#あたシモ

アメリカで働くレズの徒然

FOXニュースのセクハラ告発劇を映画化『スキャンダル(原題:Bombshell)』アメリカのテレビを観てる人は更に興味深いはず!

bomb·shell /ˈbämˌSHel/

noun

1.an overwhelming surprise or disappointment.

2.(informal) a very attractive woman.

Bombshell (Original Music from the Motion Picture Soundtrack)

『スキャンダル(原題:Bombshell)』観ましたよ!シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマンが、実在のニュースキャスターを演じ、数年前全米を揺るがせたセクハラ告発事件を描いています。

『スーサイド・スクワッド』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のマーゴット・ロビーや、『ゴーストバスターズ』のケイト・マッキノンも出ています。

あらすじ

2016年。大統領選挙真っ最中のアメリカ。保守系のテレビ局として存在感を放つFOXの女性キャスター、ミーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、討論会でトランプ候補へ女性差別について質問したことで、トランプや右派の激しい攻撃の対象となる。

FOXで働くことが夢だった若手スタッフのケイラ(マーゴット・ロビー)は、ルパート・マードックとともにFOXを創設した会長のロジャー・エイルズと面会できることに。自分のアイデアを売り込むことができると胸をときめかせる。しかし、密室でロジャーに要求されたのは「スカートをめくりあげて脚を見せろ」「忠誠を誓って見せろ」ということだった。

同時期、FOXから解雇されたベテラン女性キャスター、グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、ロジャーに対してセクハラ裁判を起こす。

グレッチェンは「他にも被害者がいるはず」というが、FOX内の女性たちはロジャーの権力を恐れ、沈黙を守ったまま。ミーガン・ケリーはかつてまた自分も被害者だったことを思い出す。被害を申し出るべきか?しかし、その場合番組やっぱりスタッフはどうなる?FOXからグレッチェンの告発に続く者はいるのか?マードックの判断は?グレッチェンの裁判の行方は?そして、会長室に呼び出されたケイラの運命はー!?

感想

セクハラを告発する女性たちのストーリーということで当然応援したい気持ちはあるのですが、映画としては「まあまあ」でした。

理由はいくつかあります。まずひとつはモキュメンタリー風というか、独特の演出に入り込めなかったから。目線の動かし方やモノローグの入れ方、カメラの動かし方が独特です。ディック・チェイニーを題材にした『VICE』でも感じましたが、映画全体がそういうノリでもなく、映画のシーンごとで「ノリ」が違うので、ちょっと疲れました。

もうひとつは、実名を使って映画化しているがために、「実際の彼らはどうだったのか?」が気になって映画に入り込めなかったから。矢印これは映画のせいというか自分のせいか。

長年保守系テレビ局の人気者としてひっぱっていたミーガン・ケリーやグレッチェン・カールソンの問題発言などがあたかもなかったかのようになっています。具体的には、ミーガン・ケリーは、FOXからNBCに移籍した後、「ブラックフェイス」を擁護する発言をして炎上し、契約を打ち切られていますし、グレッチェン・カールソンは、トランスジェンダーの権利に対して否定的でした。しかし、劇中ではミーガンが「サンタは白人」と発言するシーンこそあったものの、全体的に彼らの問題発言は省かれ、「フェミニズムの闘士」であるかのような都合のよい演出になっている点が気になりました。ちなみに、ミーガンを演じたシャーリーズ・セロンは黒人の養子を二人育てているため、「サンタは白人」という場面は演じるのが難しかったと言っています。

よかった点としては、女性たちが力をあわせてパワフルなテレビ局のトップを引きずり下ろす様に強力なシスターフッドを感じた点。また、ケイト・マッキノン演じる「隠れレズビアン&隠れ民主党員」のキャラクター。保守的に見える企業の中にも、実は色々な信条を持ったメンバーがいる様がなかなかよかったです。

ただレズビアニムの描き方は微妙です。必要以上に騒ぎ立てていない点はよいんですが、逆に軽すぎないか?と。ジェスとケイラがかなりカジュアルに一夜をともにして、その後も比較的さっぱりしてて何の葛藤もジメジメした感じもないんです。なんというか、「え!最近はこういう感じなの?」とびっくりしました(汗)

セクハラ被害者がグッドガールであるべきというのはまんまセカンドレイプ的な思考なのでそう言いませんが……。結局ケイラは軽いとか言う人いそうだなと思いましたし、女同士の関係ってやっぱり軽いものって思われてるのかな?とか。モヤりました。

通常クィアなキャラや展開は大歓迎なわたしなのですが、ここでのワンナイト展開はなくてもよかったかも?とか思いました……。二人のコネクションを描くだけでよかったのでは?

あとは、実在の人物を演じた役者たちが、ヘアメイクの力で、「本人そっくり」になっているところは、クオリティ高いです。これは、アメリカのテレビ局番組をよく観ている人にはよくわかるはずです。シャーリーズ・セロンは顔だけでなく、喋り方まで、ミーガン・ケリーそっくりになってます!うーん、クール・ビューティ♡

https://youtu.be/I-da6eMEdPk

↑このビデオは観ておくと、メーガンケリーの喋り方や、トランプと何があったのか?の予習になると思います。

事実はどうなの?

ミーガン・ケリーとトランプの応酬については大抵報道されていた通りなのと、ロジャー・エイルズのセクハラ告発周りについてはほぼ史実をベースにしています。

女性が性的対象として見られていたFOX社内の環境についても概ね正確な描写のようです。女性キャスターたちがミニスカートを履くことを求められ、踵に血を滲ませながらヒールを履く様子がありましたが、日本での#KuTooムーブメントにも通じるなと感じました。カメラが引きのアングルで撮ってキャスターの脚を映すのも、実際にFOXのニュース番組特徴でした。

ただし、ジェスとケイラのキャラクターは創作です。

ロジャー・エイルズについては、ドキュメンタリー映画も出ているので、リアルな事実に興味がある人はそちらも観てみてください。※ロジャーは、2017年に亡くなっています。

ハーヴェイ・ワインスタインや、ジェフリー・エプスティーンの事件も今後続々作品化されるんでしょうな。セクハラは許されないことということが、報道やエンタメを通じてしっかり広まってほしいです。

ミーガン・ケリーは映画化に関わってるの?

映画の中心人物となっているミーガン・ケリーは実名で出ていますし、割とポジティブに描かれているので、本人が協力してよく描いてもらったのかな?と思いましたが、ミーガン本人は「映画には関わっていない」とインスタで発言しています。

評価

  • フェミニズム度 ★★★★★
  • 都合がよい度 ★★★★⭐︎
  • 歴史が学べる度 ★★★⭐︎⭐︎

日本公開予定

スキャンダルは、2020年2月21日に日本公開が予定されています。