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レゴ初の障碍を持つミニフィギュア
レゴ社が初めて身体障碍者のミニフィギュアをローンチしました。車いすのミニフィギュアと介助犬を含むレゴシリーズは、国際おもちゃ見本市で発表され、2016年の下半期に一般発売される予定だそうです。
バービー人形のマテル社を抜き、現在世界一の玩具会社となっているレゴ社。テーマーパークや映画など、さまざまな分野で影響力を広げている会社の今回の動きはソーシャルメディアキャンペーン 「#ToyLikeMe(私みたいなおもちゃ)」による働きかけに対するアンサーのようですが、レゴ社は特に声明を発表しているわけではないので、確かなことはわかりません。
「#ToyLikeMe」キャンペーンは、世界中に1億5千万人いる障碍を持つ子供たちがレゴブロックの世界から排除されていることに対して抗議を展開。署名サイトChange.org上で2万人以上の署名が集まりました。
「やっと」という感じではあるのですが、とりあえずは一歩を踏み出した感じですね。
レゴの世界のジェンダーギャップ
レゴの世界の多様性というと「男女差」についてもしばしば話題になっています。そもそもレゴの世界に女の子が少ないのでは?という話です。
2014年1月7歳のレゴ好きの女の子がレゴに「おもちゃ屋さんに行くと、レゴのキャラのほとんどは男の子。女の子はいても、家の中に座ってたり、海辺にいたり、買い物に行ったり。そして仕事もしてないみたい。男の子のキャラは冒険にでかけ、仕事して、人を救ったり、サメと一緒に泳いだりしているのに!」と文句の手紙を送ったことがネットで話題になりました。
7yo Charlotte writes an adorable and strongly worded letter to LEGO regarding the lack of adventures for girls. pic.twitter.com/JblNKzCwJs
— SocImages (@SocImages) January 28, 2014
一応レゴのセットのなかにはアクティブな女性のミニフィギュアも存在することはしますし、レゴはこの手紙が話題になった年の8月には、女性の化学者、古生物学者、天文学者などをフィーチャーした研究所シリーズなどを発表しています(参考記事)。
昔はジェンダーニュートラルだったレゴの世界
しかし、実はレゴはユニセックスなおもちゃとして始まりました。初期のミニフィギュアはそもそも中性的で、髪形もユニセックスだったんですよね!1978年から1988年までの10年間はレゴの黄金期であり、ジェンダーニュートラルの観点からも、理想的な時代だったようです。だからこの時代にレゴで遊んで育った人は「レゴのジェンダーギャップ?」てのにピンとこないかもしれません。
レゴのミニフィギュアがわざわざヒゲをつけたり、まつげを強調したり、口紅を塗ったりして、性差を強調するようになったのは1989年の「海賊」シリーズからだそうです。ユニセックスなミニフィギュアも半分くらいは残りましたが、「男」のミニフィギュアは「女」のミニフィギュアの3~4倍に。その後、1989年から2003年までは男女別のマーケティングが進み、「女の子専用」的なピンクっぽいセットもでるようになりました。
その後、レゴの売り上げは低下。2004年には破産の危機に直面し、家族ビジネスとしてやってきたレゴは家族外からの初めて、マッキンゼー出身のヨアン・ヴィー・クヌッドストープがCEOの座につきます。クヌッドストープのリーダーシップのもと、スターウォーズやアクション映画などとコラボした様々なテーマを持ったセットが売り出され、これまで以上に様々なバラエティーのミニフィギュアが発売されました。
しかし同時にこの時代レゴは意識的に、より「男の子の好きそうなジャンル」にフォーカスすることになったのだといいます。この結果レゴのミニフィギュアの世界では1990年代後半には1対1に近づきつつあった「男のキャラ」の割合がぐっと増えたそうです。
その後、2012年にレゴは「女の子ライン」としてレゴフレンズというお店などを作るシリーズを発表し、これは大ヒット。しかしキャラクターは「ミニフィギュア」ではなく「ミニドール」というものになっており、足や腰が動かせないなど「人間の動きが制限されている」と批判を浴びています(参考記事)。
個人的には、これが自由に動けるミニフィギュアだったとしても、メイク・体形・髪形などでステロタイプバリバリの女の子キャラを、男の子キャラと同数出したとしても「はい、女性キャラもいるでしょう。多様性」っていうのは何か違う気がするし、そもそもなんで「女の子専用」製品を用意しなきゃいけないのかな?って思います。最近レゴショップに行った時も、女の子のセクション(ピンクと紫なのですぐわかる!)がはっきり分かれていた記憶があります。『アナと雪の女王』シリーズとかありましたね。売れてるからこういうやり方になっちゃうんでしょうけど。
そんな流れがあって上に述べた「7歳の女の子のお手紙」につながってくるわけですが、「多様性」って何なのだろう?と考えさせられました。
レゴ社自体は経営危機以来雇用や開発における「多様性」への取り組みをしてきており、結果的に世界一のおもちゃ会社になっているわけですけどね。今後、レゴの世界でのジェンダー表象はどんな風になっていくのか、ちょっと気になります。
おもちゃ会社の社会的責任
さて、おまけ。
レゴ社は最近、他にも批判にさらされていました。
中国のアーティストアイ・ウェイウェイが、作品を作るために大量のレゴブロックを購入しようとしたのですが、これが「表現の自由」に関するということで、中国当局へのレゴ社は「政治的目的に利用してほしくない」という理由でレゴの販売を拒否したのです。このレゴ社のポリシーに批判が殺到し、アイ・ウェイウェイに対しては、多くのレゴブロックの寄付が寄せられました。結局レゴ社はこのポリシーを変更しました(参考記事)。
これは、直接は「多様性」の話ではありませんが、現代社会においては、おもちゃ会社が「子供の世界」を超えた大きな影響を持っていることを表していて面白いなーと思ったので紹介しました。