以前受けた遺伝子検査サービス23nadMe。
自分の遺伝子的ルーツや、健康情報などについての情報を教えてくれるが、それ以外にも、遺伝子情報を元にしたSNSを提供している(自分の情報を隠してオプトアウトすることも可能)。前もこんな記事を書いていた。
これを書いた時は「こんなこともあるかもね」程度で想像で書いていたのだが、ある日、23andMeから突然メッセージが届いた。
「あなたの親戚からメッセージが届いています」という。
えっ、親戚?誰!?
開いてみると、こんなメッセージだった。
「こんにちは、あなたとわたしは遠い親戚のようなのでメールしています。 わたしは、祖父母の名前しか知らないのですが、私の父親は中国の江蘇省出身で、母親は安徽省出身です。 苗字は、江、馬、張、王というのですが、あなたの家族にこれらの苗字の人はいませんか?もしそうだとしたら、どこ出身ですか?あなたは客家人の家族はいますか?または中国人ではない家族がいますか?」
江蘇省も、安徽省もよく知らなかったので調べてみると、江蘇省は、南京市のある省で、上海の北にあるところ。安徽省は江蘇省の隣だが内陸に入ったところで、キーマン紅茶の産地であることがわかった。
また客家人というのは、客家語を共有する漢民族の一支流で、少数民族ではないが、客家語という独自の言葉を持っている民族だったらしい。広東省、福建省、江西省、香港などに多く住んでおり、台湾に移住した人も多いらしい。
ふーむ。広い中国。これまで特に意識したことはなかったが、突然自分と関わりがあるのかも?と思ったら、親近感が湧いてくる。
ちなみに、わたしの遺伝子の結果はこんな感じ。
- 日本人96.9%
- 韓国人1.9%
- その他広範な東アジア人1.2%
広範な東アジア人というのは、具体的にどの国なのかはわからないが、中国の可能性もある。と言っても、わたしの知る限り、中国に自分の親戚はいない。その旨返事して、「お役に立てなくてすみません。グッドラック」と返事をした。
すると、またすぐに返信が返ってきた。
「返事ありがとう。わたしは、中国で生まれて、養子に出されたのですが、最近自分の生物学的な家族を見つけました。彼らによると、わたしの生物学的な祖母は小さいころに買われて、祖父と結婚するために育てられたそうなのです。祖母がどこから来たのかは誰も知らないのですが、どうやら、遺伝子の結果を見てみると、彼女は韓国人と日本人のハーフだった可能性が高いのです。だから、わたしは他にも日本の親戚がいるのです。
XX、XX、XX、XXなどという苗字に聞き覚えはありませんか?」
ふぅむ。そう来たか。
でも、それらの苗字にも、やっぱり見覚えはなかった。
しかし、考えてたら、母方の祖母の旧姓は知っているが、その祖母の母親の旧姓とかになるともうわからない。父方の祖母に至っては旧姓すらわからない。大体「この県出身」とかは分かるが、その前の世代になると、もうどこで何をしていた人たちなのかよくわからない。
意外と自分の先祖のことは知らないものだなぁ……と思い知らされた。
まだ具体的なつながりは見えていないものの、中国からの養子としてアメリカで育った彼女と、日本で育ってアメリカに移住したわたしは、確実にどこかでつながっているのだ。
「新しい家族」と遺伝子検査の関係
ところで、わたしの周りには、養子縁組や、精子バンク、代理母や卵子提供などの生殖技術を利用して家族を作っているカップルが多い。
精子バンクに登録するドナーには、将来子どもが生物学的父親のことを知りたいと思った時に、自分の身元を明かすことに合意している「顕名ドナー」と、自分の身元を明かすことを望まない「匿名ドナー」の二種類別れている。精子バンクを利用する女性も、将来子どものことを考えて、顕名ドナーを選んだり、匿名ドナーを選んだりするわけだ。
人間関係が複雑化することを防ぐため、できるだけ精子ドナーには生まれてきた子どもに関わってほしくないと望む親が多いなかで、最近では、子どもが自分のルーツを知る権利というのが重視されているので、時代の流れは「顕名」が主流になってきている気もする。
しかし、今回23andMeからのメッセージが来て思ったのは「たとえ、ドナーが匿名を望んでも、遺伝子検査が広まることで、『発見』されてしまうというケースがあるのでは」ということだ。
例えば、こんなシナリオ。精子提供を受けて、どこかの女性カップルの間に生まれた子どもが「自分のルーツを知りたい。生物学的父親のことを知りたい」と思って遺伝子検査をオーダーしたとする。精子ドナー自体が、自分のことを開示したくないと考えた匿名ドナーであり、さらに遺伝子検査をオーダーしなくても、例えば、精子ドナーが精子ドナーの別の子どもが遺伝子検査をオーダーしたとしたら……。この子ども同士が「あなたたちは同じ父親から生まれた、兄弟姉妹です!」という結果がでて、お互いを見つけるということは充分にありえる。
また、父親が若い頃に精子ドナーをしていたことを知らず、あとで、世の中に父親の精子から生まれた生物学的兄弟姉妹がたくさんいることに気づいてショックを受けるとかね。ありえる。
もちろん、精子ドナー関係なく、「お父さん、別なところに子どもいすぎでしょ!」っていうのが発覚する危険性はあるわけなので、この問題は、特に生殖技術を使った家族特有の問題ではないが。
特に「自分の身元を明かしたくない」という匿名条件のもとで、精子や卵子を提供することに同意したドナー側としては、これは困った問題になりうるのでは?と思った。確か、匿名ドナーか顕名ドナーかで、値段とか異なると思うし、そもそも「匿名でいる権利」って大事だよね。
今のところ、大きな問題にはなっていないが、今後、遺伝子検査が広まり、自分の遺伝子情報をシェアする人が増えていくにつれ、こういう問題は増えてくるのかも知れないなーと思った。もちろん、遺伝子検査が、自分のルーツを知りたくて困っている人にとっての大きな武器となることも間違いない。
家族や血のつながりというのは、自分ひとりが隠していても、周りから徐々に外堀を埋められることで簡単に露呈してしまう。そして、科学技術が発達した今では、これまで以上に、自分の(そして家族の)生物学的ルーツを追うことが簡単になっているけれど、わたしたちの側には、そうして露呈する事実を受け止める、法的、社会的準備はできているのだろうか?
いろいろ考えさせられた一件だった。
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日本でも様々な遺伝子検査が可能になっているようだ。
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