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アメリカで働くレズの徒然

自閉症スペクトラムの恋愛リアリティ番組Netflix『ラブ・オン・スペクトラム ~自閉症だけど恋したい!~』

『ラブ・オン・スペクトラム』は、オーストラリアから始まりUSでも始まった自閉症スペクトラムの人々の出会い系リアリティ番組だ。

登場人物は年齢も性別も様々で、非常に個性的。一口に「自閉症スペクトラム」といっても、その症状や個性の現れ方は非常に多彩なことがわかる。また、登場人物の中には同性に惹かれる者もおり、クィアであることが非常に自然に扱われている。

番組の中では自閉症スペクトラム当事者のためのデーティングコーチが登場し、コミュニケーションやデートの場での適切なふるまいについてレクチャーを行う。こういう手取り足取りな「デート指南」というのは、結構必要な人多いんじゃないかなと思う。先日日本の『ザ・ノンフィクション』の婚活の回で、なかなか結婚できない男性二人がフィーチャーされていた。外見も悪くなく、経済的にも安定していそうなのに、コミュニケーションが苦手のようだった。スペクトラムと診断されているかどうかはさておき、このようなワークショップ形式の「練習」をすることで、コミュニケーション能力の向上に役立つかもしれない。

またこの番組で面白いのは、当事者同士のデートの様子やマッチングの結末が興味深いだけではなく、自閉症スペクトラムと共に生きる当事者の家族や友人との関わりが描かれている点。もちろん「自閉症スペクトラムだからこう」というようなことは特になく、家で過ごすのが好きな人もいれば、恋の話をするような友人がいる人もいる。家族のあたたかな視点や、幼いころに自閉症スペクトラムと診断されて受け入れられるまでの経緯を話す家族は時に涙ぐみ、視聴者をもらい泣きさせる。

またジェンダーやセクシュアリティの側面からいくと、興味深いのは、登場人物の多くが、これまでに実際の恋愛の経験がないにも関わらず、非常に典型的な「愛」や「恋人」への憧れを強く持っていることである。恋愛番組なので、恋愛に興味がある当事者がキャスティングされている(Aロマ的は当時者はそもそも出演を望まないだろう)にしても、彼らの語る「愛」の内容や、デートでの振る舞いがかなり型にはまったものだったりする。おそらく個々人自身の考えというよりも、誰もがを取り巻く社会に偏在するアイデアが内面化されているということだと思うのだが、ロマンティック・ラブ・イデオロギーの根強さを再認識させられる。

それでも、自らの思いを伝え、交際成立して喜ぶ姿はこちらまで嬉しくなるし、断られて落ち込んでいる姿を見れば「いつかあなたに会うパートナーが現れますように」と祈りたくなる。