#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

実写版『リトル・マーメイド』観てきたよ

The Little Mermaid [12 inch Analog]

こんにちは、イチカワユウです!実写版『リトルマーメイド』全米公開日にIMAXで観てきましたよー。

ボケてて予約したのと別な劇場に行ってしまい、アプリでチケット見せたら「ここじゃありません」と言われて大慌てで別な映画館に車飛ばして、汗だくでダッシュしてIMAXのカウントダウン中にギリギリ着席して観ることできました。ふぅ。ちなみに劇場はほぼ満席。

実写版『リトル・マーメイド』感想

感想!面白かったけど、やっぱり元のストーリーが古くてそれにまつわる限界があるよね。メインとなる恋愛ストーリーに色々ツッコミどころがありすぎる。

なんだろ。アリエルとエリックの恋愛って、『アナ雪』でいうならアナとハンス的な薄っぺらさでは?お互いのことを何も知らんのでは?3日でキスまで行かせてそれは真実の愛なのか?とか。色々考えちゃって

それでもこの作品が皆の心をつかむのは、違う世界への憧れや、「属性によって決めつけちゃいかんよね」みたいな話とか、「親からの自立」とかのサブテーマが刺さってるんだろうな。

特にクィア(に限らずさまざまな少数派で、多数派から誤解されがちな存在)な目線から見ると、色々共感ポイントがあるのがアリエルの世界。

多数派とは違う自分のその世界に焦がれ、憧れる気持ち。

多大な犠牲を払ってでも「その一部」になりたいと願う気持ちと、皆の前で正体が暴かれ、誤解されて、拒絶される絶望。そして改めて「完全な変身」を遂げた後でめでたく結ばれる…とかめちゃくちゃ自分ごととして読んじゃうクィア多い気がした。

パートオブユアワールドは、自分の受け入れてくれる世界を求めるクィアの歌、みたいな考察をしている人いたけど、わたしはこの歌、正直「自分達の世界が欲しい」というより「メインストリームに受け入れられたい」と願っているから、ま、確かにクィアがめちゃくちゃ共感できる曲ではあるけど、微妙に方向性が違うよなぁとか思ったり。

ジェンダーとかセクシュアリティのことだけじゃなくて「アメリカに憧れてた」とか、社会階層の話でもあり得るし、そんな風に他の世界に焦がれた経験がある人にとってはたまらない曲だよなぁ。って……あまり政治的ないみづけはしたくないが……。Part of your world何度聴いても、感情をかき乱されて涙が出てしまうのだが、それは、こういう別な世界への渇望経験があるかによって変わってくるのかなとか思った。

「ありのままの自分を受け入れる」っていうけど、アリエルは生まれた人魚としての姿を捨て「人間になる」ことが自分にとっての自己実現だったんだよね。それを家族の反対を乗り越えて諦めずに手に入れてるのはやっぱり強いし、祝福に値するよなぁって。けど、そのトリガーはやっぱり恋愛であることが必要だったのかなぁ?と色々考えちゃいました。

アースラのクィアネス

リトル・マーメイドのヴィランであるアースラ!メリッサ・マッカーシーがよい感じで演じてました!

実は今回、アースラに関しても色々論争呼んでました。普通にアースラを観てるだけでは特に「クィア」と感じる人は少ないかもですが、彼女は昔からクィアな存在であるとされてきました。彼女自身のセクシュリティがどうこうではなくて存在が、ですね。そもそもアースラのキャラクターって、単にヴィランなのではなくヘテロ規範を前提とした家父長制に当てはまらない反逆者であり、そこがクィアという解釈が昔からなされてました(ヴィランとは違いますが、アナ雪のエルサなどと同様です)。そーゆーのもあってか昔から妙にゲイコミュニティ内で人気が高い気がしてます(あくまで個人的な感覚です)。

さらに今回アースラを演じたコメディアンのメリッサ・マッカーシーはかつてニューヨークでドラァグクイーンのパフォーマンスをしていたことがあり、今回のアースラの演技についてもドラァグクイーンからインスパイアして行ったとハッキリ言っています。

そこまでドラァグが好きでドラァグパフォーマンスからインスピレーションを受けているならクィア当事者をキャスト、またはメイクアップアーティストを起用するべきだったのでは?という批判がなされて、それにアースラのメイクを手がけたアーティストが強く反論するなどの経緯がありました。

確かに最近ではインスパイアを受けた文化の担い手や当事者をきちんと起用して金銭的にも還元するというのはほぼ当然の流れになってきてる気がするので、今後ドラァグに関してもそうなっていってほしいです。今回のウルスラメイクやパフォーマンスがそうと言っているわけではないのですが、一般論として、少数派の文化を消費して真似して、インスパイアされるだけして、実際作って売って賞賛や報酬を得るのはマジョリティのアーティスト…っていう構図はそろそろ変えましょ!

オリジナル曲

ミュージカルなので音楽の話も!実写版『リトル・マーメイド』は実写版アラジンのようにオリジナル曲に加えて何曲か新曲が入ってました。

  • For the First Time
  • Wild Uncharted Waters
  • The Scuttlebutt

わたしが一番気に入ったのはThe Scuttlebuttです!いかにもリン=マニュエル・ミランダっぽい楽曲にオクアフィーナのラップが最高!

あとはお馴染みの曲もバッチリ入ってます!オクアフィーナって声だけで笑い取れるからすごいです。あとセバスチャンが歌ってる曲大抵好き!

「黒人アリエル」について

さてさて、この実写版リトル・マーメイド。主役のアリエル役に黒人シンガーHalle Baileyを起用したことでキャスト公開時から話題を呼んでいました。

ここに触れるか悩みましたが、そこに関してはHalleのキャスティング、完璧じゃない?って思いました。

歌声はもちろんなんですけど、好奇心や愛くるしさ、また声を使わずにエリック王子を魅了する演技も説得力ありました!あとは、こういう目線でどうこういうのは野暮ですが、やっぱりこれまで圧倒的に白人に偏っていたなかで、アリエルに黒人を配役したことで世界中でこれまでポジティブな表象を充分に受けることができなかった子たちへのエンパワメントにすごくなったと思います。「人種関係なくめちゃよかったです」って書きたかったのですが、2023年の今も、アリエルにHalleが配役されたことで持ってしまう、持たされてしまっている意義というのは少なかなずあると思うので、そこは無視したくないなと。

そんな感じです!

よかったら皆さんの感想も教えてください!コメントしてくれたら読みに行きまっす!