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虹の向こう側

NASAを支えた黒人女性数学者たちの「隠されてきた」物語に今光が当たるッ!『ドリーム:私たちのアポロ計画』は今こそ皆に観て欲しい超・名作映画!

Ost: Hidden Figures

実話を元にした映画『ドリーム:私たちのアポロ計画(原題:Hidden Figures)』観てきましたので感想です。

『ドリーム:私たちのアポロ計画』あらすじ

米ソによる宇宙競争が激化していた60年代初頭。有人宇宙飛行でソビエト連邦に先を越されたアメリカ国内では、ソ連*1に負けじと、宇宙に人を送りこむためのプレッシャーが増大していました。当時、そのプロジェクトを担っていたNASAでは、多くの「人間コンピューター」が宇宙計画に必要な計算を手がけていたのです。すごっ!

ところが、当時のNASAのオフィスがあったテキサス州では、人種によって使用する設備が異なる人種分離政策がとられていました。バスなどの公共の乗り物や、トイレ、食堂、また入り口などについても「白人用」「有色人種用」とわけられていたのです。NASAのキャンパスも例外ではなく、黒人女性たちは「黒人用」のコンピューター室で計算に従事していました。

そんななかでも、同僚をまとめているのに、仕事内容にあった肩書きが与えられないことに不満を持つドロシー・ヴォーン、エンジニアを目指すが、必要な学歴が「白人向け高校」でしか取れないことで悩むメアリー・ジャクソン、そして、子どもの頃から飛び抜けた計算能力を示していたため、白人だらけのプロジェクト「スペースタスク」にアサインされたキャサリン・ジョンソン。この映画は、NASAの有人宇宙飛行計画を支えた実在しながらも、これまでは「隠されてきた人々(=Hidden Figures)」である3人の物語に光を当てるものです。

本作は、アカデミー賞の最優秀作品賞、助演女優賞、そして、脚色賞の3部門にノミネートされています。

『ドリーム:私たちのアポロ計画』予告編

※英語版ですが、雰囲気を感じてくださいっ!

『ドリーム:私たちのアポロ計画』感想

もうね!ものすご~くよかった!胸が熱くなりすぎました。

なんだろ、わたしちょっと前に『LA LA LAND』を観て、「この映画最高〜♪」と歌ったり踊ったりしてたんですが、それが申し訳なくなるくらい、この『ドリーム:私たちのアポロ計画』はよかったです。(あ、『LA LA LAND』もいいんですよ!今度感想書きます)

別に「大昔」っていうわけでもない「60年代」。そんな時代まで、実際に行われていた人種分離政策(セグリゲーション)。今見ると「トイレとか学校とか、コーヒーポット分けるとか、バカじゃないの」と思えるほどですが、そういう「人種によって分ける」考えは、本当に実在して、人々の考え方や、キャリア形成に大きな影響を与えていたんです。

その中でも、公民権運動をして、人種分離政策に反対していた人々はいましたし、その政策がまだ覆る前から、自分に出来ることから、キャリアアップのために出来ることを必死でやってきた女性たちがいたのです。これも当たり前といえば当たり前なんですが……。そのことは魂が震えるようなモチベーションとインスピレーションをわたしに与えてくれました。

決して「差別があった時代でも、実は黒人女性がこんなに頑張っていたんだからお前にもできる!」式の自己責任論につなげたいわけではありません。しかし、どんなに理不尽に思える仕打ちを受けても、そのなかで諦めず戦い続け、最後には自分の能力と貢献を認めさせた女性たちがいたということは、今を生きる自分にも、大きな勇気を与えてくれたんです。

映画の主役であるキャサリン・ジョンソンは、2015年に、オバマ大統領より大統領自由勲章を与えられ、さらにNASAのコンピューター施設にキャサリンを記念する名前がつきました。そういう意味では原作となった『ヒドゥン・フィギュアズ』の書籍や映画の前に、彼女の功績などが完全に「隠されていた」というわけでもないとは思いますが、でもここまで広まったのは、やはり映画という形式の力が大きい気がします。

あと、この映画、ちゃんとフィクションになっていて、話の展開のテンポもよいし、セリフも洒落ていて、いちいち笑わせてくれるし、全然「歴史のお勉強」っぽくありません。そこもまた素敵♪

主役の一人として、しっかり存在感を放っていたジャネール・モネイ(Janelle Monáe)、そして、キャサリンの恋の相手として、イケメンっぷりを発揮していたマハーシャラ・アリ(Mahershala Ali)は『ムーンライト』に続いて名演を見せてくれました!というか、この二人はホント作品に恵まれてますね〜!ジャネール・モネイはヘアスタイルやファッションも可愛くて参考になります。

またわたしがもっとも気に入ったシーンのひとつが、ジャネール・モネイ演じるメアリーが、エンジニアになるために必要なクラスを白人向けの高校で受講させてくれるようにと裁判官に訴えるところです。

「あなたは家族のなかで、初めて軍隊に入りました。大学に進学したのもあなたが初めてでした」裁判官の個人的生い立ちから、直前に行われた宇宙計画によって、初めて足を踏み入れた人の話……そして、自らの話へと持っていく話の運び。ん〜うまい。

「わたしには、自分の肌の色を変えることはできません。だから『初めて』になるより他に選択肢はないのです。今日あなたが手がける多くの事件のうち,百年後も歴史に残るのはどの事件ですか?どの事件があなたを『初めて』にするのでしょう?」

もうね、わたし、ここ、立ち上がってブラボー!!って拍手喝采したいくらい気に入りました。でもね、こういうシリアスな場面だけじゃなくて、ちょっとした場面でのセリフも気が利いていて、笑えるんですよ。真面目な話なんだけど、暗くなりすぎず、笑えるところが気に入りました。音楽もよいし!

あとちょっとビッチ役のキルスティン・ダンストに驚きました!映画観ながら「似てるなあ」とは思ったけど、まさか本人だとは…w あとビッグバン★セオリーのジム・パーソンズも出てます!宇宙の話だけに!いや〜役者ってホント嫌われ役からお色気役、オタク役までいろいろ変身できてすごいわあ。

引っかかった場所

もちろん、この映画、全てが全て素晴らしいわけではなくて「んー」って思ったところもあります。

一番はやっぱりケビン・コスナーの「よい白人」役っぷりですかね。

人種分離政策のため、キャサリンが遠くのビルにあるトイレまで長い時間かけていかなければいけなかったことを知ったケビン・コスナー演じる上司のアル・ハリソンは、個人的にハンマーを振り上げてトイレの「有色人種用」という看板を破壊し「これからNASAでは、人種は関係ない」と宣言します。はいはい。すごいね。偉いね。感動するね!!

もちろん、映画をドラマチックに盛り上げるためだというのはわかっているのですが、わたしはこういう英雄的なシーンを白人男性が演じるのには、最近うんざりなんですよね。

事実は、キャサリンは勝手にビルのなかの白人用のトイレを使いはじめたのだと、本人が証言しています。また、ロケット打ち上げの時も、映画のなかではハリソンが最後の最後にキャサリンをミッションコントロール室に招き入れていますが、実際にはキャサリンは、自分のデスクから、テレビ越しに打ち上げを見ていたそうです。

このケビン・コスナーの演じるアル・ハリソンは、架空のキャラクターです。ハリソンという「白人が安心して自らを投影できるキャラを加えたことで、映画はより多くのマジョリティーが共感できるものとなり、罪悪感なく楽しめるようになったと思います。映画もビジネスですからね。少しでも興行成績をのばすために、これは必要なことだったのでしょう。かなり「ミニシアター系」っぽさプンプンの『ムーンライト』と比較しても、この映画はよりメインストリームよりにチューニングされているのを感じました。

しかし、マイノリティの物語がメインストリームに受け入れられるためには、いつまでこのような「安全弁」が必要とされ続けるのでしょう?そんな疑問を持たずにはいられませんでした。

「白人の救世主」問題についてはこちらの記事もご覧ください。

原作者のドラマ

映画『ドリーム:私たちのアポロ計画』は、自らも黒人女性であるマーゴ・リー・シェタリーの著作『ヒドゥン・フィギュアズ』が原作となっています。もともとウォールストリートの投資銀行で働いていた彼女は、父親がNASAで勤務していた科学者であり、NASAで働いていた多くの黒人を知っていたそうです。

その後、彼女は金融というキャリアを経て、メディア業界に転身、数々のベンチャー企業で働き、メキシコで雑誌を創刊し、その後、本作『ヒドゥン・フィギュアズ』についてのリサーチを始め、本を書き上げる前に、映画化の権利を売却。これまで「隠されてきた人々」のストーリーを世の中に出すことに成功しました。っていうかいろいろ才能ありすぎてスゴい!

わたしはこの原作者の話にも、なんというかドラマを感じます。様々なジャンルで活躍してきた彼女が、初の著作の題材として取り上げたのが、父親も働いていたNASA、そしてそこで働いていた黒人女性たちの話だった……。取り上げられている3人の女性への愛というかシスターフッドを感じるのでした。

今度原作本も読んでみようと思います。

Hidden Figures: The Untold Story of the African-American Women Who Helped Win the Space Race

Hidden Figures: The Untold Story of the African-American Women Who Helped Win the Space Race

『ドリーム:私たちのアポロ計画』評価

  • 歴史が学べる度 ★★★★☆
  • やる気が出る度 ★★★★★
  • ウーマンパワー度 ★★★★★

『ドリーム:私たちのアポロ計画』日本公開

ドリーム:私たちのアポロ計画の日本公開は2017年9月に予定されています。

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*1:アメリカ国内では「ロシア」と呼ばれていたっぽい