーが嫌な奴すぎて感情移入難しかった。そして、それは意外でもあった、もっと「愛されるキャラ」として造形するかと思ったから。ただ物語が進むにつれ、ボビーがこういうキャラであることが大切なんだなと思えた。あとこの嫌味でひねくれた感じがリアルってのもあるかもね!

あと、気になったのは、リアルでもゲイであるルーク・マクファーレン演じるアーロンがとにかく可愛すぎ&性格よすぎる点。ボビーに対して頑張るアーロン見てて、いやいやこんないいヤツいる?現実的じゃなくない?って都合よく感じてしまったこと。現実にはアーロンみたいなキャラいたら、モテモテだしもっと嫌なヤツになってそう……ボビーはLGBTQコミュニティの中で成功していて、頭もよくて文化的で、マッチョだけど実は頭良くてクリエイティブでもありたいアーロンはそんな側面に惹かれたんだろうけど、なんかそこのケミストリーが弱く感じちゃった。

あとは、この映画、ゲイのセックスの描き方について一部批判が出てるらしい。わたしはここは当事者として語れる立場にはないけど、やりすぎじゃない程度にリアルだと思った。マスキュリテイへのオブセッションをしっかり自覚してるところとかも、よかったし笑えた。アプリでワンナイトを繰り返したり、3Pなども含むカジュアルセックスや、継続的なポリアモラスなカップルのあり方も描きつつも、結局主役カップルがモノガマスな関係に収束していこうとするところは、メインストリームオーディエンスに対しての「安心感」とのバランスだったのかなとも思う。

わたしは楽しくほっこり観てしまったけど、ここら辺はゲイ男性当事者の中でリアルと感じるかとか、ステロタイプに描いて欲しくないとか、「結局そうなるのかよ」と不満を感じるかどうかとか、いろいろな考えがありそう。ゲイ男性の方で観た方いたら感想教えてください。日本でも早く公開されますように!

評価

ロッテントマトのトマトメーターは91%、オーディエンススコアも92%と高評価です!

  • ほっこり度 ★★★★★
  • レインボー度 ★★★★★
  • 笑える度 ★★★☆☆