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『雑草で酔う —人よりストレスたまちがちな僕が研究した究極のストレス解消法』感想

雑草で酔う~人よりストレスたまりがちな僕が研究した究極のストレス解消法~

青井硝子さんの本を読んだので感想です。

青井硝子さんとは

青井さんは多才な方です。ライトノベルを出版する小説家でありながら、薪ストーブを発明したり、軽トラックをベースとしたミニマルな生活を「ケイトライフ」として発信する発明家でもある。彼のライトノベルには、そんな彼の自給自足生活から得た知見がたっぷりと含まれています。

異自然世界の非常食1

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異自然世界の非常食2

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しかし、そんな中でも、青井さんが最も広く知られていたのは「アヤワスカアナログ」の研究を通じてでしょう。アヤワスカと類似の働きをする薬草の組み合わせを研究し「ハーブティー」としてレシピや飲み方のノウハウを同人誌『煙遊びと煙薬』やネットを通じて公開されていました

そんな彼が雑草を吸った体験談を商業ベース出版したこの書籍。2020年3月に青井さんが、麻薬及び向精神薬取締違反幇助容疑で京都府警逮捕され、一旦は発売停止になりました。その後ため中古市場が一瞬高騰していたようです。その後、編集の注釈を付記して再発売されてました。わたしが読んだのは、その「再発売後」のバージョンです。

『雑草で酔う』の内容

ほぼ、トリップやサイケデリックスに興味がある人が読みたいのはここですよね?

  • バジル
  • あじさい
  • アサガオ

などの身近な植物の喫煙体験から、アヤワスカアナログのレシピまで掲載されています。

また、ちょっと面白いのが

  • 肉ハイ
  • 事務ハイ
  • 車酔い

などもカバーしていること。

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  • メディア: ヘルスケア&ケア用品

まあ日本に住んでいる人が「合法」という枠組みのなかでいろいろサイケデリックな旅をしたくなるとこういう体験談にいくんですかね?わたしは大麻を使わないのでなんとも言えませんが、大麻が合法な地域在住の人が見たら「ウィード吸えばよくね?」って言われて終わりになってしまいそうな部分もありますが、それを言っちゃおしまいよ。あくまで「合法的に」が本書のテーマなので!

スピリチュアルな内容

本書は、雑草喫煙体験「以外」のところも面白いです。

  • 発達障害とは?
  • ストレスとは?
  • 社会に求められることと、自分の特性が合わない場合にどうやって生き延びるか?

様々な考察があって深いんです。

グラウンディングの大切さ

特に、トリップした後しっかり戻ってくる「グラウンディング」の技術とかは、サイケ好きじゃなくても、瞑想とかマインドフルネスに興味がある人はもちろん、「あがりやすい人」や「カッとなりやすい人」などにも役立つ気がします。 具体的なライフハックとして知っておいて損はないかと思います。

グラウンディングの方法としては

  • タバコを吸う
  • 体を使って遊ぶ
  • 土いじり
  • 太鼓を叩く
  • 泥の上を裸足で歩く
  • 肉を食べる
  • 熱い湯に浸かる
  • 武道の型稽古をする

などが挙げられていて。大変興味深かったです。

特にほぉ〜と思ったのは、ただそもそもグラウンディングが必要な「浮いている時」、またはうまくグラウンディングできない時というのは、過去のトラウマや怒りが影響しているという指摘。 これを解放するのが、様々なセッション。心の底のトラウマや怒りを一度解放しないと、キチンと「地に足がつかない」ままだということですね。ここらへん、少し、スピリチュアルな要素があり、内容はもちろん、使われている用語も、「青井ワールド」なので、好き嫌いが分かれる部分かとは思いますが、個人的には、非常に頷けるものがありました。

ライフハックとしてのサイケデリクス

「ハイになる」というと、「パリピが楽しむため」みたいなイメージがありますが、実は、「酔い」は深刻なトラウマや心の傷を抱えた人がそれを癒やすために古くから利用されてきました。もちろん、そのためには、経験のあるシャーマンや、セッティングを整えるための準備などが必要なので、素人がいきなり挑戦してトラウマから回復できるわけではありません。近年は、伝統的な方法にとどまらず、医療の側面からもサイケデリクスを管理化で少量投与して治療を行うという研究がFDAにも承認されたうえで行われています。そちらは話が広がりすぎてしまうので、いつか改めて紹介しようと思いますが。とにかく青井さんの関心事が単に「トリップする」ことの向こう側にある「社会に適応するため」である点に非常にシンパシーを覚えました。単にハイになりたい、幻覚を見たい、楽しくなりたい、という好奇心もピュアでいいんですが、「社会で生きづらさ」を感じている単視点者(と本書では表現されているが、一般的には広義の発達障害に当てはまるのかと)にとっては、それは、「ライフハック」に近いものでもあるのかなと。

あとがきでphaさんが書かれている。

2000年代の初め頃、僕は当時合法だった幻覚性の植物を摂取することにハマっていた。僕はまだ二十歳を過ぎたばかりで、大学に入ったはいいけれど社会に適応できず、何の能力もなく他人が怖くて、自分が生きられる場所がどこにあるのかなんて全くわからず、毎日将来の不安を抱えて暗い気分で過ごしていた頃だった。

そんな自分にとって幻覚剤は、このくだらない社会とは違う何か別の世界をみさせてくれるような、既存の価値観を打ち壊してくれるような、そしてどうしようもない自分を根本的から変革してくれるようなものに思えたのだった。大体ドラッグに深くハマるのは、そんなふうにうまく生きられない若者だと相場が決まっている。

phaさんは、中年になって、それなりに「食っていける」ようになり、「社会の中での自分の位置」も見つかったことで変性意識に対する興味は薄れてしまったようだ。わたしも、割と大人になってしまってるので、この気持もわかる。同時に、「いやいや、大人にとっても「生きづらさ」を抱えつづける人っていると思うし、なんなら、自分の「居場所」が本当にここなのかと確かめ続けるためにも、サイケデリクスは有効なのではないか」と思っています。

青井さんは、自らのアカシア茶を広める活動を、うつや生きづらさを抱える人が、身体を壊す危険ドラッグに手を出さないように行っていると言っています。一種のハームリダクションのようなアプローチです。

青井さんは、本書の締めくくりに

  • 健康
  • 安全
  • 人に迷惑をかけない
  • 依存しない

という4つの条件を挙げ、「酔い」の文化がより洗練されていくことへの希望を述べています。幻覚作用や変性意識を、ただの「アングラ」や「サブカル」の対象として扱うのではなく、社会を変えていこうという態度に共感しました。

違和感を覚えた点

本書には違和感を覚えた点もありました。「心屋」さんとか、などの評価の分かれる名前や、「神の国日本」や「旭日」など、民族主義的な用語が出てくるので、そこは微妙です。

※本記事は、いかなる違法行為を推奨するものではありません。

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